清吉の恋
清吉の唐物屋は繁盛だったのだが、、、
父上のことも気にはなるけれど、また夕霧たちに会える事がお雪は嬉しい。
きっと紅葉も紅くなる頃ね。その頃にはサザンカの蕾ももっと大きくなっているわね。
お雪は浮き浮きしながら、また兄の手紙を広げた。これを読むことがもう当たり前になっていた。
開店当初には大勢の人が集まってくれていた。その中にはちゃんと和尚の姿も子供たちも居た。鳳翔山と鏡山親方の鏡割りも大盛況で終わったのだった。
それから先も清吉のお店はいつもお客様で賑わっている。
この町1番の唐物屋になることが清吉にとっての夢。その為に、清吉はいつもお客様の声を大切にしながらも目新しいものや使い勝手の良いもの、はたまた高いものから安いものまで品数を揃えていった。
どんなお客様にも可愛がられるような店を目指して日々頑張っていた。
その甲斐あってか、清吉のお店はどんどんどんどん繁盛した。
そして半年もたたないうちに町1番の唐物屋になった。
そうなると周りの大きなお店の人達も黙ってはいられなくなったのか、商人たちが定期的に寄り集まって、話をする場に清吉も呼ばれるようになった。
そこから清吉は自分を見失うように、その連中と同じように遊び、その連中よりも多く1番お金を使うようになっていった。
その連中は、代々親から受け継がれたお店の若旦那がほとんどで、大した仕事も出来ないのに遊ぶことばかり覚えたいわゆる、バカのつく若旦那ばかりだという事を、清吉は知らずにいた。
それでも清吉のお店は使った金が返ってくるようにどんどん繁盛していた。
そんな時、清吉は生まれて初めて吉原というところへ足を踏み入れることになる。
結局、若旦那たちの遊びの行き着く先はそういう所だった。そんな所に来たことなかった清吉は、お金で人を買うなどということが実際にあることすら知らずにいた。
来たからには1番高い女の人を買おうと思っていた清吉は、その値段の高さに驚いた。
こんなところへそんな大金を、、、。
その金があればどれだけの物を仕入れることができるだろう。。。
そうも思ったが、ここまで来て渋っては一緒に来ている若旦那にバカにされるやも知れない。また、そのことを世間の人に言いまわられても困る。
もう、ほとんど、変な見栄を張っていると自分でも分かっている。けれども男にはここは引けない場所もある。
持ってきた金が多くて良かったと、清吉はホッと胸を撫で下ろした。
お雪、、、私も知らなかったんだけど、そんな世界があるんだよ。
女の人が自分のカラダを売って、それでご飯を食べている。
大抵の女の人は家の為に自分の身をそこへ沈める。
芸者と違ってカラダを売る商売。この話はお雪には同じ女としては辛い話かもしれないね。
けれども知っていてほしい。
そんな世界だけれど、そんな世界にあった話を、
お雪にも知っていてほしい。
、、、。
おやすみ。
、、、。
兄上、、、
私も吉原がどんなところかは知っているわよ。
詳しくは知らないけれど
同じ女として生まれてきたからわかるの。
あってはならない場所よね。
無くしていかなければならない場所。
幸せとは真逆の場所だから、無くさなきゃいけないの。
いつになく、お雪の中にはそんな風なハッキリとした思いがあったのだった。
吉原に足を踏み入れた清吉は、、、。




