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二話 伊藤ほのかの挑戦 M5の逆襲編 その五

「頭が高いぞ」

「!」


 ああっ!

 先輩が転んだ! なんで! もしかして、アンクルブレイク?

 アンクルブレイクって、相手の重心(じゅうしん)軸足(じくあし)にある瞬間に切り返すことで相手を転ばす技術だ。

 実際にNBAの選手も使っている技術で、YOUKUBEで見たことがある。

 凄い……これが全国レベル……。


「いや、ただ足を引っ掛けただけだよ」


 そうなんだ……感心して損した。それでも、喧嘩慣れしている先輩を簡単に転ばせるなんて、すごい。

 赤巻君が先輩の肩に手を置く。


「謝罪をしてもらおう」

「……す、すまない」


 先輩は放心(ほうしん)しているせいか、赤巻君の言葉に従う。

 赤巻君が私と橘先輩の方を向く。

(へび)に睨まれた(かえる)ってこんな気持ちなの。怖くて動けない。


「青巻っち、あの子、転んだら見えますかね?」

「見えんだろ」


 っ!

 私はスカートの押さえる。

 やっぱり、男の子はエッチだ、(けだもの)だ! これなら正座して謝った方がマシ!

 赤巻君が近寄ってくる。

 い、いや! こないで!


 ドガッ!


「ちょっと、待ちな!」

「おがっ!」

「あうち!」


 み、御堂先輩!

 御堂先輩が両手をポケットに突っ込んだまま、ドアを蹴って入ってくる。

 近くにいた黄巻君と青巻君が巻き込まれ、ドアの下敷きになった。

 いい気味。

 部屋の外には朝乃宮先輩と長尾先輩、黒井さんとサッキーがいた。

 み、みんな!


「はあ……もう少しで面白くなりそうやったのに、空気読んでほしいわ、ほんま」

「朝乃宮は黙ってろ。これ以上、仲間が侮辱(ぶじょく)されるのは許せない。それに私達の(あたま)が簡単に頭を下げるのは面子(めんつ)に関わる。これ以上やるなら私が相手になる。骨の一本や二本は覚悟しておけ」


 か、カッコいい!

 不敵(ふてき)に笑う御堂先輩がすごく頼もしい。

 放心していた先輩も我に返る。

 先輩は立ち上がろうとしたけど、赤巻君に抑えられていて立てない。

 赤巻君が腕一本で先輩を押さえ込んでいるみたい。こっちも凄い!


「聞こえなかったのかい? 僕に逆らう者は神だって許されない」


 カミユル二回目いただきました!

 ど、どうなっちゃうの?

 緊張感が(ただよ)う中、沈黙(ちんもく)を破ったのは青巻君だった。


「ちょと待ってくれ、赤巻」

「なんだ?」

「なあ、ここは勝負して決めないか? 負けた方が勝った方の言うことを聞くってどうだ?」

「何で勝負するつもりだ?」


 青巻君はどこからともなくバスケットボールを取り出し、指先一つで回している。


「こいつでどうだ?」


 バスケで対決? そんなの……。


「ズルいです! 素人の私達が勝てるわけないじゃないですか!」

「なら、そっちは一点でも入れたら勝ちでいいぜ。どうだ?」


 い、一点だけ? ワンゴールしたら勝ちってこと?

 それなら……い、いや、相手は全国レベル。漫画でもゼロ試合あったよね。

 やっぱり、無理。勝てっこない。


「青巻、勝手に話を進めてもらっては困る」

「なら、赤巻は俺達が負けるとでも思ってるのか?」

「いいだろう。その安い挑発に乗ってやる」


 いや、それは私達のセリフでしょ!

 心の中でツッコミながら、私は青巻君の提案について考えていた。

 勝負といっても喧嘩じゃないし、一点でも入ればこれ以上、先輩達に迷惑をかけずにすむ。やっぱり、先輩達に迷惑をかけたくない。

 選択の余地はない。勝負するしかない。


「いいですよ、その勝負、受けて立ちます! いいですよね、橘先輩?」

「……はぁ……仕方ないか」


 こうして、バスケ部と試合する羽目(はめ)になってしまった。

 でも、後悔はしていない。

 私のせいでこんなことになっちゃったけど、やっぱり膝をついて頭を下げるのは間違っていると思うから。

 だから、負けません!




 体育館につくと、ギャラリーがすでに集まっていた。

 私達にヤジを飛ばしてくるあたり、試合の事は知っているみたい。試合ってさっき決まったばかりなのに、なんでもう知ってるの?

 横断幕(おうだんまく)には『千戦千勝』と書かれている。

 ううっ、こっちはただでさえ不利なのに。アウェイ感がハンパない。


気負(きお)うことはない。リラックスしていけ」


 せ、先輩……。

 先輩に好きだと叫びたいっす! このまま、デートにいきたいです! すべてを忘れて……ってダメだよね、やっぱり。

 今回はユニフォームじゃなく、ジャージ姿にゼッケンで試合に挑む。今回は本気モード。


 バスケって体育でしかプレイしたことがない。一点取れれば勝てるけど、相手は全国制覇したチーム。

 やっぱ、無理。止めてくれないかな……監督とか。勝手に試合するなっとか言って欲しいな……。

 私は期待を込めて相手のベンチを探すと、選手以外に女の子がいた。

 制服着ているし、マネージャーかな?


「あの人が監督だよ」


 橘先輩が説明してくれた。えっ? うそ? あの子が?

 いやいやいや、どう見たって……。


「か、監督って先生じゃないんですか? あの人、生徒ですよね?」

「そう。赤巻君が彼女に直々に頼んだらしい。彼女の父親はスポーツトレーナーなんだって」


 監督まで再現されているわけね。


「なるほど、ちなみにお名前は」

「戦国サ○ヨ」


 まさかの! 和菓子店の女将(おかみ)さんじゃん! 和菓子店なのに女将って言うのをツッコミたい!


「準備はいいかい?」


 赤巻君の問いに私は黙って頷く。

 少し緊張しているけど、試合開始。


「ちょっと待ちなさい!」


 あ、あの人は!

 おさげで丸めがね、気の強いお節介(せっかい)属性の女の子。

 押水先輩と同じクラスの……。


「委員長!」

「委員長と呼ばないで! 西神海です」


 委員長と呼ばないで、キター!

 でも、なんでいいんちょ……もとい、西神さんがここにいるの?

 ユニホームから察するに、バレー部みたいだけど、どうして違う部の人が試合を止めてくれるの?


「赤巻君、今日は半面、バレー部が使う予定なんだけど」

「僕が試合すると決めた。後にしてくれ」

「そんな横暴許せないわよ!」


 おおっ、頑張れ、西神さん! できればこのまま試合が中止して、賭けも謝罪もなかったことにしてほしい!

 ダメかな?


「僕に命令できるのは僕だけだ」

「あなたねえ!」

「まあまあ、委員長」

「委員長って呼ばないで」


 委員長に話しかけてきた人、誰だろう? しかも、爽やか系イケメンの男の子で背は高いし、白Tがやけに映えていて、歯がきれい。


「試合なんてすぐ終わるし、ランニングでもしよう。下手にもめることないだろ?」

「……分かったわ」


 ああ、西神さん、ひかないで! やっぱり無理だったか……。

 さっきから気になっているんだけど、西神さんの隣にいるイケメンは誰? 仲よさそうだし、彼氏かな?

 くるみといい西神さんといい、切り替え早いな。

 恋愛ゲームって、主人公がバットエンド迎えると、ヒロインだった女の子達はさっさと彼氏作っちゃうけど、まさに同じ展開。ちょっとだけ、押水先輩に同情しちゃうかも。


「すまない、邪魔が入ったが、もう大丈夫だ、始めよう。ゲームは特別ルールで前半10分、後半10分の計20分。ワンゴールでもキミたちが決めれば、その時点でキミ達の勝ち」


 普段のルールは10分のピリオドをワンセットで四回おこなわれる。

 二セットなのは私達の体力を考えての事。正直、体力がもたないし。そんなわけで対戦メンバーが勢ぞろいする。


 バスケ部は赤巻君、青巻君、黄巻君、緑巻君、紫巻君。

 風紀委員は、私、先輩、橘先輩、長尾先輩、須藤先輩。

 って、須藤先輩って誰!


「おいおい、同じ風紀委員の先輩に向かって何て酷いことを」

「でも、新キャラですよね?」

「新キャラいうな。『プロローグ 藤堂正道の日常』で藤堂と話してるから」

「知りませんよ」


 何か今、須藤先輩が異次元的な話をされたような気がするけど、無視することにした。


「おい、始めるぞ」


 というわけで、この五人で試合開始。

 御堂先輩がかなりゴネてたけど、辞退していただいた。

 理由は御堂先輩がブチギレて、没収試合(ぼっしゅうしない)にならないようにする為。


 御堂先輩、朝乃宮先輩、黒井さん、サッキー、明日香、るりかは二階で観戦している。

 御堂先輩は腕を組んでそっぽ向いてる。

 黒井さんは呆れたような顔してるし、サッキーはオロオロしてる。

 そんなサッキーを、朝乃宮先輩は嬉しそうに鑑賞してる。

 明日香とるりかはお菓子食べてる。


 ああ、性格分かるな~。


「伊藤、試合が始まるぞ。集中しろ」


 いけない、頑張らないと!

 気持ちを切り替えなきゃ!


「はい、先輩! 勝ちましょうね!」


 先輩が少し笑ってくれた。それだけで勇気が湧いてくる。


「それでは、バスケ部と風紀委員の練習試合、始めます! 礼!」

「よろしくおねがいします!」

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