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悪魔と魔法使い




時間を少し巻き戻るーーー。




フレイアは転移(テレポート)を使い、一人シルヴィの家へと帰っていた。

フレイアはベットに横になり顔をうずくめる。




(あー、何かやらかした感が物凄いーーー別に私は悪いことはしてないし、むしろ向こうが全部悪い……只、シルヴィをあのまま置いてきては良かったのかな、あの村人共は確実にシルヴィの事も嫌ってたし……ってか、今度何処かに出掛ける時は種族変換(クラスチェンジ)の魔法でも使っといた方が良さそうね)




その様な事を考えながら半時程度たった頃だった。

シルヴィがおもむろに部屋に入ってくる。



「……フレイア、ただいま! 何か今日は嫌な思いさせちゃて、ごめん」



シルヴィはそう言うと笑みを浮かべる。

 只それがフレイアには無理にでも作ってるような物に見え、とても違和感が無いようで見苦しいような、その様な複雑なものであった。



フレイアは喉まで言葉がでかかるが、ぐっと堪える。



「今度村の皆と話す機会を作るからさ「いいよ、そう言うの……」」

「で、でも……」

「いいから、向こうも嫌ってる……それにシルヴィも好かれてはいないみたいだけど?」

 「それは…‼……」



シルヴィは返す言葉もなく黙りこむ。



「何でシルヴィはあんな村にいるの?」



フレイアは窓の外を眺めながらボソッと呟く。


「え?…」



フレイアのシルヴィの質問に戸惑う。



「いや、あのね、シルヴィが何であんな風に思われながらも彼処にいるのか不思議でね?」

「いや、何で……その事を?……」

「私は普通の人よりかは耳はよくてね、その、聞こえたと言うかね」

「そうなんだ、しってたんだね……」




シルヴィもあの言われようだ、相当な何かが過去に会ったのかもしれない。

 聴くべきでは無いのだがシルヴィは長年此処に住んでいるようだし、シルヴィが他に話す人物もいなそうである。 

 シルヴィの前に言っていた知り合いの冒険者もそこまでの本音で話せる中だとも限らない、これもフレイアの独断的な判断でしか無いのだがフレイアは事情を聞くことにした。



「何があったのかは知らないけど、私で避ければ相談には乗るけど、まぁ嫌なら嫌で………‼…ッッ…‼」

 


シルヴィはフレイアのその言葉を聴くや否やシルヴィに飛び付く。


 


「何で……何で……私なの…?…」




シルヴィはフレイアに顔をうずくめる、涙を流しているのか、滴……恐らくは涙がフレイアの身体を伝う、それとすすり泣く声もである。



「私だって‼ ……私だって、一生懸命やってるだよ⁉ 何で何で‼ 誰も認めてくれないの?」



シルヴィは怒鳴り付ける様な、いや、泣き叫ぶような震え声であった。

フレイアは何も言わず、ただシルヴィの頭に手を回し、なで回す。



「そうなのね、いままで大変だったのね……」



フレイアのその言葉を聞いてシルヴィは更に強くフレイアを抱き締める。



「何で?……私が魔法を使えるだけで、何で?…皆から仲間外れにされないと行けないの?……私だっ…て……こんな力欲しくないのに‼ 私は悪くないのに……」



シルヴィは今まで貯まっていた、感状が溢れ出す、長年、誰にも話せなかった貯まりに貯まって募った感状がすべて放出されているのだろう。



「そうなのね、それは辛かったのね……もう無理しなくても大丈夫だから……」



フレイアは力一杯抱き締めるシルヴィを抱き締め返す。




シルヴィはこんなに他人に優しくされたのは十年ぶり以上である。それ以降シルヴィは今でも思い出したくない様な日々が続いた、シルヴィの身体にはその名残が生々しく残ってる、実際シルヴィが基本的に長いスカートに長袖の服を着ているのはその為である。



「うぁぁぁああぁぁぁん‼」



シルヴィは声に出して泣きわめく、貯めてきた感状が溢れ出し半ば制御が着かなくなっているのだろうか、フレイアの首に手を回し、体重を預けている。


「よしよし……シルヴィは頑張ってる……」



シルヴィの頭を再びなで回す。


フレイアはふとシルヴィの手首の辺りを見ると、火傷の様な傷跡があるのを見つける。



(まさか……ね?)



フレイアはそう思いながら低位の中でも最上位の魔法ーーー透視と視界変更を唱える。



魔法の効果でフレイアの脳内で何か頭で鮮明に考えているかの様にシルヴィの背中の光景が写し出される。

本当は見ては行けないのだろう、いや、見ないべきなのであったのだろう、特に透視には対象の過去の記憶を覗いてしまうという弊害もあるのだ。



フレイアは続いて透視を発動させる。



「ーーーッッ⁉」



そこに写し出された光景にフレイアは目を疑った。身体全体を覆うレベルの火傷の後に様々な所につけられた古傷の数々が痛々しくもシルヴィの身体に残されていた。


かつてフレイアも拷問を長年受けた兵士の傷を見たことがあったがそれとは比に成らないレベルである、もしかしたら最上位の回復魔法でも傷跡を消せないかも知れない、いや、このレベルは無理だ。



シルヴィにこんなことをする奴らは村人共なのだろうか……そんな事は無いとは願いたい、いや、願いたかった。



フレイアは余り物光景に半分存在を忘れていた透視の弊害が始まった。




フレイアの脳内にシルヴィのかつての記憶が写し出させていく。

何処かの家の調理場の光景が写し出させる。


ーーー「気持ち悪いんだよ‼ この魔女が‼ 人の家の食べ物を盗んで‼」


まだ年齢を10を行くか行かないかの幼いシルヴィに罵倒を浴びせるは先程の人の事を淫魔とか言ってきた餓鬼の親であった。


「ひっ⁉ ご、ごめんなさい、でも……食べるもが無くて……」


怯えきるシルヴィにそのクソ親は信じられない光景にでる。


そのクソ親は釜戸で熱していた湯だった鍋を頭からシルヴィにぶちまけたのである。



「嘘……でしょう?…」



シルヴィは思わず、声が漏れる。もしも自分ならこんな事ができるだろうか、いや無理だ、この世界に来てから大分性格は穏やかになったが、こればかりはかつての自分に聞いても同じ反応が帰ってくるだろう、どうだかは分からないが。



「ああぁぁぁお母さぁぁ‼」



シルヴィは暑さに悶え苦しみながら床を転げ回る、今のこの火傷痕もこれの名残だろうか。



(あのクソ親……よくもこんなことを、あり得ない……)



フレイアは凄まじい殺意、そして悔しさが込み上げる、できるならもうこんなものは見たくない、だがこの弊害は詠唱者の意思に関係なく強制的に続きを見せられる。



そして次の瞬間別の光景に切り替わる。


今度は村の近くの森の中である。


幼いシルヴィは同年代の男女に囲まれていた。



「この魔女が‼ 気持ち悪いんだよ‼」



一人の少年が怒鳴り付ける、この少年ににた青年も村で見た。



「そうよそうよ、悪い魔女は懲らしめましょう」


「そうだ‼ やってしまえ‼」


その幼い男女は小刀を片手にシルヴィに近寄る


「や、やめてよ……」 



シルヴィは悲願する。だがその糞餓鬼達はその小刀を片手に文字どうり、シルヴィを滅多刺しにする、何故今生きているのか不思議な位だ。


言葉も出さずに耐えるシルヴィーーー生気の無い瞳から涙を流していた。



「ウァガァァァ⁉……」



フレイアは余りに胸糞悪い光景に嘔吐しそうになった、フレイアは喉まで出かかった酸っぱいものを飲み込む。


シルヴィは未だにフレイアの胸の中で泣きわめいている。


「貴方は何も悪くない……何も悪くないから」


フレイアは震えながらシルヴィの強く再び頭をなで回す。フレイアのその瞳には涙を浮かべていた、魔族のフレイアがである。



何故、あのような残酷な事が出来るのかフレイアには分からない、魔族は残酷極まりないと言われるがかなりの誇張がある。実際は他の種族と何ら代わりはない。

フレイアは何故こんな残虐な事が出来るのか分からなかった。出来ればもうこんな光景は見たくはない、だが弊害はお構いなしに次の光景を写し出す。




今度は何処かの倉か何かだ、妙に薄暗い。


幼いシルヴィを取り囲む様に数人の男がいる。


「おい、ほんとにいいのかよ……」


「嗚呼、こんな奴がどうなろうと構う奴はいねえょ」



シルヴィはこの頃になると喋る気力も無くなってたのだろうか、只黙って虚無を見つめ続けている。


男の一人はシルヴィに近ずく。


「おい、やめろ……」

フレイアは自分の脳内に写し出された男に怒鳴り付ける。



男はシルヴィにちかずきサディスティクな笑みを浮かべる。


「……しませ……ても……らぁ……なぁ……


弊害の効果が切れたのかその光景はポツリと見えなくなる。


フレイアは汗もダクダクで息も絶え絶えであった。もしも自分がシルヴィなら耐えられただろうか……いや、無理だ、フレイアは再び殺意が蘇る、シルヴィをこんな目に合わせ今でも平然に生きる処か今もその延長線上の行為をやっている、それが例え他人でもあんな生々しく見せられて放置できるだろうか、少なくてもフレイアには無理である、あのクソ親も餓鬼も残虐に殺してやりたい、10倍返しでだ、そしてそれはフレイアには出きる。


「シルヴィは本当に悪くない……大丈夫だから、安心して」


未だに泣きわめいているシルヴィに赤子をあやすように優しく語りかける。

いずれ、いや今にでも殺してやりたい、特に最後の男共があのあとシルヴィに何をしたかは明白だ、ならあの男達はあれを叩き切って、あのクソ親は火球(ファイアーボール)で焼き殺して、等と頭の中で色々と妄想する。



フレイアはシルヴィにこんなことをした奴等に報いてやりたいという一心であった。そしてそれはシルヴィの許可が得れなくても行うつもりである、だが今はこうしてあやしてやろう……あの辛さを少しでも緩和してほしい、フレイアはそう思い、シルヴィの頭を擦り続ける。



*




それから暫くして泣き止んだシルヴィはベットの上でフレイアの膝枕で眠りについていた。

一刻程度がたった頃だろうか、シルヴィは目を覚ます。


「ん? 起きたの?」

 


「う……うん」


シルヴィはフレイアの方を気まずそうに見る。


「んと……その、怒ってる?…」

「何で私が怒ってるの?」

「いや、そのあれ……の……事……」



フレイアはため息をつきフレイアに語りかける。



「ねぇ……シルヴィ……あの村の奴等を皆殺しにしようか?」


「え⁉」


フレイアのまるで日常会話の如く放たれた言葉に困惑する。



「シルヴィには悪いけど……てか見るつもりは無かった……でもシルヴィの過去の記憶を見して貰った、そこはごめん、掘り返させたくない記憶だろうに」

「そ、そうなんだ……でも……殺すなんて…」

「あんなことされて黙ってるの?」



フレイアの見たシルヴィの過去の記憶は氷山の一角に過ぎない。他にも数多の残虐的な事をされて来たのだろう。



「結局は自分が悪いの‼ だから……」



「シルヴィは悪くは無いって言ったでしょ?」



フレイアは蔑むような目付きで睨み付ける。



「まぁ、直ぐにどうするとか言わないけど、近いうちには決めといてね。」

 

「……え?…う、うん」



シルヴィは完全に困惑していた。どう答えたら良いのか分からないのだろうか。

 


その時であった。



ドアを激しく連打する、音が家中に響き渡る。



「おい、クソ魔女‼ いんだろ‼ 出てこいよ‼」



あのクソ親の声だ。フレイアはその忌々しい声を聞いて拳に力を込める、腕から血が滴る程である。



「フレイア、少し待ってて、出てくるから。」


「シルヴィ……私も行くよ、」


この状況下でシルヴィを一人行かせる訳には行かないだろう。





シルヴィは玄関の鍵を開けると扉を外す勢いでクソ親が家へと押し入ってくる。



そのクソ親は返り血だろうか全身を赤く染め上げている。途中で転んだのか足を擦りむいていた、息も荒く急いでここまで来たのだろうか。

 

「おい‼ お前ら‼ 村に黒装束の盗賊共を送ったのはお前らだろ‼」

「え⁉ 私は何も……」

「嘘を付くな‼ 私達に恨みがあるからって‼ シュラフが……シュラフが死んだのよ⁉」

「え?…シュラフが?」

「私の息子の名前を呼ぶな‼ 忌々しい‼」

「盗賊って何ですか? 私にはさっぱり……」

「ふざけるんじゃねぇよ‼ こんな何もない村に盗賊が襲いにくるはずはないだろ‼ お前の使い魔のサキュバスが身体を売って集めた雑兵だろ⁉」



そのクソ親はフレイアを見つめる。フレイアはその話を聞いて邪悪な笑みを浮かべていた。すべてこの女の因果応報……ざまぁないと。



「おい‼ 淫魔‼ 何笑ってんだよ⁉」


フレイアはクソ親に手の平を翳す。



衝撃(ポウ)ーーー」 



フレイアの手のひらから見えないエネルギーの塊を放出する。

クソ親は数メートル吹き飛ばされ、扉ごと家の外へ吹き飛ばさせる。



「ちょと‼ シルヴィ‼ 何をしているの⁉」

「いいから黙って見ててよ……」

「何する‼ この悪魔‼ お前なんて、今すぐにでも教会にいって駆除してやるよ‼」



フレイアは外に吹き飛ばされた、無駄口を叩くクソ親に低温火球(ローファイヤーボール)を放つ。



「熱い熱い‼ あぁぁあぁぁぁ‼」



クソ親は身体中を炎に抱かれ地面を転げ回る。

 


続いてフレイアは異常常態永続を唱える。



これでこの低温の炎が死ぬまでこの女を縛り付けることになる。


「ねぇ‼ フレイアやめて‼」


「やめないよ……こいつはそれだけの事をしたのだから」


フレイアはそう言うと武具製作(ウェポン・サモン)を唱える、何処からもなく現れた刃渡り30㎝程度の短刀をシルヴィに渡す。


「ねぇ……シルヴィ、これで楽にしてあげなよ?」

「で、でも……」

「消えない火の魔法をかけた、だから早く楽にしてあげなよ……」  



フレイアはシルヴィの背中を強く押し前に出す。



「あぁぁあぁぁ‼ 熱いぃぉ‼ 殺ずぉぉずおぉ‼ おばえらぁぁ‼ ゆずぁひぃぃ‼」



女は未だに地面を転げ回り、言葉にすら成りきれてない叫び声を上げる。



「ごめん……なさ……い」


シルヴィは短刀を燃え盛る女に馬乗りになり身体に一撃、ぶっ刺す。



その瞬間、シルヴィに溜まり溜まった黒い感情が溢れだす。今まで押さえつけられてきた、怨みの感情が、本人すら忘れてしまわせられていた。サディスティク的なドス黒い感情が溢れだす。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……」



シルヴィは一心不乱に短刀を女に突き刺していく。最早本人が誰なのか理解出来ないほどに、シルヴィが自我を取り戻す頃には滅多刺しにされ黒焦げになった女の死体が目の前にあった。


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