表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
34/118

清吉の恋

清吉の命は一人だけのものではなく。

火事になり、全て燃えて無くして、清吉の行方は未だにわからない。


ちょうど大阪場所で江戸にはいなかった鳳翔山は、大阪場所を終えて江戸に帰り、和尚のところへ顔を見せに行った時にそのことを知った。


和尚はいろんなところを探した。また、人に聞いたり、張り紙をだしたり、役人に探してもらえるように頼んでいた。


あんなに頑張って、町1番の唐物屋になったのに、その店をたったの一晩で無くしてしまった清吉の心境を思うと、居ても立っても居られない。


死んでしまうかもしれない。


あの時の住職のように、自ら命を絶ってしまうかもしれない。


嫌だ嫌だ。私の息子をそんな目にはあわせなくない。絶対に。


和尚は何処かにひょっこり現れるかもしれないと、その日から毎日、足が動かなくなるまで探した。寺の子供たちも清吉のことを探して歩いた。


血は繋がらなくとも、清吉には親も兄弟たちだっている。


鳳翔山もその一人。


清吉の悲しみも悔しさも、死んでしまいたい気持ちだって、みんな痛いくらいに感じている。


また、暖簾分けをした旦那様も、清吉のことを探していた。店ならばいくらでも建て直せばいい。清吉の才覚があればまた町1番の唐物屋にだってすぐにまたなれる。


清吉の為ならば、お店の一軒や二軒、用意してやれるのだ。


清吉と関わった全ての人が清吉のことを心配し、1年、2年と時がいくら経っても探し続けていた。


あれから4年の年月が過ぎた晩秋の季節に、和尚のところへ清吉によく似た者を吉原で見たという情報を町の人が持って来てくれた。


和尚は鳳翔山と2人、吉原へと向かい、探し歩きまわっていた。


そして、ある店の近くに倒れている人を見つけた。駆け寄り、顔を見たら、骸骨のようにやせ細った清吉だった。汚れた髪に、汚れて破れた着物を着て生きてるのか死んでるのかもわからない。


鳳翔山は、息をしているか確認して、和尚に生きている!と言った。その清吉のカラダを抱き上げた鳳翔山は、そのあまりの軽さに涙が出てしまう。こんなになるまで一人でお前、何やってた!


泣きながら、寺へ運ぶと、和尚と2人、医者を呼びに走っていた。


布団に寝かされた清吉を、子供たちは着物を脱がせ、布を濡らしてカラダを拭いた。すぐに真っ黒になる布を何度も何度も洗っては拭いた。一人の子は、清吉が水を飲めるようにと、唇が乾かないように水で湿らせ続けていた。


まるで死人のようになってしまった清吉を、みんなが泣きながら清吉にいちゃん、清吉にいちゃんと名前を呼ぶ。


医者がきて、点滴注射をし続けた。


それから1週間が過ぎて、清吉のカラダは少しだけふっくらとしたように見えた。


目が覚めた時に一人で寂しくないように、誰かしらいつもそばにいて、清吉のことを話していた。清吉は町1番の唐物屋になっても、いつも変わらず清吉にいちゃんで、遊びに行くといつも遊んでくれた。


帰りには珍しい舶来の小物を一つずつくれた。大きくなったら払ってくれよな!と言っていたが、にこにこしてて冗談だとわかる。帰る時はまたおいでー!と見送ってくれた。


清吉にいちゃんはこの寺の子供たちの英雄で埃だった。大きくなったら清吉にいちゃんみたいに一生懸命勉強して、頑張るんだ!


みんなそう思っていた。


子供たちの一人が清吉をみて、シクシクと泣きだしてしまう。我慢してたけど、涙が出てしまう。火事にさえならなければ、その場から居なくなったりしなければ、この寺へ来てくれてたら、、、


清吉にいちゃん。。。


にいちゃんにいちゃんと呼ぶ声がどこかでした。うるさいくらいに耳に聞こえた。この声は、太郎?この声は花子か。何泣いてんだ?


だんだん意識がもどり、清吉は泣いてる子、呼んでるこの名前を呼んでいた。


子供たちは、それ聞いて急いで和尚を呼びに行った。起きても目が開かず、真っ暗だった。




清吉は大勢の人に愛されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ