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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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兄の手紙、和尚

鳳翔山の育て親、和尚の話。

鳳翔山がまだ相撲取りになる前、小さな小さな赤ちゃんの頃に、お寺の境内に捨て子された。


その寺は町では知れた寺で、身寄りのない子供たちを引き取っては大きくなるまで育ててくれると、その話は有名な話だったそうだ。


なんでも、その和尚には両親がちゃんといたのだが、小さな頃に2人とも殺されていなかった。和尚がそれを知ったのは物心がつき、ちょうど私と同じ年の頃のことだったそうなんだ。


それまで、ずっと隣の世話好きなおばちゃんが、育ててくれたんだって。


おばちゃんは、和尚の母親が殺される少し前、母親に千両箱一つと赤ちゃんをおばちゃんに託して殺された。その千両箱の中に手紙が入っていて、何故、自分達が殺されてしまうかの理由も書かれていたそうなのだが、おばちゃんは残念ながら字が読めなかった。


とりあえず赤ちゃんを連れて、千両箱を布団でぐるぐる巻きにして、荷支度をすると、その町を後にして他所の町に移り住み、日々、質素だけれど、暖かなな生活を送っていたらしい。


おばちゃんがばあちゃんになって、和尚は大きく成長して、ばあちゃんが死ぬ少し前に、和尚に本当のことを打ち明けた。お前の母ちゃんと父ちゃんは殺されて死んだ。父ちゃんと母ちゃんはお前だけでも助けたいと、私に託して亡くなった。私は夫に先立たれて1人だったから本当の我が子のようにお前を育てた。


慎ましい生活だったけれど、私はお前がいて、とても幸せだったから、お前と一緒に託されたものには何一つ手をつけてはいないよ。あそこの布団の中を見てみなさい。あれが本当の父ちゃんと母ちゃんがお前に残したものだよ。お前のものだから好きなように使いなさい。


お母さんだと思っていた人が何の縁もゆかりもない、隣に住んでいたおばちゃんだと聞いても、和尚にはたった1人の育ててくれたお母さんだった。


血の繋がりが無くても家族になれる。幸せになれるんだと身をもって知っていた和尚は、布団の中にある千両箱を見つけ、その中の手紙を読んだ。


貧しいながらも寺子屋へ通わせてくれていた和尚にはお母さんのおかげで和尚は字が読めた。


そこには父と母がどうしてこんなにお金を持っていたか、そしてどうして命を狙われるハメになったのかが書きしたためられていた。もちろん、父と母を殺したその人の名前も書いてある。


和尚はその書いてある名前の男を探すことにした。そして見つけた。


その場所は意外な場所だった。


その場所はお寺だった。そしてその寺の住職が、父と母を殺した男だった。住職は広いその寺にたった1人で暮らしていた。


和尚はその寺に修行にきたとウソをつき、しばらくその住職を調べてみたが、悪い噂が一切無い。だがしかし、どこかでまたシッポを出すんじゃないかと長い間、そこにいたせいか、逆に住職から可愛がられるようになってしまっていた。


和尚は住職はもしかしたら心を入れ替えて良い人になったのかもしれないと、本当のことを話すことにした。


住職はその話を聞き終わると、和尚をしみじみと見つめて、すまなかったと言うと、自ら命を絶った。和尚の目の前で、持っていた短刀で喉を掻っ切った。あたりが血に染まり、和尚の顔にも住職の血が飛び散っていた。


住職は一言、亡くなる前に和尚に言う。どれだけ金があって、地位が高くなっても、ずっと孤独だった。この何日か、お前と一緒にいて、本当の幸せに出会ったような気がしたよ。


本当の幸せは、


心が安らぐ人と一緒にいることなんだな。いまのいままで気づけなかった。だから、いまのお前の話を聞いた以上は生きている訳にはいかない。


すまなかった。


最後に住職はそう言い残し、和尚の腕の中で死んだ。


和尚はその日からこの寺の住職になり、この寺に住職の墓を建て、身寄りのない子供たちを引き取っては大きく育てて世の中へと送り出す。


そんな過去のある人だった。


ね!お雪!


この和尚さんに先日会うことができたんだよ。


鳳翔山関から話を聞いていたからもう緊張したよ。女の人と間違うくらい綺麗な人でね、もうじい様のハズなのに若いんだ。


鳳翔山関がね、あの人はいつ見ても変わらないって言ってたよ。


お雪、話はまだまだ続くんだ。長いから、今夜はもうお休みよね。


お雪はそこまで読むと、兄が書いている通り、眠ることにした。


手紙はまだまだ分厚い。


本当に夢みたいな本当の話なのね。


けれど良い話なのか悪い話なのかわからないけれど、死んだ住職さんは、和尚さんのこと、どう思ってたのかしら。


気になっちゃう。


お雪は悶々としながらサザンカにおやすみと声をかけ、眠りについたのだった。



鳳翔山の親友の話にいきます。

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