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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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清吉の恋

時が絶っても清吉の目は見えることはなかった。

けれど、、、

今夜は雨が降っている。冷たい雨。あと2、3ヶ月もしたら、もっと寒くなって、雨も雪へと変わっていくのだろう。


お雪は手紙を広げた。兄の手紙はだいぶんと残り少なくなってきた。もう少し。


清吉の目が見えなくなって、半年が過ぎた。もうこの先、見えることはないのかもしれない。


目が見えなくても生きていかなくてはいけない。


生きる為には仕事をしなくちゃいけない。


何をすればいいのか。何が自分にできるのか。


本当ならもうこの世になかった命。この命はみんなに助けられたもの。出来ることならば、この命をみんなの為に使いたい。


そう考えた清吉は、和尚に相談をしてみた。


そうだなぁ。そうなると、カラダに触れて悪いところを治すアンマさんとか、歌を歌い、三味線を弾いて人の心を癒す三味線弾きか。あとは何があるだろうなぁ。仏の為にお経を読む坊主という仕事もあるぞ。


どれも人のためになって、目が見えなくても出来る仕事だよ。ここは寺だし、私は和尚。どうだ?修行して僧侶になるか?


いいのですか?私がここに居ても。


和尚はそりゃいいに決まってる。子供が親の仕事を継ぐのは当たり前なんだから。それに清吉はもう悟ったろ?人に1番大切なものは何なのか。


お前は僧侶になるのが一番いいんじゃないか?


でも僧侶になったら将来、嫁をもらうことが出来ないのではないですか?


そんなことはない。私が貰わないだけで、僧侶で所帯を持つ人はいっぱい居るぞ?


頭を坊主にしないといけないじゃないですか!


嫌なの?坊主になるの、嫌なわけ?


ちょっと抵抗がありますね。


和尚はハハハハハと笑った。清吉の坊主になるのが嫌というのが子供のようで可愛らしい。


そんな話をしていると、お寺に誰か訪ねてきて、和尚がそちらへ行くと、そこには清吉に暖簾分けしてくれた旦那様がいた。


旦那様は、半年もの間、目が不自由になってしまった清吉に、何か良い仕事はないかと考え、鍼灸師の仕事はどうかと考えた。それで日本でも名高い先生を招き入れる手配をして、やっとその先生が来てくれた。


頭がよく、手を抜くこともなく、いつも陰日なた関係なく一生懸命に働く清吉に1番合った仕事ではないかと考えたのだ。またやり甲斐のある仕事だから一生価値のあるものになるんじゃないかと思ってきたという。


それはやってみたいけれど、自分にできるのか自信がない。それでもやはり、やってみたい。


旦那様はずっと清吉のことを心配していた。何か清吉の為になることはないかと考えていたのだそうで、これから生きていく励みになればとここへ来た。


もう店も家も用意してあるという。


あとは清吉のやる気次第!


清吉は、坊主になるのが嫌なので、鍼灸師になる為に頑張ってみることに決めたのだった。


清吉のやる気になった様子をみて旦那様は良かったと涙を流す。店を切り盛りしていくことの大変さを1番知る旦那様は、全てを失ってしまった清吉の気持ちが痛いほどよくわかる。自分がそんなことになったら、自ら命を絶ったかもしれない。


だから、清吉の為に何かしてやりたいとそう思ったのだった。


和尚も、そんな旦那様の優しさに感謝しかなかったのだった。


お雪はそこまで読み終わると、伸びをして深呼吸をした。


顔には笑みがこぼれている。


明日は優しい木漏れ日の下でラクちゃんと遊びたいな。。。


外は風が吹き、雨が降りしきっている。


、、、。


明日は雨かな?


じゃあ明後日にしよう。


明後日が雨ならその次の日。


いつか晴れるわね。


そう呟くとアクビを一つして寝床についたのだった。














鍼灸師になる為、修行の日々へ

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