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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

翼士の復讐屋

作者: 雪村錬太郎

 「破落戸に手篭めにされた娘さんの復讐を俺に頼みたいというわけかい」


 そう男が問うと、商人は首肯した。


 屯所の官憲が捕まえたところで、若い翼士(戦士階級であり、背に翼の生えた翼人)の破落戸は、その親が権力と金に物を言わせ、すぐに放免されてしまう。

そうして破落戸はまた狼藉を繰り返すのである。


 そこで商人は復讐屋を営む、この黒翼の翼士の元へ依頼に来たのである。


 「こちらが依頼料です」


 商人は桐箱に入った金二十両を取り出した。


 「良いだろう。お前さんと娘さんの無念。確かに晴らしてやろうじゃねぇか」


 黒翼の男、九郎は頷き、復讐を請け負った。


*


 酒場から破落戸が出てくる。

気分良く酔ったようで赤ら顔で鼻歌交じりである。

そこに立ち塞がる影が一人。


 「なんだぁ?」


 影、九郎は述べる。


 「故あってお前さんを叩きのめしに来た。覚悟しな」


 破落戸は答える。


 「はっ、面白え。返り討ちにしてくれる」


 両者ともすぐに背の翼で空を打ち、天高く飛び立つ。

破落戸は腰の鋼の八角棒を抜き、振りかぶる。

一方、九郎は無手である。


 そして互いに相手への突撃を開始した。


 破落戸はほくそ笑んだ。

何故なら自分の方が高度を取っていたからだ。


 翼士同士の戦いでは、より高度を取った方が優勢とされる。

高さとは即ちエネルギーであるからだ。

高位の者は重力を味方に付け、より速く駆け下りることができる。

一方、低位の者は重力に逆らい、その速度は著しく減じられる。

その帰結として高位の者は強く相手を叩きつけることができ、また速度も速いので再度の上昇が容易い。

低位の者は相手への打撃力が低く、速度も遅いので再上昇も遅い。


 ましてや相手は無手である。


 破落戸は己の勝利を確信し、両者の距離は零へと近づいていく。

そして・・・。


 蛇。


 破落戸はまず、そう感じた。

己は大蛇に締め付けられたのではないかと。


 破落戸が八角棒を振り下ろす刹那、九郎の腕がぬるりと蛇のように蠢き、破落戸の腕を捕る。

そしてそのまま撮った腕を叩き折り、破落戸の翼もへし折り、破落戸は地面に叩きつけられた。


 多くの翼士が強力な打撃力を信奉する中、九郎は組み討ちを使う兵法者であった。


*


 九郎は依頼の完了を知らせる書簡を出すと、依頼料で美食を楽しみに向かった。


 復讐屋九郎。打撃が重視される翼士において、組み討ちを使う異形の兵法家であった。

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