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七話 ライラック -恋の始まり- その三

「古見君!」

「……伊藤さん……でしたっけ? 僕に何か用ですか?」


 やっと古見君を見つけた! なんでこんなところにいるのよ! 探したじゃない!

 お昼休み、獅子王先輩の事で話したいことがあり、私と明日香、るりかは獅子王先輩の告白の相手、古見君を探していた。

 古見君の教室、ボクシング場、食堂等、いろいろと探したけど見つからず、目撃情報を手掛かりに校舎裏の奥にある(かし)の木に向かうと、やっと古見君を見つけることができた。

 こんな人気(ひとけ)のないところで古見君は何しているの?

 ちなみに明日香とるりかはただの野次馬です。暇だよね、二人とも。


「ここって伝説の樫の木だし」

「もしかして、告白する気?」


 二人がキャーキャー騒いでいるけど、何の事?

 伝説の樫の木? 告白? どこかで聞いたことがあるような……ああ、思い出した! ここがそうなんだ。

 私は二人が何を言っているのか、思い当たる節がある。

 卒業式の日にこの校舎裏にある樫の木の下で、女の子からの告白で成立したカップルは必ず幸せになれるって噂を聞いたことがある。

 押水先輩の一件で調査していたら、この樫の木の伝説を知ったんだよね。彼にとって都合のいい伝説だったから注意していたんだけど、結局、彼は転校していったからすっかり忘れてた。


「ち、違いますよ! こ、告白したい人なんていませんから」

「獅子王先輩は違うの?」


 私の疑問に、古見君は困った顔をしている。


「……その件なんですけど、ちょっと悩んでいて。獅子王先輩、本気なのかな?」

「本気に決まってるよ! 疑う余地(よち)なんてないじゃない!」


 だから、安心していいんだよ、古見君。

 あれ? なんでみんな、私から距離をとるの?

 私、何か変なこと言ったっけ?


「いや、ほのほの。なんで断言できるの?」

「できるよ。私、現場にいたもん。獅子王先輩の目は恋する目でした」


 獅子王先輩は本気だ。私には分かる。獅子王先輩の目は嘘をついていなかった。

 恋をしている者同士、獅子王先輩の気持ちは手に取るように分かってしまう。


「……でも、僕は男だよ? おかしくない? それとも、僕がおかしいのかな?」

「いや、古見君は間違ってないし。ほのかはBL好きだから」

「BL?」

「ボーイズラブ。男の子同士の恋愛だし」

「……」


 古見君が私の顔を見て、オーマイガッ! って顔しているけど、気のせいだよね?

 話が進まないので、私は本題に入ることにした。


「単刀直入に聞くけど、古見君は獅子王先輩のこと、どう思ってるの?」

「どうって……尊敬できる先輩……かな?」


 自信のない弱々しい声に、今度は明日香とるりかが古見君から距離をとる。


「二人とも! 何がしたいのよ!」


 二人は無自覚なんだろうけど、あからさまに距離をとるのは、相手をキズつける行為だ。

 古見君は本当に悩んでいるんだから、気をつけなきゃダメだよ。


「だって」

「ねえ?」


 二人は困った顔をしている。もう、同性愛だからって偏見持ちすぎ。

 古見君も同性愛に戸惑ってるみたいだし……。

 私は古見君に正直な気持ちを伝える。


「ねえ、古見君。同性愛って別に変なことじゃないんだよ? 人を好きになるってことはおかしいことじゃない、当たり前の感情だよ? 男の子でも、女の子でも違いはないから」

「……そうなのかな?」

「説得されたらダメだし」


 ちょっと! なんで邪魔するのよ!

 私の意見を否定したのは、友達である明日香だった。


「なんで邪魔するのよ、明日香!」

「古見君を人の道から踏み外さないようにしてるだけだし」


 もう、頭が固いんだから。

 異性しか好きになったらダメなんて法律、ないんだから。結婚はできないけど。

 欧米は結婚できるのに、どうして日本はできないんだろう。遅れているよね。


「ねえ、伊藤さん、ちょっといいかな?」

「どうしたの?」

「その……ど、同性愛なんだけど、やっぱり、僕が女の子役ってことなのかな?」


 私は首を振って、古見君の意見を否定する。


「違うよ。古見君は女の子じゃないんだから、そんな役、なれないよ」

「……そっか。なら、僕っておかしいのかな? その……お、女の子みたいな気持になるっていうか……」

「恥ずかしがらないでゆっくり話していいよ」


 私の言葉に、古見君はほっとしたような表情になる。

 ゆっくり話していいと言われると、一息つけるのと、落ち着きを取り戻せる効果があることを、私は体験したことがある。

 ポイントは相手に何も悪くない、間違っていないことを伝えることかな。

 私も失敗したとき、先輩から、


「怒らないからゆっくりと話してみてくれ」


 そう言ってもらったっけ。

 私は素直に自分のミスを報告するんだけど、先輩は言ったとおり、怒ることは絶対にない。その後、よく話してくれたって、頭を撫でてくれるんだよね。その後、説教が始まって……。


 あれ? 私、騙されてるじゃん!

 でもでも、先輩は怒っていないからセーフなの? いや、アウトでしょ!

 騙されたよ~!


「い、伊藤さん?」

「ごめん、ちょっと世の中の理不尽さを(なげ)いていただけだらか」

「は、はあ……」


 い、いけない。古見君の話に集中しないと。

 私は古見君を落ち着かせるために、古見君の手を握る。

 古見君は私の行動に最初は驚いていたけど、そのままの状態で話してくれた。


「その……た、たとえばなんだけど、キスしたり、ハグしたりすることを想像したとき、女の子の気持ちになって想像しちゃうんだけど、これっておかしいのかな?」

「それは童貞(どうてい)だから考えちゃうし。女の子抱いたらすぐに想像することなくなるし」


 古見君の悩みに、明日香が口出ししてくる。

 明日香の言っていることってあってるの? 私、男の子の気持ちを想像することなんて全然ないんですけど。男の子ってそういうものなのかな?

 男の子ってエッチなことしか考えていないって思うことあるけど、そんな人たちが女の子の気持ちになる、同期するってことあるの?

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