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離れがたきに、恋衣

作者: ハルカ カズラ

 うう……何であの人から目を離せないんだろ。アレはきっと、ご親切に遅れそうなわたしの手を引っ張ってくれたに過ぎないのに。


「出して」


「はぁはぁはぁ……ど、どうもです」


「ハハッ、どんだけ全力疾走してきたんだか」


 いっつも、朝の電車は余裕もって乗るのがわたし、カホという人間。なのに、超寝坊した。余裕で朝からごはん食べるし、健康的なのに……何故寝坊したし。


「ワアアアアア!?」


 そして、家から全力過ぎる疾走。駅の階段あと二段。抜かし上がりなら間に合うのに、体力なし。遅刻ってだけで萎える。


「カホ、手、出せ!」


 おぉ? どこのどなたの親切な右手ですか? 迷わずその手を掴みましたさ。そのまま二人でギリギリ電車に飛び乗ったまではよかったよ? しばらく顔上げられなくて、体力無さすぎ女って思われたね。


「カホだろ? 珍しいよな、遅刻とか」


 よくよく見たら遅刻常習魔の刈谷かりや? 一方的に片思いしてたけど諦めた刈谷なの?


「かりやん? や、キミに言われるとへこみます」


「それは照れる」


「褒めてないし!」


「確かに。仲良く遅刻とか、嬉しくね? 単純に俺いつも一人だからさ、それが二人だとこんなにも嬉しくなるもんなんだな」


「まぁ、それはまぁ……かりやんもまともに起きてればいいんでない?」


 うあーなに、何で? かりやんとこんなに話が出来るとかどういう朝ですか!? 普通に会話出来てる自分が怖いんですけど。なんかあるの、今日?


「真面目に起きてれば会えない。だから、かな」


「んんん? 学校でも会えるでしょ? 違うクラスだけど」


「ちげーし。遅れてきたカホの手を掴んで、こうして二人だけで話が出来るってのがやばいんだよな……」


 まぁ、学校じゃわたしから諦めてる。かりやんって人気だし、常に女子がいるしうかつに近付こうものなら、平和に過ごせないんだよね。


「カホは真面目だから、ほとんど遅刻しないだろ? でも、こうして会えるとかなんかすごいよな」


「そうとも言える……かな」


「嬉しいよな。学校じゃ疎遠っぽいのに、この時間に仲良く出来てるのがさ。やっぱ、一緒にいれる時間って必要だよな」


 あ、あれ? これって前向きに聞いてみると好きって言われてる? いやいや、まさか。


「カホもそう思わね? 普段会えない時間に、俺と会えて話が出来てる。嬉しいよな?」


「ホント、引っ張ってくれて電車間に合って、だけど結局仲良く遅刻とかって特別かもって思う」


「……そろそろ学校か。いや、なんつうか、カホに会いたかったら真面目に起きろってなるけど、遅刻したら二人で会えるって思ったら、俺、すげー緊張する……次も会えたらその時は――」


「えっ……あっ」


「じゃ、俺先に進むから。じゃあまたな、カホ」


「ま、またね、かりや」


 なんすかなんすかなんすか、去り際そんなこと言うのズルいな。刈谷のこと、もうずっと心から離れられなくなるでしょうが。思ってていいのかなぁ……また会えたら、その時は――かな。

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