プロローグ3
ある日突然、名前は知っているが、あまり話す機会もないような自衛隊のかなり上の上官からの呼び出しを受けた。
全く身に覚えのないその呼び出しに、あれこれと何の話か想像してみたが、検討もつかず、緊張しながらも、普段であれば、全く用事のない部屋の戸をノックした。
その上官と話した内容は少し割愛しよう。
何やら変な状況に置かれた時に俺がどういう行動を取るかとか、普段の訓練に取り組む姿勢とか、何でそんなことを聞かれているのかわからない内容の話をしたはずだ。
だがそれは本題ではない。
そう、重要なのはその上官が持ってきた本題だ。
上官は俺にUFOに関わる特殊作戦への参加の意思がないか聞いてきたのだ。
なんでも、UFOに対しての度重なる実験の結果、近寄るものを全て消してしまうあの謎の光をかいくぐり、UFOの内部に侵入できる可能性のあるデータが取れたらしい。
UFOについては、俺も出来る限りの情報を集めているつもりだったが、その上官から聞いた内容は驚くべき内容が多かった。
例の法律ができてから以降、テレビなどのニュースでUFOに人が消されたなどの情報が流れることはなかったが、噂ではやはり人が消された実験も少しあるみたいだといった話はあった。
しかし実態は違うらしい。
法律ができてから今日までに、発表されていないUFOに消失させられた人の数は143人。しかもこれは確認されている人数で、実際にはもっと多い可能性もあるというのだ。
あまりの人数に、もしやUFOからの攻撃が始まったのかと思ったが、あくまで、かなりギリギリの実験を繰り返しているせいで、UFOにはこちらから何か積極的な行動をしない限り、反応がないのは変わらないらしい。
それと、確認されていない消失者についてだが、これはUFO研究チーム以外のメンバーの消失が、おそらくかなりあるとの事だった。
UFOが現れたのは、しっかりと道の整備されているとは言いがたい山の麓だ。街の上空や、見通しの良い平野部、海上などに現れていたのであれば、一般人の侵入は、完全にとはいえないかもしれないが防ぐのは楽らしいのだが、山の麓、しかもそこには見通しの悪い森があって、さらに悪いことに、そこは自然保護区域で伐採なども不可能らしかった。
もし伐採が可能な森であったとしても、UFOがあるので、伐採するかどうかは微妙なところらしいが。
要は、UFO周辺は、侵入者がいても対処しづらいらしいのだ。
それでも十分な人数がいれば侵入者の対処やUFOに消される前の対処は可能らしいのだが、国もUFOだけが仕事ではない。
そんな人員を集める余裕はないらしい。
目の前にいる上官も、研究メンバーの一員らしいが、計画として聞かされてないUFOからの光が出る場面を、何度か目撃したらしい。
研究の全貌をすべて知らされてはいないにしても、確実に少なくない人間がUFOに消されてるのは間違いないだろうとのことだ。
それに、今はUFOに関するある噂がある。
とある宗教団体が、UFOを神の使いとして崇め、UFOから放たれる光は導きの光だとして信仰し、国によるUFOの管理を批判する活動を行っているという話だ。
それほど大きな団体ではないのであまりニュースにはなってないが、上官に話を聞いたところ、そういう団体が存在しているのは確からしい。
そんな連中が、自分勝手にUFOに関わろうとして、消された可能性がある。
そんな感じの俺の知らない、いくつかのUFOの情報を話したあと、上官は、俺が今計画されている、UFOに関するある大型作戦実行部隊の候補者として、選出されていると話した。
俺がUFOに関して高い関心を持っていることや、訓練の成績、家族構成などから選ばれたそうだ。
全国の自衛官や警察の特殊部隊などに話をしてみて、その中で参加してもいいという意志を持った者の中から、必要な人数を選び出すので、ここで俺が参加したいという旨を伝えたとしても、作戦メンバーに選ばれるかどうかは確定ではないらしい。
もちろんこの件は参加の意志があろうがなかろうが、他言無用だ。
つまり、人に相談せず、自分の意志のみで決めろという話らしい。
上官は必要なら数日時間を開けて、再度呼びだすので、その時に意思を聞いてもいいと言ってくれた。
しかし俺は、その場で参加の意志がある事を伝えた。
時間を置いても、たぶん、どうやって両親に言い訳するかを考えるだけで、参加しない理由を考えることは少なそうだと思ったからだ。
我ながら本当に親不孝だと思うが、もし、この話を断ったとしたら、俺はきっと一生後悔するだろう。
しかもそのことは一生誰にも話せないのだ。
まあ、参加の意志があっても選ばれない可能性もある。断って参加できないのではなく、参加したいと言って選ばれないのであれば諦めもつく。
上官は俺の参加の意思を聞くと、それでは後日、おって連絡がある。もし連絡がなければこの件は忘れてほしいと言って、去っていった。
そして数日後、俺はその上官から連絡を受けた。