親子の旅
鎌ちゃんの手紙を読む2人。
行灯の灯りの下、手紙を読み始めたお殿様は、聡太郎の書いた手紙を読みながら、幼かった頃のことを思い出していた。
小さな頃、母の言葉を理解して、言った言葉が蘇る。
空が泣きそうだから早く戻ろ。この手を引いてあの子はワシをうちの中へ連れて行ってくれた。母の言う事をよく聞く賢い子だった。
小さな小さな子供の頃の記憶しか残ってはいない。あの子のことをワシは何も知らなんだ。
親は無くとも子は育つ。
聡太郎は立派に育っているではないか。
それにしても、夕霧、泣けるのぅ。
もう夕霧はお殿様の言葉に頷くことしか出来ない。まだ泣けてくる。
繊細な子だからのぅ。あの子は。しかし、繊細な心を持つから良いのじゃろう。人の心のわかる子だからこんなに描けたのじゃな。
聡太郎に会いたいのぅ。
私も鎌ちゃんに会いたい。
夕霧のつぶやきに、お殿様はまたいやらしい笑みを浮かべて夕霧の肩を抱き、
ワシらは会いたい者同士じゃな。
と言った。
夕霧はそのお殿様を払いのけると、もうすぐ夜が明けてしまうわ。大変!仕入れに行かなくちゃ!
お殿様は少し拗ねた顔をして夕霧を恨めしそうに見上げると、夕霧は、にこっと笑い、
今夜も待ってますね。
と言った。お殿様は子犬のように喜び、うん!と年甲斐もなくうなづいた。
それにしても道蔵はどこにいるのかしら。
ワシの部屋じゃないか?
夕霧はお殿様の部屋へ急いだ。
離れの前までくると、恐る恐る戸を開けた。
そこでゆでダコになった道蔵を発見した夕霧は、仕入れに行く事を諦めたのだった。
夕霧さん、おはようございます。
伊助が夕霧が入ってくるのを見て挨拶をした。
道蔵、お酒めちゃくちゃ弱いのよ。
二杯飲んだら寝ちゃいました。
伊助さん、大丈夫じゃないわね。ごめんなさい。
いえ、私が悪いんです。道蔵さんが1人で寂しそうだからと、一緒に飲んだ私が悪い。タコみたいにねちっこい感じでずっと、、、
あちこちに道蔵が付けた熱烈な口付けの後が出来ている。
途中で酒が回ってどうにか逃れられたが、眠ってしまった道蔵が風邪をひいてはいけないと思い、囲炉裏に火を入れて自分も暖をとっていたのだと言う伊助に、夕霧は謝ることしか出来ないのだった。
夕霧さん、道蔵さんは乙女だけど男なんでしょうか?
それとも本当の本当に女なんでしょうか?
真剣に聞いてくる伊助に夕霧は、大声で笑うと、自分で確認しなさいよー。
と言うと、こうしちゃいられない!
と台所へと急いで行ったのだった。
夕霧は1人、朝ごはんの支度をしなくちゃいけなくなってしまう。




