親子の旅
鎌ちゃんの手紙を読み始めたお殿様
お雪より少し早くにお風呂からでてきたお殿様は離れに向かい、小さな戸を少し開けて中を覗いた。
そして、その戸をそっと閉め、大きなため息を1つつくと、もう一度、お風呂の方へ向かった。
お殿様が泊まる茶室には道蔵が、お酒の用意をして待っていた。その待っている後ろ姿がアンニュイで、お殿様は身の危険を感じてしまい、少し怖かった。
夕霧はどこにいるのだろう。
お殿様は旅籠の中をウロウロと歩き、灯が漏れる客間とは違う部屋の前に辿り着いた。
少し開けて中を覗くと、手紙を広げて泣いている夕霧の姿があった。
夕霧?
夕霧はその声にハッとして、お殿様の方に顔を向けた。
頰につたう涙が行灯の柔らかな光に照らされ光っている。
どうした?何かあったか?
泣いている夕霧のそばへ寄ると夕霧は、
お雪ちゃんが鎌ちゃんの手紙を読んでほしいと言って渡してくれたのを読んでたんだけど、読み始めたら最後まで読んじゃおと思って読んでたんだけど、
どうした!聡太郎になにかあったか!
読んでみてくださいな。
そう言って泣き続ける夕霧から鎌ちゃんが書いた手紙を受け取った。とても分厚い手紙に、ふと夕霧の顔をみると、夕霧は、そうなのよ。と言うふうに、うんと頷いた。
お殿様もそうじゃな!というように、うんと頷くと、その手紙を読み始めたのだった。
伊助はお殿様の屋根裏部屋から中の様子を伺った。
道蔵が酒の用意をしてアンニュイな感じで座っている。
お殿様を待つその姿は、海坊主だけれど、心は乙女。今夜の月を眺めようと待っているには違いない。
しかし、空は今にも雨が降りそうで、とても寒い夜がだんだんと更けてゆく。
おっそいわね!お殿様ー!何してんのかしら?道に迷ってんのかしら?
もー!1人で飲んじゃお!
道蔵はお殿様の居ないお殿様の部屋で、1人お酒を飲み始め、それを見兼ねた伊助は屋根裏から飛び降りて道蔵を驚かせた。
びっくりしている道蔵の横で私にも酒をくれますか?今夜は寒くて仕方ない。
道蔵はいいわよ。と小さな湯呑みを伊助に渡すと差しつ差されつ、飲み始めたのだった。
道蔵の恋はどうなるんでしょう。




