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名乗り

だいぶ遅くなってすみません。

 タムシ村は平和で静かな村だった。

 そんな村に突如として大音量が響き渡る。


「我こそはガムテマン帝国が雄、グラリッチェ・ポートマンである!並び立つは魔法師ユネッサン・ピラー!ここに隠したる王女を成敗しに来た!隠しだてするものは容赦なく切り捨てる!早く差し出せ!」


 あらあら、名乗り出ちゃってるよ。普通、こんなことするか?


「やあやあ、あてしこそはかみ……」


 かけっこ大好き神サマが名乗り返そうとしたので慌てて口をふさいだ。


「神サマ、ちょっと静かにしててよ」


 僕はアゼリアさんの方に向いた。

 アゼリアさんははぁとため息を一つつくとゆっくり立ち上がる。


「どうしたの?」


「皆さんに迷惑をかける訳にはいけません。ここは大人しくあの方達について行こうと思います」


 ええ、お馬鹿さんがここにいました!

 アゼリアさんは捕まったら殺されてしまうとわからないのだろうか?


「王女は死ぬ気ですじゃ」


 おさるが神妙な面もちで呟く。

 村人Aの奥さんは視線を下げて話す事ができない。

 神サマは、まあ、いつも通りノー天気な顔している。


「なあ、そもそもなんで帝国の奴らがここにいるんだ?軍隊とか、阻止出来なかったのか?」


 僕がふとした疑問を言うと、アゼリアさんは苦笑いをする。


「グランディア王国にはそもそも軍隊は有りません。絶対的な力を持つシーバルトと、それを動かす騎士によって平和が護られて来ました。災害級の魔物の討伐も、他国への牽制もシーバルトによって為して来たんです」


 つまり、この国にはめちゃくちゃ使い勝手のいい核兵器があって、それをずっと使っていたけれど、使えなくなったのがバレて帝国に攻め込まれたと言うことか。それとも攻め込んだら使えなくなったのが発覚したのか?


「ここではああやって名乗りを上げるのは普通なの?」


「ええ、だいたいの魔術師がシーバルトの疑似機、タクティクスを召喚出来ますから、それに乗って騎士が闘うんです。なので人間同士ではああやって名乗りを上げるのは普通です」


 つまり、闘う方式は鎌倉時代の合戦をイメージすればいいのか。


「王都は落とされはしましたが、王も我が騎士も健在です。私とシーバルトがいなくても必ずや国を再建してくれるでしょう」


 アゼリアさんはそう言うと村人Aの家から出ていった。

 王女様って大変なんだなあと思った。なんだか胸の奥でもやもやした気持ちになった。


「?カケル、助けないのか?」


 かけっこ大好き神サマが、当たり前のようにそう聞いてきた。

 何を言うんだ、僕にそんなこと出来る訳がない。

 出来る訳ないけど、ふと思う。

 テンプレの主人公ならきっと助けるんだろうな。

 そしてなんだかいい雰囲気になったりするんだろうな……。


「カケルの自由にすればいいのですじゃ」


 おさるが妙に優しい顔している。

 おさるは言っていた。この世界で僕には何の使命もない。ただ、自由に好きに生きればいいのだ、と。

 僕はここで色んなテンプレをしようと思っていた。しかし、そんな行動をする前に全てのプラグは叩き折られていた。

 これからアゼリアさんを助けるなんてテンプレ展開を選択して、またおかしな事になるかもしれない。

 それでも。

 それでも僕はそっちの方がいい。


 僕はアゼリアさんの後を追いかける。

 そして、村の入り口にいる帝国の騎士と魔術師を見つけると、大声で叫んでやった。


「僕はカケル!グランディア王国の王女、アゼリアさんを護る者だ!!」

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