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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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涙、涙の石鹸作り

いよいよ実からタネがでます

実を収穫して3日すると、それが2つに割れて中からタネが2つ入っている。


そのタネを取り出して、ゴリゴリとすり鉢で擂り粉木を使い硬い実を砕いていく。


この暑い中、するもんじゃないわね。


道蔵がゴリゴリ、ゴリゴリ、タネを砕きながら言う。


鎌ちゃんと夕霧はウチワで道蔵を仰ぎながらニコニコと楽しそうにすり鉢の中を覗いている。


女、子供の力じゃこうはいかないわね。


そうね。これはちょっと無理かもね。


道蔵と夕霧が話しているのを鎌ちゃんは楽しそうに見ていた。


ここ半年、この2人に助けてもらい今がある。あの時、誰も助けてくれる人が居なかったら、、、。


この世には居なかったかもしれない。


ここから出て、色んな人と出会い、色んな世界を見てみたい。


まだ知らない世界を見てみたい。


ここに留まり、ここで一生を終えられたなら。


そしたらこの2人に迷惑をかけてしまうかもしれない。もしかしたら弥太郎が自分のいるのを突き止め、この旅籠が無くなってしまうかもしれない。


今回はうまく事が済んだけれど、先のことはわからない。


鎌ちゃん、年に一度は顔を見せにきてね。なんなら帰ってきてずっと居てもいいんだからね。


道蔵を仰ぎながら夕霧が呟くように言った。


そうよ、鎌ちゃん、アンタはもうここの子なんだからね。


背中向けて道蔵が言った。たぶん、泣いてる。だって、鼻水を啜る音がしてる。


仰ぐウチワの風が、何故か目にしみて、瞼を閉じた。このまま開けたらきっとこの背中が曇って見えなくなる。この横顔が曇ってしまう。


これが出来たら出発します。年に一度は帰ってきて顔みせにきますね。毎年毎年、お土産買って会いにきますからね。


目を閉じたまま、鎌ちゃんは元気にそう言った。


道蔵と夕霧はその声の方には向けなかった。2人はもう顔を向けられないくらいクシャクシャに泣いていたから、その顔を向けたくはなかった。


そして、思う。


この子が居なくなって悲しまない親はいない。探さない親はいない。心配しない親はいない。


いつまでたって苦しい思いを抱えているはず。


夕霧は鎌ちゃんがここでちゃんと生きていたことを湯本のお殿様に伝えることを決意した。


つづく。










もうすぐ旅立ちを迎える鎌ちゃんのおもいは

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