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最底辺の理想郷(ユートピア)  作者: 上山 璃御
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第四話「悪夢」

「ここが保健室そしてここが理科実験室、この学校は大きいから大事な所だけ説明するね、何か分からないことがあったら何でも言ってね」天草奏は本来静かで、おとなしい性格をしているのだが、機嫌がいいのかいつもより元気だった。


それに比べ石田拓海は、ミリアと優希に元気よく校内を案内している天草を見て、少し顔をムスッとしながらう後ろを歩いていた。なぜムスッとしているのかはご想像に任せる。


「授業で使う教室は大体案内できたかな、あと重要なのはここ」天草は学校の地図を広げ、指をさした。


「ここはシェルターになっているの」


優希は不思議そうに「なんで学校にシェルターがあるの」と質問をした。


「ここは国が設立したが魔法科の学校だから魔法的戦争やテロが起きた時に対処できるように、ここに市民と、生徒のシェルターがあるの、それに敷地も大きいしね。それとシェルターは、ここと、ここ、あとここにもあるから、避難訓練とかあるし、場所は覚えておいてね」そう言いながら天草はシェルターのある場所にペンで丸を囲った。


その時優希と一緒に地図を見ていたミリアはちょっとした地図の違和感に気が付いた。


「ここは?何?何かありそうだけど」 それは教室にしては大きすぎる謎の空間だった。


「なんだろう…今まで気が付かなかった…」天草はキョトンとした表情で答えた。


そうこうしている間に次の授業の予鈴が学校に響きわたっていた。


「教えなきゃいけないような場所は教えられたし、そろそろ教室に戻ろっか」天草は満足そうな顔をしながら自分のクラスへと足を進めた。


そんな天草の足取りに付いてゆく優希は自分のクラスに戻りたくないと思っていた。また周りの視線を気になるからだ…。


そんなことを考えていると ふとあることに気が付いた。


(俺は今、周りの視線なんか気にもしていないで普通に質問とか会話をしていた)


優希は普通に会話出来ていることを心の中で驚いていた。今までは周りに避けられ、バカにされていた…


無意識に震える優希の唇から一つの質問が横を歩いているミリアに発せられていた。


              「君は僕をバカにしないのか…?」


ミリアはいきなりの質問に戸惑うこともなく真剣に答えた。


「優希君は自分の目標と真剣に向き合って少しずつかもしれないけど、ぶれずに確実に進むことを選んでるじゃない。今回のこの学校入学もそうでしょ?諦めないで頑張っている優希君を私は笑ったり、バカになんてしないわ」


初めてだった…自分認めてくれる人は。


優希は気が付くと泣いていた。突然涙を流し始めた優希に戸惑うミリアだがその様子を見ていた天草も


「私も!!」 「私もバカになんてしないよ!!優希君はすごいと思う!!」ミリアに続くように天草も優希を勇気づけた。

「そ…それに優希君は優しいし…」ぼそっと聞こえない声でつぶやく。


「お…おれも…」天草につられるように石田も後に続いた。


泣いていることが急に恥ずかしくなった優希は顔を赤くしながら「ごめん 少しトイレ行ってくるから先にクラスに戻ってて」と言いトイレに走り出した。


トイレで顔を洗い次の授業のことも考えてそろそろ戻ろうとした時である。


それは突然起きた。やっと掴んだ小さな幸せを潰すかのように…。


目が覚めるとそこはあたり一面瓦礫の山だった。


優希が生きていることが不思議なぐらい校舎は崩れており、悲惨な状況だった。


「いったい何が起きたんだ…」額から流れる血を抑えながら状況を確認しようとする優希だが、あたりから爆発音が聞こえるぐらいしか分からない。


「そうだ シェルター!!」 緊急時なのは理解できているので、急いで最寄りのシェルターに避難しに行くのだが、そこはシェルターとは名ばかりに瓦礫の山と犠牲になった生徒で埋め尽くされていた。


「そんな…」優希は生存者を探そうと声を上げると、かすかな声が返ってきた。


「誰かいるのか!!」急いで声のするほうに行くとそこには天草が倒れていた。


「天草さん!!大丈夫?!」意識はほとんどなく、足を怪我していたのでとても自力で避難できる状態ではない。


「とにかく安全な場所に連れて行かないと」急いで天草をおぶると、優希は一番被害が少なそうなシェルターに走り出した。


「はぁ はぁ はぁ…着いた」シェルターに着くと内部と連絡が取れるインターホンに「すみません!!開けてください!女の子がケガしてるんです!」大きな声で何回も呼びかけた。


すると「もうここはいっぱいなんだ!!申し訳ないけど他をあたってくれ」と返事が来たが、他をあたっている余裕などない「お願いします!!怪我をしているんです!一人だけお願いします!!」


その呼びかけに負けたのか「分かった一人なら…急いでくれ」


「ありがとうございます!!」


鍵が開く音がすると、優希はそっと天草をシェルターに入れそっと下す。


すると優希の袖をあいまいな意識の天草が掴んだ「何処へ行くの?優希君はここにいないの?」


優希は小さく微笑むと「僕は違うシェルターに行くから大丈夫だよここに来る途中で見つけたんだ、だからまた後で会おうね」そう答えると、天草は安心した表情でまた意識を失った。


「あとはお願いします。」優希はそう言い残すとシェルターを後にした。



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