タムシ村の日々
ついつい、他の作品を読み入ってました。
「カケル!今日は何して遊ぶの?」
タムシ村に滞在してから3日。僕は異世界の生活を知るべく、村人Aの奥さんの元、いろんな事を教えてもらっていた。
グランディア王国の事や世界の成り立ち等の座学から、魔石に魔力を込めるやり方、簡単な魔法の使い方を教えてもらった。
世の中には魔物もいるそうで、それを倒す為に魔法を使ったり、シーバルト?を使ったりするそうだ。
シーバルトがよく解らないが、どうやらファンタジーっぽくない兵器らしい。
ええ、僕の思い描いていたテンプレファンタジーとはどんどんかけはなれてますとも。
それでもテンプレファンタジーを追求したい僕は薪割りや家事の手伝いを終えた後で魔法の練習をする事にした。
「神サマ、今日は魔法の練習をするよ」
「カケルはいつやってもヘタッピだから要練習ですじゃ」
おさるは一言多い。
「どんな魔法を使うのだ?」
「火の魔法の練習をしようと思うんだ」
僕はこの3日で習得した魔力を錬るという行為を行い、指先に集中する。そして炎をイメージすると、指先にマッチの火ぐらいの灯火がついた。
「ほら、出来たよ!」
「カケル!すごいのだ!」
かけっこ大好き神サマは大喜びで褒めてくれた。なんだか嬉しくてついつい調子に乗ってしまう。
「ほら、次は水魔法だよ」
今度は指の先からチョロチョロと水が落ちていく。
神サマはその水をゴクゴク飲むと
「うまいのだ~!」
と喜んでくれた。
「次は土魔法!」
魔力を手のひらに集中すると、どんどんと手から砂が溢れてきた。底に小さな砂山を作ると神サマは小さな旗を山の上に差して
「棒倒し~、棒倒し~」
と遊び始めた。
「次は雷魔法!」
僕は右の親指と人差し指をCの形にしてそこに集中すると、ピリッと静電気が発生した。
魔法に関しては何でも出来る気がする。
やはり異世界人ということで僕も高スペックだったのだ!
うれしさのあまりに笑いをこらえている僕を見てまさか村人Aの奥さんの衝撃の一言。
「なんか、全部しょぼいわね」
僕の心は胸から飛び出るとパリンと割れてしまった。
まさかのブロークンハート。
僕は涙玉をクラッカーのようにぶつけながら一人寂しくしくしく泣いた。
神サマはそれを見てきゃははと笑った。
「いつも通り芸の細かい奴ですじゃ」
おさるはそんな事を言う。
「好きでやってんじゃねえよ!」
目から下がった涙玉を振り回しながら僕は反論した。
夜になってかけっこ大好き神サマが外に出ようと誘ってきた。
良い子はそろそろ寝る時間。
いつもは神サマも眠りにつく時間だ。
「何だよ神サマ、もう遅いよ」
「あてしね、今日の魔法の練習を見てやりたかった事があったんだ!カケル、見ててくれる?」
「もちろんいいけど、こんな夜中じゃないといけないのか?」
「うん!じゃあいっくよ~!ホロヨレパッパ!」
神サマが呪文を唱えると、空に幾つもの花火が打ち上がった。
空が明るくなって村にある家からみんなが飛び出し花火を見入っていた。
「神サマ、きれいだなあ」
「あてし、すごい!あてし、かっこいい!」
30分程花火をしたあと空は暗くなったので、村人は家の中に入っていく。
僕はいつまでも赤く光っている方見て黄昏ていた。
「カケル、そろそろ家に入ってください」
村人Aの奥さんが僕を呼びに来てくれた。
「ありがとうございます。いきなりあんなことしてしまってすみません」
「いいのよ。みんなも楽しんでいたみたいだし」
奥さんは僕達が見ている方向に気づいた。
「ああ、あそこはグランディア王国の王都の辺りよ。お祭でもやってるのかしらね」
そんな事を言いつつ、夜は更けていった。