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強制ライセンスなどの法改正と企業解体への戦い。そしてとある人物との出会い。

様々な調査や行動が拡大していく1947年、GEの次なる関心ごとといえば、強制ライセンスを含めた特許法の改正であった。


ロシア革命にて米国企業が被った被害を日本国に与えようとする行動に、GEは特に否定的な見解を持つ。

ここにはGEなりの国際商業展開手法と特許法のあり方というものが関係している。


GHQが当初改正しようとしていた強制ライセンスとは、簡単に説明すると日本で日本人によって発明されたものは特定の者達に自由に実施可能になり、逆に特定のものが実施しないならば特許を無効化した上で公開案件とするものであった。


一見それはカードの種類の名前がついた大統領が両手でサムズアップして喜びそうな感じがするが、実はこの人物ですら過去の自著にて強制ライセンス制度を「商売人のなんたるかを知らない人間が考えた愚考」と評価している。


理由としては、まず特許法というものは通常、国家が国力でもって元来は企業秘密としてきたものを公開し、他社に安易に模倣されないよう保護するものである。


その上でその技術を一定期間後は自由利用させるようにしつつも、その技術情報を国家が存続する間は永久管理しようと試みるものだ。


よって特定といえども米国企業なら誰によってでも実施できるということは模倣し放題であり、パテント契約など全く結ぶ余地がなくなる。

これは一見すると米国企業に有利なようで全く有利ではない。


例えば日本人が米国企業に先行して発明を生み出してしまった場合、米国企業は無償で実施できるが、それが非常に重要な特許であった場合、本来ならば莫大なパテント料を要求して莫大な利益を生む金塊が、ただの砂になってしまう。


例えば莫大な利益を生んだ特許として有名なのがVHSなどであるが、これはソニーがベータという商品で対抗していた一方、VHS自体が売れてもとてつもない利益がソニーに及ぶものであって、現在においてもソニーはこういった特許ライセンスを多く持ち、企業の大黒柱としている。


仮にそんな制度があったとして、そういうものをGEが生み出す前に強制ライセンス下のソニーが「磁気テープ」という形で生み出してしまったら、磁気テープ関係の技術で稼げるのは「単純なビデオカセットの売り上げ」だけになってしまい、旨味がまるでない。(むしろソニーが磁気テープを生み出すような時代において売り上げ勝負となったら日本の一人勝ちになりうるが、GEにはそれがすでに1940年代に予見できていた)


特許の場合、20年を経て開放されることで中小企業などが手を出して安い製品が出回り、消費者に喜ばれることはあるが、20年も経る前の「公開」や「登録」といったものがされた状況からそんなことになっては「何のために馬鹿みたいに開発費をかけて発明などしているのだ!」ということになりかねない。


ようは経済が回らないし開発費を回収できなくなるので何の意味もない制度なのだ。

強制ライセンスというのはソビエトのように「共産主義」という競争社会というのが資本の下では実質的に成立しえない国家ならば有効に働くが、資本主義国家においては企業が破綻する「爆弾」となりかねないのである。


ただし、こういった爆弾の爆発が特許法がある状況においても発生するということについては注意したい。


実は先ほど例を出した磁気テープによるビデオテープの登場によって米国のポラロイド社が経営に大ダメージを被ったことがある。


1977年。6500万ドルという莫大な開発費と生産費用をかけてポラロイド社はポーラビジョンというビデオカメラを世に送り出した。


これはポラロイド社のインスタントカメラの技術の結集させた傑作品として世に送り出したのだが、この時彼らは米国において登録や公開前であったVHS式ビデオカメラの存在を知らなかったのだった。


このポーラビジョン、音声も録音できなければ再生機器も限定される代物で価格も洒落にならないものであったのだが、ポラロイド社は「絶対に売れる」と確信をもって登場させた。


この3年前に登場したのがVHSであるが、ポーラビジョンの発売の翌年、片手サイズで撮影できるVHSカメラが日本メーカーより世界同時発売され爆発的にヒットする。


彼らはVHSの存在自体は認知していたが、それは「テレビ録画用」とばかり考え、それがビデオカメラが融合し、しかもそれまでとは比較にならない超小型で突然登場することを予測できなかった。


今の時代から比較すると大型とはいえ、肩に担いで抱えるのが当たり前であった時代に片手で持てるサイズとしてポーラビジョンを出したら、見事に全てにおいて上回る商品を販売され、その形式がデファクトスタンダードにまで昇華し、大損害を出してしまう。


特許法の真に恐ろしいことは、元来は企業秘密であるものという本質にあり、1年6月などといった非公開時期が設けられる間は出願人以外認知できない点にある。


だらこそ企業は先手先手と激しい開発競争を繰り広げ、そして開発した製品が本当に真の意味で世界の標準化すべきものだとしたら、時にはライセンス料を無償化したりして広めるわけだ。


ライセンス料を無償にして市場自体を形成した例としてはカップラーメンが有名であるが、こういったどういう形で利益を得るか?ということを考えるのも経営者の腕の見せ所であり、だからこそGEは戦時中であっても「帝国海軍と帝国陸軍の技術者に先手を打たれて利益を失わない」ために日本においてジェットエンジンの基礎技術などを含めた最新鋭の技術を東京芝浦電気を通して出願させたのだ。


それらはもはや「血を流さない発明戦争」というべき側面があり、冷戦の構造に酷似していた。

元帝国海軍の特許担当は後に冷戦の開発競争と当時のGE特許との類似点を指摘した文書を残しているが、もし仮に日本と米国が戦う事無く時が過ぎていたら、冷戦になっていたのかもしれない。


それはさておき、GEにとって特許とは金の卵を生み出すために重要なリンカーンが主張した「火に油を注ぐ」存在であって、それはどの国においても同じ概念で成立してなくては困るのだ。


必死でなんらかの方法を用いて東京芝浦電気を通して出願させた特許が自由に開放されるような自体になったら、現在までの行動は全て無意味となってしまう。


よって、強制ライセンスに対しては特段強い圧力を米国政府に対してかけている。


とにかく答申や質問文、確認行為などの回数が尋常ではない。

GEとしてはこれが認められると全てが水の泡となるため、1947年に公職追放された日本の経済界の重鎮と会談を交わした際に「この制度の行方が決まるまでGEは日本国に出資して日本の復興を手助けすることは出来ない」と回答している。


一方で「それをどうにかするために我々は公職追放された貴方方に意見を伺いたい」と様々な意見交換を行っている。


また、企業連合体は極東の法務担当の者達に圧力をかけ、委員会を組織して専門家の立場として意見を聞き入れるよう圧力をかけた。


結果的に企業連合体の意見は採用され、オースチンエレベーターなど当時の米国企業の代表的な経営者達が委員会のメンバーとして専門家会議を行えることとなった。


これにより、特許法についてはある程度改正状況が改善できそうな見通しとなったため、GEは一旦静観の立場をとる。


そんな中でGEの方はある人物と偶然にも接触する機会を得る。

GHQの占領政策を緩和へと導いた8人の米国人に名を連ねる1人、ウィリアム・ヘンリー・ドレイパー・ジュニアである。


ドイツの占領政策を緩和させた人物としてwikipediaに名を連ねているようだが、実は彼はドイツだけでなく日本の占領政策緩和においてもとてつもない貢献をした人物であり、なぜかこの人物が日本国の日本史において語られないのかとても疑問であるのだが、(恐らく後述する理由であるが)


この小説を読むなろう読者は是非この人物について知ってもらいたい。


ちなみにこの人物を語る上では、昨日2017年9月25日に解散を宣言した日本国首相と、ブッシュ大統領一族と、現在の米国大統領トランプについても触れなければならなくなるのだが、簡単に説明すると、アヘン戦争が行われた原因のアヘンには米国や日本国も関与していたが、その米国のアヘン売買の金融事業を行っていたのがブラウン・ハリマンと呼ばれる企業で、ハリマン一族という者達が経営していたが、社員の中にはブッシュ一族と呼ばれるブッシュ大統領の先祖もいた。


ブッシュ一族自体はブラウン・ハリマンに投資していたカーライルという軍事関係専門の投資会社を経営していたが、その関係性によってハリマンに社員として入った者がいたのである。


この時のブラウン・ハリマンは主要寄港地である日本にもこの業務に関与してもらおうと考え、日本に協力者はいないか模索する。

結果、その時に出会ったのが岸信介こと安倍晋三の祖父である。


そしてこのカーライルの親会社がディロン・リードといい、ウィリアム・ヘンリー・ドレイパー・ジュニアはこのディロンリードの元副社長で、岸信介とはこのアヘン戦争の時代から面識があった。


ディロン・リードとは戦争屋とも言われる武器商人なのだが、一方で日本国とは古くから関係があり、GEと同じく日本からかなりの利益を得ていて、その会社に所属した過去があり、日本国を熟知していた者がウィリアム・ドレイパーである。


しかも岸信介が無罪放免となった背後に彼がいて、さらに岸信介が公職追放から復権するための手続きを行ったのもこのこのウィリアム・ドレイパーであったりする。


そしてこのディロン・リードとカーライルとブラウン・ハリマンは現在の米国大統領ドナルド・トランプが大規模に投資している会社の1つであるが、つまりこの大統領と昨日解散を提起した首相がとても仲が良い背景にはこういう関係性がある。(ちなみにディロン・リードは現韓国大統領とは逆に因縁があるということを付け加えておく。韓国自体にではなく、民主化運動と民主化運動を行った彼に対してである)

というか、ドナルド・トランプが意外にも知日派な理由はこういった会社に積極的に投資している影響である。


もう1つ言うと、戦後、自衛隊や警察などは「日本兵器工業会」を通して最新鋭の兵器を納入するということが法的に定められたのだが、この「日本兵器工業会」の親会社こそ「ディロン・リード」である。(警察においては後に法改正で対象外となるが、現在においても自衛隊はこの組織を通さなければ兵器が購入できず、実質的に自国の国産兵器か米国製兵器しか購入できない)

ディロン・リードは「日本兵器工業会」を発足させる傍ら、日本の軍需産業企業を1つの共同体にまとめ、国産兵器の開発も平行して行わせたりしているが、一方でF-86セイバーやF-15イーグルなど、最新鋭で他国には販売例がその時点では希薄だった高性能兵器の売買の仲介を行っている。


F-35の販売契約の裏にも「ディロン・リード」が関わっているが、占領政策緩和や公職追放の復権の背後で、しっかりと利益を享受しているのでGEより恐ろしい死の商人である。


余談だが、自衛隊の国外への武器輸出について当初より賛成の立場であったりするが、ディロン・リードにとっては日本国産兵器が海外で売れても米国産武器を輸入してきてもどちらにおいてもブローカーとしての立場として収益が入るため、収益性がない米国以外から武器を調達する以外ではとても積極的に宣伝活動などを行っている(オーストラリアの潜水艦調達関係でも、海上自衛隊の潜水艦を販売するにあたり、オーストラリアで交渉してたのは何とここに所属のアメリカ人であったりするが全く話題になっていない。恐らくマスコミは英語が喋れるから商談を代行している程度にしか認識が無い)


「なんか日本に販売する米国の最新鋭機ってあっちの納入費の2倍ぐらいしない?」という話の原因の100%がこの会社のせいである。



ただし、PAC3やイージスシステムなど、米国議会が否決しようと躍起になる本当の意味で最新鋭の技術により構成された兵器をこの会社の息がかかった大統領時代となるとライセンス契約など締結させたりするため、金はかかるが日本に対して不利益だけを与える会社ではない賛否両論の企業ではある。(特に日本でのライセンス生産においては積極的に行わせる姿勢がある)


GEはこのウィリアム・ドレイパーに日本国に関する実情を話したことで、ウィリアム・ドレイバーとディロン・リードというさらなる強力な味方を手に入れることになるのだが、GE単体と比較するとディロン・リードは悪魔に近い存在であり、強力な助っ人ではあるが現代まで影響を及ぼす者を企業連合体の中に引き入れてしまったのだった。


しかし、GEにとってはウィリアム・ドレイパーとディロン・リードの力無くして絶対に達成できないであろう事柄があった。


それは財閥解体に東京芝浦電気が巻き込まれるのが確定的となってきたことへの抵抗である。


時は少々戻り1946年。

GHQは公職追放とは別に、日本の経済一極集中の緩和を理由に財閥解体を行おうと画策しはじめた。

これは住友財閥など巨大財閥を中心としたものだけではなく、日立製作所や東京芝浦電気なども含まれ、東京芝浦電気は「制限会社」という扱いになり、資本の売買取引に制限が加えられた。



これはGEが「東京芝浦電気事業再編計画」というのを練っていた頃にGHQが仕掛けてきた圧力であり、GEにとっては手痛いダメージであった。


公職追放による影響があまり無い米国企業に対し、何とGHQは直接牙を向いてきたのである。


企業連合体は特許関係への行動で手一杯の状況であり、GE自体はGHQと一触即発の事態になりかねないほどの対立関係である。


その中で手を借りるには、米国軍すら制御できる存在でなければならなかったのだ。


ウィリアム・ドレイパー自体との接触は本当に偶然ではあったが、この偶然を見逃さなかったGEは、彼を通して財閥解体を「巨大財閥のみ」に制限するよう政策を緩和させようと行動する。


ウィリアム・ドレイパーはGEの背後に企業連合体がいることを認知していたが、その枠の中にディロン・リードを入れることで元所属会社に大きな利益を生めるのではないか考え始め、ディロン・リードのCEOと密かに連絡をとり、ドイツの政策緩和とは別に日本国の経済復興に対してディロン・リードがどのような利益を生むか?といった意見交換をしはじめた。


ディロン・リードのCEOは企業連合体の動きをすでに察知してはいたが、軍事兵器関係で部品調達などを行っていたドイツとは異なり、自社の利益を生むには日本の再軍備が必要であると主張し、再軍備が必要不可欠となるような時代の変化が訪れない限り無駄骨に終わるということをドレイパーに伝える。


しかしドレイパーはすでにソ連関係の情勢について実戦を通して現地を見ていたため、非常によく理解しており、ドイツ復興の主目的は実は対ソ連の意味合いが強く(モーゲンソー・プランによってドイツがソ連に従属し、欧州全体がソ連に飲み込まれるのは日本がソ連に飲み込まれるのと同様に危険)


ソ連自体が日本を明らかに諦めておらず、朝鮮あたりか北方領土あたりで10年以内に行動を起こすであろうことを伝えると、ディロン・リードは権益をドレイパーに求めつつ、企業連合体に加勢することとなった。


1947年10月。

GHQによる政策が大きく転換される要因となる悪魔とGEは契約する。


GHQやその背後にいる米軍が政策を緩和せざるを得なくなるだけの権力を持つ死の商人であって、今現在ですら日本の自衛戦力関係に大きな影響を及ぼすディロン・リードと、


利益も重要だがソ連によってアメリカが崩壊するシナリオを危惧し、また一方では日本と長年商取引を行い、後の日本国首相となる岸信介と面識があり、影の恩人であるウィリアム・ドレイパーの両者によって、東京芝浦電気は新たな局面を迎えるのだった――

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