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病院の幽子さん

病院の怪談

作者: ねこの珠水



 だぁれもいないはずの病室から声が聞こえる、とか。

 小さな子が突然消えるとか。

 病院には怪談がつきないわよね。


 特に夜の病院なんて、いかにも何か出そう、って感じかするわ。

 誰もいない待合室に、非常口の緑の明かりだけが冷たい床にこぼれていて。

 かすかに漂う消毒液の匂い。

 背筋がぞくぞくってするでしょう?


 でもね。

 この病院にいる幽霊はあたし1人っきり。

 もしかして、あたしが霊感ゼロで幽霊が見えないなんてことだったりしたらお笑いだけど。あ、ちゃんと自分は見えているわよ。ちょっと透けてはいるけどね。

 入院設備もある、そこそこ大きな病院なんだけど、幽霊密度はものすごーく低いってことね。


 それでも怪談はいろいろあるのよ。

 何度閉めてもいつの間にか開いているカーテン。

 不意に響く子供の笑い声。

 1段増えたり減ったりする階段。

 もちろんあたしの仕業じゃないわよ。階段の段数なんて、どうしたら変えられるのかもわかんないわ。

 まぁ……たまに霊感の強い看護師さんがいるのか、あたしの姿を見て固まったりすることはあるけど。ごめんね。でもあたしだって、あちこち移動したいのよ。


 出そうだ、って思うから幽霊に見えるってことは多いのよね、きっと。

 何だったかしら。

 幽霊の正体見たり枯れ尾花?


 でも。

 確かに病院で死ぬ人はいるけれど、幽霊になってまで病院にいる人って少ないんじゃないかしら。

 自分の家や思い出の場所。留まるなら病院じゃなくて、そういう場所を選ぶんじゃない? まあ、あたしが言うのもなんだけどね。


 だからあたしはいつも1人で、暇してるの。

 今日はあなたが話を聞いてくれて嬉しいわ。

 え? なろう? それって何?

 あたしはパソコンなんか使えないから、ネットとかよく分からないの。


 ね。

 なら。

 ――あなたは一体どこから、あたしを見ているの?



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