表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/46

血濡れの豹

久しぶりに投稿します。

受験が近いのでしばらくは更新が遅くなるかと

 


小高い山の山頂から川を挟んだ崖沿いにある村を眺めている一団がいた。


彼等はどれも黒い全身を覆うフード付きのマントを被り闇夜に紛れやすくしていた。




彼等はここから遥か遠くに位置する人類史上最大の国家アルフェルト皇国の特殊暗殺部隊の一つ血濡(アサシン)れの(パンター)の中の精鋭の精鋭30名であった。




アルフェルト皇国は総人口1000万に至る都市型国家で恵まれた地下資源、そしてほぼ完璧な状態で保存されてる旧古代文明の兵器群、更には優秀な魔導士。

そのすべてが揃った、史上最強クラスの軍隊を持つ軍事国家でもある、その中でも血濡(アサシン)れの(パンター)は個々の実力は皇国十二騎士団に匹敵し、暗殺部隊の中でも最も優秀、その中の精鋭の精鋭が集められたのは目標がそれほどの存在であるためである。


「こんな貧相な村に本当にあの元四大英雄がいるのでしょうか?」一人の双眼鏡を覗き村を眺めていた男がその一団のリーダーらしき男に話しかける。


「嗚呼、間違いない、ここにいるはずだ……」


彼の名前はジーク・ウェルダン、30過ぎの男で血濡(アサシン)れの(パンター)が隊長である


今回の目標は皇国四大英雄と呼ばれた一人の男の暗殺が目的でその男こそが厄介であった、その男の名はフロイゼン・コルクスソウーーー単騎で千人の兵士に匹敵すると言われた皇国の英雄になるべき存在であった、しかし今は単なる駆除目標でしかない。


「しかし、我々だけでフロイゼンが手に余るでしょうか? 精鋭の我等とて奴はあまりにも強すぎます」


確かに単騎で並みの5人の兵士と互角に渡り合えると言われている皇国十二騎士団と同等の実力を持つ彼等とてフロイゼンには敵わない。


「問題ない……これを見ろ」

ジークは懐から紫色のクリスタルを取り出す。


「こいつの使用許可が降りた、これを使えば負けることは在るまい」


そのクリスタルは封印聖石と呼ばれている国宝級の代物である、これは魔物を封印し従属させる事が出来る、この封印聖石にはかつて一万人の討伐隊を結成しその過半数の犠牲を出しながらかろうじで捕獲した、伝説級のモンスター、黒き邪龍(ダークドラゴン)が封じられている。

この邪龍を封じた封印聖石は邪龍霊石と呼ばれ皇国三大秘宝とまで呼ばれていた、残りの2つは一つの国家に匹敵する戦力を持つ古代文明の結集物、国落としーーーそして国一つを吹き飛ばす威力を持ち古代文明を滅ぼした遺物の最後の一つ核ーーーである。





それ以上の事は皇国の相当な上層部に位置するジークですらそれ以上の事は知らない、しかし邪龍霊石はその様な物品に匹敵する物である事は重々承知している。


「それに俺等は今、このオリハルコンで出来た鎧をマントの下に仕組んでる、防御面も完璧だ……まぁとりあえず、日の出と共に奇襲を仕掛ける、それまでゆっくり休んどけ……」


ジークはそう男に告げると村の方を睨み付ける。


「フロイゼン・コルクスソウーーーあのまま皇国に忠義を尽くして入れば良かったものを、全く馬鹿な男だ………」


 


*



崖沿いにある小村、シシド村は総人口120人程度の小さな村だ。


森から一人の三十代程度の白髪混じりのしっかりとした体格の屈強な男が猪を二匹担ぎ上げ、村へと戻ってきた、村人たちーーー特に子供たちはその男に群がり親しそうな雰囲気だ。


彼の名前はフロイゼン・コルクスソウーーーかつての皇国四大英雄の一人。

彼はかつて皇国の部下の命を軽視する上層部に嫌気が差し十年前に皇国を抜け出して、今はこの遠く離れた辺境の地のこの村の一員として生活している。

 

「いつも悪いなぁ、フロイゼン」

 

一人の初老の男が話しかける。


「いや……こんな良い村に済まして貰ってんだ、この位はさせてくれ」


フロイゼンはそう言うと猪を担ぎ村の共同調理場へと向かった。


フロイゼンはそのあと狩りの疲れからか疲労が溜まりその日は直ぐに休む事にした、途中「あんたが取ってきた猪を一緒に食わないか」と誘われたが軽く断り家に戻り眠りについた、それが後の悲劇に繋がるとは知らずに。



その日の朝型、家に激しくノックする音が聞こえる、それと同時に怒鳴り声もである。


それで目を覚ました、フロイゼンはドアを開ける。


「村長どうしたんだ? そんなに焦って」


村長は右手には剣を持ち、息も絶え絶えで今にも倒れそうだった。





「盗賊の襲撃だ‼ 」


辺りを見渡すと何人もの村人が血を流し倒れている。


「何⁉ 一体どうした⁉」


「それも滅茶苦茶に強………グシャァ……」


その瞬間に村長の頭が中を舞い血が吹き出る。


「……………⁉」


その背後には剣を持つ黒いマントで覆った盗賊がいた。


「貴様ぁぁぁぁぁ‼ よくもやってくれたなぁ‼」


フロイゼンは激怒した、憎悪と憎しみが混ざった物である。


フロイゼンは村長の持っていた剣を手に取り盗賊に斬りかかる。


盗賊は剣で防御の姿勢をとる


盗賊は何とか一撃を剣で受け止める


ガチィンと言う金属音を立てるとフロイゼンの持っていた鉄製の剣はまるで強い衝撃を受けた木材の様に碎け散る。


「貴様‼ その剣はオリハルコン製だな⁉ 盗賊がその様な上等な武器を持ってる筈がない、答えろ⁉」


フロイゼンは盗賊に怒鳴りかけるが盗賊は答えない。


盗賊は再びオリハルコンの剣で斬りかかろうと降り下ろしてくる。


フロイゼンは軽い身のこなしで容易く避ける。


盗賊は直ぐ様追跡するようにフロイゼンに斬りかかる。


再びフロイゼンは避け一瞬の隙をつき盗賊の右手を凄まじい握力で握り潰す。


盗賊は余りにもの痛みで手に持っていたオリハルコンの剣を地面に落とす。


フロイゼンは透かさず盗賊を突飛ばしその剣を手に取り盗賊を斬り倒す、斬り倒すとき何やら以上に固いものに当たるような感触をフロイゼンは感じた。


盗賊はしばらく蠢いた後ピクリとも動かなくなる。


火球(ファイヤーボール)

何処からもなく呪文を詠唱する声が響き渡る。


「無効‼」フロイゼンがそう言うとフロイゼンの体が白く光る。


火球がフロイゼンに当たるが何事も無かったように無効化される。


背後を見ると黒色のマントを羽織った先程同様の盗賊がいた。


「斬撃‼」

フロイゼンがそう言うと剣の先から衝撃波が放たれる。


盗賊は避ける暇もなく真っ二つになる、更には後ろにあったフロイゼンの自宅に命中し半壊する。


「何なんだよ‼ こいつらは‼」


すかさず後ろから突然別の盗賊が姿を表し斬りかかってくる。


フロイゼンはとっさに剣で受け止める、剣で透かさず反撃し切り捨てる。


盗賊の死体はどれもオリハルコンの剣を持っていた、切りつけた感触からマントのしたにもオリハルコンの鎧をつけてる可能性もある。


こんな装備を持っている盗賊など聞いたことがない、いや存在しない。  


オリハルコンと言うのは金の100倍の価値でやり取りされる希少金属だ、盗賊が持てる筈などない、となると考えられるのはフロイゼンを討つために送られた何処かの国家勢力の刺客だとしか考えられない。


そしてその様な上等な装備を持たせられる勢力はフロイゼンは三つしか知らない。


まず一つはアルフェルト皇国のその先にあるアランの大樹海に存在するエルフ至上主義国にして唯一のエルフ主体国家ラキュース神国ーーーーーーーーーそして大陸各地に点在する邪神を信仰する暗黒教団ーーーーーー銀の懺悔の会ーーーそしてアルフェルト皇国である。


フロイゼンは盗賊の死体のマントを剥がす、そうすると二十代前半の人間の男であった。

この事からエルフ至上主義であるラキュース神国ではない事は確定した。






フロイゼンは村を走り回っていた、あちこちに村人たち死体が転がっていた、気の良い鍛冶屋の男、元気の良い村娘、自分になついてくれた村の子供たち、老若男女構わず殺されていた。


フロイゼンは怒りが混み上がってくる、なぜ自分を殺すために他人を巻き込む必要があったのかと。


随分と村を探し回ったが生存者は誰一人といない、そしてあの刺客たちも。


だんだんと日も登り辺りもよく見えるようになった頃合いである。


何とか生存者を見つけようと必死にフロイゼンは探し回っていた。


目の前に突然と七人の黒いマントを羽織った刺客達が現れる。


「貴様等は何処の手先の物だ‼」

フロイゼンは怒鳴り付ける


「貴様に答える必要はない……」

一人の刺客はそう呟くとオリハルコンの剣を片手に飛びかかってくる。


フロイゼンは飛びかかってきた刺客を華麗に避けすかさず剣で切りつける。


すかさず一人また一人と刺客たちは飛びかかってくる、フロイゼンは次から次へと刺客たちを斬り倒していく。


「次は貴様等だ……覚悟しろ……」

フロイゼンは残った四人の刺客たちを睨み付ける。


「おっと……お前にそれがお前に出来るか?」

一人の刺客がそう言うと別の二人の刺客が一人の子供を押さえつけ連れてくる、その子供はフロイゼンがよく知っている村の子供の一人である、その子供は9才程度の男の子であったが今の姿からは想像することすら出来ない。

 

「おっさん……助けて……」


その男の子の声はいつもの様子からは想像すら出来ないほど弱々しいものだった。


「待ってろ、今すぐ助けに……」


フロイゼンは剣を片手に近寄ろうとしている。


「おい‼ いいのか? この子の首が吹き飛ぶぞ?」

刺客は男の子の首にナイフを突きつける。


「この子を助けたければついてこい……」

そう言うと男の子を押さえる二人の刺客ともう一人の刺客がが近くの森の細道の方へと向かう。


「貴様等‼ 待て‼」


フロイゼンは剣を片手に追いかけようとする。


その目の前にフロイゼンを妨害するように残った三人の刺客達が立ち塞がる。


「邪魔だぁぁぁああぁぁぁ‼」

フロイゼンは立ち塞がった刺客たちに斬りかかる。

「陣滅豪波‼」

フロイゼンがそう叫ぶと三人の刺客達が辺りの家屋ごと吹き飛び跡形も無くなる。


陣滅豪波ーーーーーー彼が皇国四大英雄で会ったとき一気に百人の敵兵を吹き飛ばした秘技である。


辺り一体を吹き飛ばしたフロイゼンは細道へと進んでいく。



*


しばらく細道を進むと開けた場所へと出る、広さは中々に広くその先には断崖絶壁の崖にその下には川が広がっている。


そこには二十名近い刺客達と男の子そしてジーク・ウェルダンの姿があった。


「中々に遅かったなぁ……フロイゼン……」


「お前はジーク⁉ やはり皇国の仕業か⁉ 今更何の用事だ‼ 何故村の人を巻き込んだ⁉」


ジークはにたりと笑みを浮かべる

「いやなぁ……最初はお前のことも無視する方針だったがな、そうは行かない状況になったのだ……お前には悪いがここで死んでもらう」


「ほぅ……この元四大英雄の俺を殺せると?」


「嗚呼、殺せるさ……」

ジークがそう言うと懐から二つの白色の封印聖石を取り出す。


聖石は白い光を放ち2体モンスターが姿を表す。


ライオンの体に蛇の尻尾をもつ合成魔獣(キマイラ)と数十メートルの大きさの蛇、超大型大蛇(バジリスク)である。


「こいつらは地下都市探索で捕獲した神話級のモンスターだ、まぁお前には言わなくともわかると思うがな……」


フロイゼンは恐れる様子もなく剣を構える

「嗚呼、知ってるさ、俺はこのモンスターを倒してお前らを皆殺しにする、そしてその子だけでも助ける……」

フロイゼンは生気をまとっていない男の子を見つめる。


「それは面白い……やってみろよ?」 

ジークがそう言うと2体のモンスター達が一斉に襲いかかる。


合成魔獣(キマイラ)が獄炎の炎を吐き出す、その炎はフロイゼンを包み込む、しかしフロイゼンは無傷だ、フロイゼンは獄炎の炎を突き進み合成魔獣(キマイラ)の元までたどり着くと素早い動きで合成魔獣(キマイラ)の四肢のアキレス腱を切り裂く。


合成魔獣(キマイラ)は悲鳴にも似た咆哮をあげる、地面に倒れ込んだ合成魔獣(キマイラ)の首を斬ろうとするがアダマンタイトより固いと言われる合成魔獣(キマイラ)首筋の筋肉には傷一つ突かない。


「鉄板断絶‼」フロイゼンが叫ぶとフロイゼンのもつオリハルコンの剣が共鳴する。


そうしてもう一撃首筋に一太刀する、次は合成魔獣(キマイラ)の首が真っ二つに吹き飛び地面にもヒビがはいり大地に亀裂が入る。

 

すかさずに大型大蛇(バジリスク)が絡み付きフロイゼンを絞め殺そうとする、だが次の瞬間、大型大蛇(バジリスク)は切り刻まれる、吹き出した大量の血がフロイゼンを紅く染め上げる。


血濡(アサシン)れの(パンター)の面々からは「信じられない‼」「神話級のモンスターを一瞬で……」「奴は化け物か⁉」等と驚きの表情が隠せない様子だった。


「次は貴様等だ……」

全身を紅に染めたフロイゼンは鬼のような表情でヂリヂリとちかずく。


「ふふっまだ終わってないぞ? フロイゼンよ……」

ジークがそう言うと懐から紫色のクリスタルーーー邪龍霊石を取り出す。


「それは邪龍霊石……⁉」


「嗚呼、そうだ、お前が知らない訳も在るまい、喜べ‼ お前はこの皇国三大秘宝の1つで殺されるのだからな………さぁ現れるがいい‼ 黒き邪龍(ダークドラゴン)


ジークがそう言うと目の前に黒い渦が現れる、その渦はだんだんと龍の形になっていく、体長30メートル程度の漆黒の大龍が姿を現したのであった。



感想や誤字などがありましたら是非ご指摘などをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ