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旅立ちの時  作者: 美藤蓮花
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鎌太郎

梅雨の時期が今年は長引いていて、例年よりは気温も上がらず、夏らしくない夏を迎えた。


ここは夕霧の旅籠。


女将の夕霧がきりもりし、花板の道蔵が料理全般を任される。夕方まで中居として近所の長屋に住む奥さん連中がこの屋で働いている。


そこに半年前からきた、実は湯本家の長男で、武家の屋敷から家を出てきた鎌太郎【本名は湯本総太郎】

はこの屋の女将の夕霧と花板の道蔵に助けてもらい、今に至る。


家出してそのまま親元へ帰らず、このまま旅立ちの準備をしていた。


湯本家では、もう聡太郎は亡くなってしまったのではないかとそう噂をする家来も何人かいる。


しかし、湯本家の中には実は聡太郎が生きていることを知る者たちがいた。


聡太郎の妹のお雪、その女中たち、そしてお雪をお守りする家来、そしてその家来の叔父で役人の男。それにもうひとり、お殿様の1番の家来の伊助。それ以外の者は聡太郎が今どうしているか知らない。


皿を洗う鎌ちゃんの所へ夕霧がまだ洗っていない皿を持って隣に並ぶように横に陣取り、皿を一緒に洗ってくれる。


私が洗うので置いておいてください。そう言う鎌ちゃんを見て夕霧は言う。こうして鎌ちゃんとお皿を洗うのも、もう何日も無いんだから一緒に洗わせてよね。


鎌ちゃんは黙って夕霧の綺麗な横顔を見て少しとまる。


とその隣に今度は道蔵もまだ洗っていないお皿を持って道蔵もきた。


夕霧と道蔵に挟まれ、鎌ちゃんは、また黙ってお皿を洗い始めた。


この暑い日に暑いじゃないのよー!なんで道蔵までくるのよー。


いいじゃない!あたしだって鎌ちゃんとお皿一緒に洗いたいんだもん!


ね!いいじゃないよね!


大きなカラダにツルツルに剃り上げた頭。見た目は怖そうなのに道蔵の中身は女の子。最初はびっくりした鎌ちゃんも、もう慣れた。


いつもどんな時でも誰より優しい心を持つことも、誰より傷ついてきたことも。ここで働くみんなが知っている。


3人は仲良く並んで皿を洗い終わると、それぞれの仕事へ戻っていく。


あと3日したらこの旅籠を鎌ちゃんはでていく。


行き先はまだ何一つ決まっていなかった。




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