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プロローグ5

UFOの中に侵入できた人数はそう多くはないと思う。

なぜそう思うのかを説明するために、UFO侵入のために取られた作戦の詳細を少しだけ説明しよう。

作戦は大型の輸送機でUFOの上空から50名が飛び降り、ある程度の高さまで降下したあと、パラシュートで位置と速度を調整し、UFO上部に乗るというものだった。

UFOから光が発射される箇所には、何か砲台のようなものがあるわけではない。

しかしだからといってどこからでも自由に光を放てるというわけではなく、光が出る場所は固定されていた。

だから作戦メンバーはその発射箇所から一直線に狙えない配置で降下することが必要になる。

それともう一つ、UFOから出る光で人が消えて、同じ箇所からまた光が発射されるまでの時間は、少しだけある。

しかし、それはパラシュートでゆっくり降下してUFOに着地するまでの時間を待ってくれるほどの長さの時間ではない。

つまりだ、俺達メンバーはUFOからある程度の高さになった時点で自らパラシュートを切り離し、生身で着地しなくてはいけない。しかも着地後には作戦行動に移らなければならないから、怪我をしつつの着地ではダメなのだ。

つまり作戦メンバーに求められている技術をまとめると、上空から落下しつつ目印のない空中で、UFOに狙われないポジションを取り、風に流されやすいパラシュートで速度を落としつつポジション等を維持し、その後普通なら人が死んでもおかしくないような高さで自らパラシュートを切り離し、UFO上部に無傷で着地、その後作戦行動に移り、UFO内部に侵入するというものになる。

作戦のために行われた訓練の内容に、俺が愚痴を言いたいわけがわかってもらえると思う。

そんな普通じゃない訓練の甲斐があってか、光に消されずUFO上部に取り付けたメンバーは、全体の半数を超えていたと思う。

だが、うまく行ったのはそこまでだった。

もともと懸念されていたことのだが、今回の作戦で対応策が取られた『UFOから発せられる光』というのは、UFOが接触を行おうとするものに対して行う対抗手段の極一部なのではないか。と、そういった可能性は示唆されていた。

そして実際そうだった。

あの光は第一防衛ラインに過ぎなかったようで、あの光をかいくぐり、UFOの上に乗ることのできた数十名に待っていたのは、有効範囲こそかなり短いが、UFOと同じく、物を消失させる光を放つ武器を持った、ロボットの集団だった。

俺がロボットが出現した穴に隙を見て飛び込めたのは、ほとんど運だった。ロボットには銃が効かず、かなりのスピードな上に、降りてきたメンバーの数よりずっと多い数がいた。かなりのメンバーが犠牲になったのではないかと思う。

そして俺も、UFOに進入こそできたが、結果的に、何かができたわけではなかった。

UFO内の通路にもロボットが現れ、逃げて回っているうちに通路の途中にあった部屋の中に飛び込んだのだが、その瞬間、部屋の扉に隔壁が降ろされ、外にでることができなくなってしまったのだ。

そこで外部との連絡を試みたが、電波は遮断されているようで、無線も携帯も通信できなかった。

隔壁によって閉ざされた扉は、とても頑丈そうだ。持っている銃で破壊することも考えたが、その程度で破壊できるようなものにはとても見えないし、跳弾も怖いのでやめておいた。

まあ、出れたところであのロボットたちを避けつつ外に逃げ出せるとも思えない。

諦めて、捕まってしまったその部屋の中を観察することにした。

その部屋は、本当にUFOの中なのかと疑問に思うほど、人間的な部屋だった。

広さは12畳ほど、天井全体がほんのり光っているので暗くはなかった。

地球にはありえない部屋なのは間違いない。間違いないのだが、置いてある家具と思われるものの予想される用途や、並べ方、デザインが、なんとなく人間じみている印象を受けるのだ。

その印象を例えるなら、数十年後、数百年後の技術を持った人間の部屋見ているという感じだ。

そこには何らかの生物が生活するのであろう生活感と、何かしらの文化の匂いのようなものを感じる。

部屋の中で一番大きい家具、形などに多少の違和感があるが、あれはたぶんベッドとして使うものだと予想できる。壁には凹んだ部分がありそこにはいろいろな形のものが並べてある。つまりあれは棚なんだろう。並んでる物の用途はわからないが。

壁には絵が飾ってあった。描かれているのは見たことのない生物だ。写真ではなく、誰かの手で描かれたであろう絵が飾ってある。

やはり間違いない。ここにはやはり、何かしらの知能、文化、そして芸術を理解する心を持った生物が生活するための場所だ。

つまりこのUFOには何かしらの生物、いや、知能を持った宇宙人が乗っていることは間違いないだろう。

まあ、それがわかったところで俺はそれを外の連中に伝えることはできないのだが。

しかし、俺はなぜ閉じ込められたのだろう。

人質? いや、人質を取るならわざわざUFOに侵入してきたやつを捕まえなくても、先ほどのロボットのような、こちら持っている戦力よりも明らかに大きな戦力になりうる技術力があるのだ。わざわざ侵入者を人質にする必要はない。

では、実験材料とか、生物標本とか、食料とかとして捕えたのか?・・・いや、そのどれにしたところで、わざわざUFO内に侵入してきた奴を使う必要性はない。

防衛網を突破してここまで来た人間を歓迎するとか、能力が高い人間を使ってゲームをするとかいう、そういう遊びに使うつもりか?

これについては否定はできないが、発想が映画や物語の世界だ。宇宙から来た生物がわざわざ地球人を試して捕まえて遊びに使うというのは、どうなのだろう。俺が宇宙人の立場だったとした時にそれをやったとしても面白いとも何も思わない気がするのだが、まあそれは人によるのかもしれない。

なんにしても、ここで俺ができることはほとんどない。まあ、理由は分からないが、捕まえられたのだし、待っていれば宇宙人の方から接触があるかと思い、ベッドと思われるものに横になった。少し抵抗はあったが、もともと命がけのつもりで参加した作戦だったのだ。UFO上空から飛び降りる抵抗感に比べれば、宇宙人のベッドに飛び込む抵抗感なんて些細なものだ。

だから俺は、まるで自分の部屋のようにくつろいで、宇宙人の方から接触があることを待つことにしたのだった。




三時間ほどベッドでうとうとしていただろうか・・・その間、なんの接触もなかった。

最初のうちは、まだ、作戦メンバーとの戦闘が終わってないから、それに完全に片がついてから接触があるのかもしれないと思っていたが、こんなに時間がかかるものだろうか。

あの大量のでスピードの早いロボットから三時間逃げまわる・・・そんなことは可能だろうか?

いや、さすがに無理だろう。相手はあたっただけで消し去ってしまう武器を所持している上にこちらの武器は効かなかったのだ。どんなに粘ったところで数十分がいいところだろう、一時間は持たない気がする。

ではなぜ俺は放置されている?

いや、そもそも、なぜ捕まっているのかも謎なのだ。その理由を想像したところで思いつかないだろう。

そこまで考えてふとある事に気づいた。

そうだ、そもそもというなら、UFOはもともと、人類に対して何か行動を起こしたことはないのだ。

UFOから出る光によって人間を何人も消されてはいるが、あれは、人間の方からUFOに接触しようとした時に起こるものであって、UFOの方から自発的に何か行動を起こしたことは今のところない。

俺はこの部屋に入った瞬間隔壁によって閉じ込められたが、それは部屋に入ったものを隔壁によって閉じ込めるというシステマチックな行動であって、捕まえるという意志を持った行動ではない可能性がある。

もしそうであったなら、俺はここから出ることができないということになる。

しかし不思議だ、この部屋から感じる生活感や文化の匂いには、何か意思を持った生物の存在を感じる。そんな存在がこのUFOを操っているのに、なぜUFOやそれに乗った宇宙人は何の行動も起こさないのだろう?

・・・・・・やはり考えたところで何も思いつかない。こういう時はなにか行動してみるべきだろう。

そう思っておればベットから起き上がり、改めて閉じ込められた部屋を調べてみることにする。

もしかしたら、さっきは気付かなかったが、入ってきた扉以外の出口がある可能性もある。

見渡してみるが、やはり出口と思われるのは隔壁が降りた扉だけで、他に出口は見当たらない。

次に棚においてある用途の分からないものや、壁にかかってある絵を調べてみた。手にとって持ち上げてみたり、裏を確認してみたり、まあ何もなかったが。

次に部屋の隅にあった机のようなものを調べてみた時に、変化は起こった。

机の上にあった、半球状でボタンが幾つか付いたものを触ると、机の上の空中に映像が現れたのだ。

なにもないところに突然浮き上がるように映像が映し出されたので、思わず声を上げそうになった。

よくみると、机にも、さっきまで半球状の物体以外何もなかったのに、今はいくつか見たことのない文字がキーボードのように並んで映しだされていた。

え、これって・・・。パソコンか?

なんというか、マウスを動かしたらスリープモードから復帰したパソコンのような反応だった。

空中に浮かんだ方の画面を改めて見た時、俺はまた声を上げそうになった。

『ヒーローアブセンス』

そこに映っていたのは、もう何十回見たかわからない、懐かしいあのゲームの開始画面だったのだ。

「ありえない」

思わず声に出して否定する。

そう、ありえない。あのゲームのサービスは、もう5年以上前に終了している。それにここはUFOの中なのだ。

しかし、目の前にある画面は明らかにヒーローアブセンスの開始画面だ。

表示されている画面をよく見てみる。

すると、おれの知っているヒーローアブセンスの画面と違う部分がいくつかあった。

画面に映っている映像や、ゲームのロゴマークなんかは、俺が知っているものと変わりがない。

しかし、周りに描かれている文字などは見たことがない文字なのだ。

もしかしてと思い、机の方に表示されているキーボード風に配置された文字を見る。

やはりだ、画面に映っている見たことのない文字と同じ文字が、キーボードの上には並んでいた。

つまりこれは、宇宙人がこのゲームをやっていたということか?

いや、それもおかしい。

このUFOが地球にやってきたのは1年ちょっと前で、このゲームが終わったのは5年前だ。

どうして宇宙人がこのゲームをプレイできるんだ。

いろいろな疑問は浮かぶが、その答えはひとつも出ない。本当にこのUFOには謎が多すぎる。

わからない時は行動だ。とりあえず俺は、パソコンでいうところのマウスと思われる半球状の物体を動かしてみる。

すると画面にあるマウスポインタが連動して動く。

宇宙人もパソコンを使ってマウスでマウスポインタを動かすというようなことをするというのに、かなり疑問を覚えたが、その辺は無視しよう。次だ。

俺はマウスポインタを画面にあるゲームのスタートボタンと思われる箇所に合わせ、クリックする。

右クリックと左クリックが逆とかそういうこともなく、普通に画面が切り替わる。色々と思うところはあるが、すべて無視だ。

先に進めよう。文字は読めないが、何度もプレイしているので、何が書いてあるかはわかる。

俺は昔の記憶と画面の内容を比べながら、画面を切り替えていき、何か違いがないか探した。

いろいろな画面を見てみたが、俺の記憶違いでなければ、俺の知っているヒーローアブセンスと変わっている部分は少ないように思える。それでも注意深く探っていると、俺の知っているゲームと違う部分をいくつか見つけた。

ヒーローアブセンスでは、ゲーム開始前に自分が使うキャラクター設定をするのだが、その部分が少し変わっていた。

俺の知っているゲームより、かなり詳細にキャラクターの造形をいじれるのだ。具体的に言えば背の高さの設定は低い、普通、高いの三種類くらいしか選べなかったはずだが、このUFOバージョンでは、選択がボタンからスライダーに変わっていて、細かく背の高さがいじれるようだった。

他の設定項目も同様で、キャラクター設定ではかなりの自由度で作ることができそうだ。

そういうキャラクター設定の細かな違いの中で、一つだけとても気になる違いを見つけた。

それは職業選択の項目だ。

ヒーローアブセンスで選べる職業は、剣士、弓使い、魔法使いの3つのみだ。最近のオンラインゲームにしては少ないと思うかもしれないが、これには理由がある。まあその話は後にしよう。

これは余談だが、チュートリアル中にある行動をすることで選べる4つ目の職業がある。まあそれは、普通のプレイに飽きた連中が選ぶ超上級者向け職業だが。

話を戻そう。先ほど言ったチュートリアル時に選べる職業は別として、キャラクター設定時に選べる職業は3つしかなかったはずなのだ。

しかし、いろいろ調べているうちに気付いたのだが、男の職業の方は3つのままで変わりないが、女性の職業選択の項目には、4つ目の職業があった。

職業の項目を決めると、作ったキャラクターの服装が変わる。例えば剣士なら剣をぶら下げて重装備になったり、弓師なら軽装備になって弓を構えたりする。で、肝心の女性の4つ目の職業の服装なのだが、えらく露出度が高い。上半身は胸にチューブトップをつけて、短めのジャケットを羽織っているだけで、へそは丸出し、下半身は後ろから見たらお尻の上半分が見えてそうなくらい小さいホットパンツ。脚は膝上くらいの靴下。この職業は一体なんだろう。

武器を何も持ってないところを見ると、格闘家か? いや、女性限定なことを考えると、踊り子とかの可能性もある。それにしては格好がラフな気がするが。

またこれである。一体このUFOは俺にいくつ答えの分からない疑問をもたせれば気が済むのだろうか。

少し悩んで、俺は女性キャラでこの職業を選び、ゲームをプレイすることにした。普段はあまり女性キャラを使うことはないが、女性限定というこの職業は、やはり気になる。

ついでなので、豊富な設定項目を駆使して数時間かけて好みのタイプのキャラを作った。

時間をかけただけあって、こんな女の子がいたら声を掛けたくなるといったレベルの完成度のキャラが完成した。

俺はその時かなりドキドキしていた。

久しぶりにヒーローアブセンスをプレイできるからか、宇宙人がやっているゲームをプレイするワクワクか、あるいはその両方か、鏡を見てないので分からないが、多分顔はにやけていたんじゃないかと思う。

UFOに捕まって脱出できないという切羽詰まった状況のはずなのに、俺はその時、間違いなく楽しんでいたと思う。

そう、俺は、楽しみながら、読めない文字でゲームを開始すると書かれているだろうボタンをクリックし、突如画面から放たれた光に溶かされたのだった。

今回で回想は終わり、次回から、ようやくゲームの世界での冒険を開始します。

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