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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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鏡山親方の教え

稽古場での風景

まだ夜も明けぬ暗い中、朝だぞ!起きろー!と起こされた鎌ちゃんは、鳳翔山のまわしを締める他の付き人に付いて、まわしの締め方を教わったが、朝が早すぎて、ちゃんと頭に入ってこない。


それでも重い瞼を必死こいて開けて、ボーっとする頭を何度か振って自分に気合いを入れ直す。


夕霧たちと市場へ出かけていくよりも早い。


秋も深くなると朝晩は冷える。それでも起きて、鎌ちゃんはまわしを締めて鳳翔山のあとに付いて稽古場へと向かう。


まだ誰も来ていない。シンと静まりかえった稽古場で、怪我があってはならないと、鳳翔山は柔軟をはじめ、付き人のみんながそれを真似る。


鎌ちゃんも鳳翔山に習って柔軟をしていくが、鳳翔山の足元にも及ばないくらい、固い。


鳳翔山は鎌ちゃんを見て言った。


強くなるには足腰の柔軟は欠かせない。これをやっていれば怪我が防げる。それに粘り強く向かっていけるぞ。


はい!


鎌ちゃんは泣きそうになるくらい痛いのを我慢して柔軟に耐えている。


そんな姿を見て鳳翔山は、親方、良い弟子を連れてきたなと思うのだった。


ぶつかり稽古をつけてもらい、クタクタになった頃、ようやく鏡山親方がやってきた。おはようございますと皆が出迎え、鳳翔山は兄弟弟子との稽古を始めた。


親方から叱咤激励が飛び、鳳翔山はカラダから湯気をあげて倒れるんじゃないかと心配になるくらいの練習をする。


本番になった時に力を出せばいいんだという考えは鳳翔山にはない。稽古がそのまま本番にも出ることを鳳翔山は身をもって経験している。


それに自分の付き人たちにそんな手を抜くような姿を見せてしまっては示しがつかない。いつでもお手本にならなければならない。


鎌ちゃんはその鳳翔山の姿をじっと見つめている。何も言わず、ただ、ただ、一生懸命しかないくらいのその稽古風景は鎌ちゃんの心に今までなかった感情を抱かせるのだった。

さ、次はお雪に手紙が届きます。

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