鎌太郎
ふと目にした緑の実。その実のお話
夕霧の旅籠には旅人達の疲れを癒し、旅にきて出来る贅沢な時間を過ごして頂く為、部屋数はそんなに多くはなかった。
部屋数が少ない分、中庭や、本庭園が立派な造りになっていて部屋の1つ1つが独立した邸宅のように感じられる。
その庭にはお雪の庭と同じようにサザンカが植わっている。
鎌ちゃんは仕事が終わり、みんなでご飯を食べたあと、庭が1番綺麗に見える場所に座り、サザンカの木を眺めてる。お雪もサザンカ見てるかな?
そんなことを思いながら、見てた。こうしてボーっと庭を眺めているのが1番落ちつく。昼間の暑さが和らいで時折涼しい風が吹き抜けていく。
もう花は散って若葉も深緑色に染まった。その葉をよく見れば丸い実のようなものがみえる。
ん?
なんだ?あれ?
ジーっとサザンカの木を見てる鎌ちゃんに、夕霧は、お雪ちゃんのこと思い出してるの?
と聞いた。
いや、あの、あれは、実ですか?
ん?お雪ちゃんのこと考えてたんじゃなかったの?実?サザンカの実?
鎌ちゃんは夕霧にコクンと頷いてる。夕霧はサザンカの木をもう一度よく見てみた。
実みたいね。私も知らなかったわ!実だね!あれ!
実ですよね!やっぱりそうですよね!
そこに道蔵がやってきて、何してるの?2人で!どうしたのよ。自分だけ除け者みたいな気がするじゃない!
ねえ、サザンカって実がなるの?
そう聞く夕霧に道蔵は、そりゃ実つけるわよ。ツバキの仲間だもん。ツバキ油使ってるでしょ?あれ、実の中にある種から作ってるのよ。
ちょっと!なんで毛のないあたしの方が詳しいのよ!もう嫌になっちゃう!まったく!
じゃあ、石けんも作れるんじゃない?
作れるけど、時間かかるわよ。
サザンカで出来た石けんかぁ。。。
お土産に出来たら良いわねぇそれ。
そうですね。家に帰ってもこの旅籠のことを思い出してもらえたら嬉しい。
鎌ちゃんのその言葉を聞いて、夕霧は鎌ちゃんに持たせてあげたいと強く思った。
ねえ、道蔵は作り方わかるの?
わかるわよ。作ってみる?
うん!!。
力強く頷くと夕霧と道蔵、そして鎌ちゃんはサザンカの実を収穫することにした。
あと少ししたら居なくなってしまう。
その前にやってみたいことが3人に出来たのだった。
サザンカ