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最底辺の理想郷(ユートピア)  作者: 上山 璃御
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プロローグ

 そこは煙と炎だけの世界 まるで地獄のような世界だった。


俺はただその中、目の前で引き金を引かれる父を、声にもならない声で叫び、見てることしか出来なかった。


「優希…お前は希望だお前にすべてを…」父はそう言いかけると横に立っていた銀髪の男は口元を少しゆるめて引き金を父に向けてそっと引いた。 「バン!」


「はっはっは…」夢か!!「またこの夢か」うなされ全身汗まみれで優希はそうつぶやくとふと時計を見た。


時計の針は午前四時半を指しており、なんだまだ四時半かそう思いもう一度眠りにつこうとした   「ん?」……待てよ四時半にしては明るくないか?恐る恐る枕もとの携帯を見ると画面には8時半と表示されていた。


「やばい!」優希の新しい高校生活はこの言葉から始まった。


優希は幼い時に両親を失い中学生までは施設で過ごしていたのだが、高校は専門の寮がありそこで生活ができるようになっているつまり一人暮らしなのだ、起こしてくれる人も無論いないわけである。


急いで新品の制服に着替え玄関へと向かい「親父 行ってきます」下駄箱の上に置いてある父の写真にそう言うと家を後にした。


俺の父 大野 光輝はデバイス専門の有名な博士で、十二年前あるデバイス研究中謎の爆発により

命を落としたそうだ その時俺も立ち会っていたらしいのだが、なぜ俺は無事でいるのかその時の細かい記憶はあいまいで、父の死を何もできずに見ていたことしか覚えていない。


そうこうしているうちに目的地である「国立政法学園高等学校 魔法科」の校舎が見えてきた。

予鈴の時間は朝の九時、手元の時計を見ると時刻は八時五十分(よかったどうやら間に合いそうだ)

だがここからが遠かった。


目の前でおばあちゃんがスリにあい犯人を捕まえ、次は迷子の子供を交番まで届け、結局校門にたどり着けたのは午前九時半を過ぎたあたりであった。


転校初日から遅刻をしてしまう罪悪感に狩られながらも校内へと足を進めてゆく優希だったが、その罪悪感を吹き飛ばすほどの校内の広さ建物の大きさに魅了されていた。


すると足を止めている優希に「大野君?大野優希君?」突然名前を呼ばれ、振り向くとそこには綺麗な青い髪色で長髪の眼鏡をかけている女子生徒が立っていた。

とっさに「はい!」と答える優希に「よかった時間通りに来ないから心配で探しに来たけど、どうやら正解だったみたいね、んじゃ早速で申し訳ないけど時間もないしついてきて!」


優希はすこし慌てながらも「あ、あの 貴方は?」と尋ねた。


「あ、ごめんなさい、いきなり声をかけて自己紹介がまだだったわね、私は柏木葵ここの副会長をしているのよろしくね」彼女はそう答えると歩くよりは少しはやい速度で歩き始めた。


歩き始めて数分たち優希は異変に気が付く「あれ?」本来は転校の手続きのため、職員室に行かなければならないのだが手元とにある転校手続きの書類に同封されている校内の地図と照らし合わせると確実に職員室には向かっていないのである。


「あの?…職員室には向かっていないですよね?どこへ向かっているんですか?」と尋ねると葵は「いいのいいの、手続きとかはこっちでやっておくから、それよりもここに入学するのに一番大事なことをやりに行くわよ」そう言い優希の手をつかみ、さっきよりもはやい速度で歩き始めた。


また数分歩くと葵が大きな扉の前で止まり「着いたわよ、ここで貴方を待っている人がいるわ」


優希は重い扉をゆっくりと開けると教室一つと同じ大きさぐらいの部屋に大きな机と椅子が一つまるでどこかの会社の社長室のような部屋の中に彼女は立っていた。


美しいその言葉は彼女のためにあるかのような綺麗な銀髪の髪に綺麗な瑠璃色の瞳をしていた。


その美しさに見惚れていると彼女は手元のマグカップをそっと置きニコっと微笑むと

「おっそぉおおおいぃぃいい!!」と一言発した。


「ったく 転校初日に遅刻とはいい度胸してるわね!!四十五分よ!!四十五分!!授業一つ終わっちゃったじゃないの!!あんたね四十五分あったらカップラーメンが何個作れると思ってる?十二個よ!! ん?あれ十一個か ん?ん?」  「十五個です。」


そう優希が答えると顔を少し赤くして「うるさい とにかく四十五分遅れたなら今すぐ四十五本ジュースを買ってきなさい」とわけのわからないことを言い始めた。


優希は少し戸惑いながらも自分の財布の中を確認し始めた。


「ごめんね優希君 君も最初は彼女の美しさに見とれていたね」少し笑いながら葵は優希に話しかける。


「でも残念 彼女はやるときはやるんだけど基本はバカでね」


「なんですって!!」葵の言葉に彼女は腹を立てた


「ごめん、ごめん会長」


「会長?」優希は葵にそう聞き直すと


「そう彼女はこの国立政法学園高等学校の会長そして東条真博士の娘よ あなたも一度ぐらいわ名前をきいたことあるでしょ?」


「東条真って」優希は驚きを隠せなかった。


東条真、優希はその名前をよく知っている。幼い時に優希の父、大野光輝がよく優希に話していた人物の名前だ、それだけではないデバイスを知るということはこの男の名を知るということだ。彼はデバイス開発の第一人者つまり

デバイスを作った男だ。


「そう改めて自己紹介するわ、私は東条真由美この国立政法学園高等学校の生徒会長であの東条真の娘よ」


真由美は少し自慢げな顔で自己紹介をすると、忘れたことを思い出したかのように突然「そうだ あなたをここに呼んだわけを話していなかったわね」と話を本題に切り替えるとすーっと息を吸い


「ズバリ!!あなたのデバイスを契約しに行くわよ!!さぁ!ついてきなさい!!」っと楽しそうな顔で部屋を出て行った。



デバイスの契約それは魔法科の学校に入学するのにあたって一番重要なことである。そもそも契約というのは自分のデバイスを創るという意味であり、一度契約を結んだデバイスはデバイス本体が完全に壊れるまで新しいものと契約はできず、魔法の種類などの変更は一切できない。

いわゆる一発勝負なのである。


この契約の前ではどの生徒でも自分の能力についての不安よりもどんな能力でも自分が魔法を使えるという事実に高鳴る気持ちを抑えきれない。


それと裏腹に優希の足取りは重い、なぜなら優希は自分の能力がどんなのかまでは知らないが自分の魔力が

デバイスに感知されるか、されないか分からないほど弱いことを知っているからだ。


以前幼いころ父親の研究の一環で魔力の測定をしたことがあるのだが、結果は見るには堪えないほどデバイサーとしての能力が低かったのだ。


そうとも知らず真由美は大野光輝の息子だからとすごい魔力値をたたき出してくれるのではないかとルンルンな足取りで契約をする場所、デバイスの製造するための機会が置かれてある、いわばクレアーレルームと呼ばれている場所に進んでゆく。


そもそもすごいデバイサーの息子ではなく、確かに名の知れている博士とはいえ、ただの研究員の息子に期待するのはどうかと思うのだがなどの文句は心の中にしまい重い足を動かしてゆく。


だいぶ下りてきただろうか壁に書かれている数字を見るとB5と書かれていた、もうそんなに下ったのかと思いながらついていくと真由美のルンルンな足取りが止まった。


「さぁ着いたわよ」そこには簡単には入れそうもない厳重な警備と古代の遺跡にありそうな石の上に刻印見たいのが刻まれてある扉があった。


真由美がその扉に触れると扉に刻まれた刻印が彼女の瞳の色のような瑠璃色に光だし、カチカチと鍵が解除されていくような音が鳴り響いた。


そして重い扉はゆっくりとその存在感を示すかのように開きだした。





























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