チート能力とタムシ村の衝撃
今日もうまいこと間に合いました。
異世界物のテンプレとは何だろう?
僕はタムシ村に向かいながら考えた。まずはチート能力だよな。それから食料革命に内政にハーレムか?
チートは神サマに確認しないといけないけれど、食料革命ならできる気がする。
なんたって、僕は料理人に父にみっちり料理を教えてもらい、自分も勉強して醤油・味噌を自分で作れるようになったんだから。
ハーレムについては生活基盤が整ってから考えればいいとして、とりあえずはチート能力の確認だな。
「ねぇ神サマ。僕って何かチート能力はないの?」
「ないよ」
神サマは即答した。
嘘!ほんとにないの?
テンプレ最初からつまづいているよ……。
「大丈夫ですじゃ。カケルにはかわりに神サマの加護がついておるですじゃ」
「ほんと?どんな加護がついてるの?」
「そうですなあ……。一言で言うのは難しいですじゃ。……例えば崖から落ちるとどうなりますじゃ?」
「えっ?地面に穴が空くかな?」
「では、馬車に轢かれたら?」
「ペタンコのせんべいになる」
「では雷に撃たれたら?刃物に刺されたら?」
「雷に撃たれれば骨が透けてビリビリするし、刃物で刺されたらパンクするんじゃない?」
「それが神サマの加護ですじゃ」
おさるは何を言ってるんだ?僕は要領の得ない顔をしていたのだろう。おさるは続けて説明してくれた。
「普通、全ての解は『死ぬ』ですじゃ。でもカケルだけは今言った通りの事になる。さらにそんなカケルを見て神サマは大笑いされる。コレが神サマの加護『ギャグパート』ですじゃ!」
何それ?つまり、普通の人が死にそうな事も僕にはギャグになって死なないって事か?ある意味すごいチートな気もするが、イマイチ使えそうにないな。というか……。
「ねぇ、その加護って日本にいた時も働いていたの?」
「もっちろん!あてしはずっとカケルを見てたからね!」
ああ、なるほど。やっぱり僕、包丁で指切って手が破裂したり、山で雷に撃たれてビリビリしたことがあった気がしたけど、夢ではなかったのね。
げんなりしつつ、歩いていると、いよいよタムシ村に着いた。
村の入り口には人はいなかったけれど、木の看板にしっかりと日本語で『タムシ村』と書かれていた。
「カケル、あてし腹が減ったよ。どっかでご飯食おう!」
「ああ、あそこにラーメン屋があるからそこで食べようか?」
僕達は村のラーメン屋で味噌ラーメンとチャーハンを食べた。
支払いも手持ちのお金で済んだが、物価が違うのか、30円払えば良かった。
僕はいっぱいになったお腹をさすりながら今更ながら気付く。
「何で異世界にラーメン屋があんねん!」
タムシ村の中心で理不尽を叫ぶ僕。
「全くいきなりうるさいですじゃ」
耳を押さえて睨むおさる。
「大声合戦してるの?あてしもやる!」
ヘタッピな声で歌い始めるかけっこ大好き神サマ。
この後、そこらへんに通りかかった村人Aに食料事情を聞いてみると、どうやら食事は向こうとさほど変わらないらしい。こうして、僕が密かに計画していた食料革命は露へと消えたのだった。