第一章『出会い』
この作品はフィクションであり実際の団体、個人とは一切関係ありません
――歓声が鳴っている。
アンフィテアトルムと呼ばれる円型劇場の中で貴族たちの見せ物『剣闘士』達の『劇』が開かれている。
その『劇』はダンスパーティーの様な優雅でもなければ演劇の様に洒落たものでもない
――単純な殺し合いだ
最も単純といってもその闘い方には違いがある。
――精霊の住む世界そう呼ばれるユートピアでは精霊術という特殊な魔法にも超能力にも似た術を使う。
その術は十人十色である者は炎をある者は雷を
と常識ではまず考えられない術を使う。
◇◆◇◆◇◆◇
アンフィテアトルムの真ん中に佇んでいる少年ラファエル=バーンは今宵の劇の相手だった人間を見つめ茶色い髪を掻きながら踵を反し立ち去った
外に出るとこの殺し合いの劇の責任者らしき女性に出くわした。
「ヤッホー元気でしたかラファエル君?」
その女性はこれからパーティーにでも行くのかという服装で続けた
「相変わらずラファエル君が戦うと大盛り上がり!
商売繁盛・大繁盛!」
「別にあなたの為に人を殺している訳ではありません。俺は俺の為にやっただけです」
少年は冷静な口調で答えた
剣闘士の歴史は古く昔は剣奴と呼ばれる奴隷たちが見せ物として戦わされた。
それを商売としたのがこのアンフィテアトルムで行われる剣闘士たちによる戦い
剣闘士たちは自分の命を賭け勝った方に貴族たちが賭けた金の一部を配当される
この賭けは勿論非合法だがなまじバックにいる貴族の影響が強い為にこの国〈ヒーリング〉も手を出せないでいる
「私としてはどっちでも構わないのよね〜。お金さえ貰えれば」
女性は告げると手に持っていた袋を少年に投げた
「本日の配当金よ〜。また出番になったらお願いね」
パーティードレスの女性はウインクをすると暗闇の中に消えていった
「人を殺して金を貰って生きるか・・・・・・」
少年は誰にも聞えないよう小さく呟くと少年も暗闇の中へ消えていった。
◇◆◇◆◇◆◇
暫く歩いただろう。ラファエルは今晩の宿を探して歩いていると、春だというのに厚ぼったいコートを被り顔を隠している15歳前後の少年?に出会った
――今の時刻は深夜
子供が一人で外出するには余り褒められた時間ではない。ラファエルは最初は浮浪者かと思ったが行灯の光が僅かに照らすコートの隙間から見える服装や髪は浮浪者のそれには似つかわしくない
恐らく貴族または騎士・・・・・・
そこまで頭を回したが思考を切断した。自分には関係のないことだ
その少年を無視しようと心に誓ったがその誓いははやくも崩れ去った
少年は顔を隠していたコートをとり話かけてきたのだ
「もしもし、あなた強いですね?」
何の脈絡もなくこんな事を言われたら誰だって固まるそれはラファエルも例外ではなかった
(何言ってんだコイツ・・・・・・)
そんなラファエルの引きつった顔をものともせずに少年は続ける
「私は今家臣に追われています。救援を求めます」
家臣?やっぱり何処かの貴族か?こんな時間に貴族のご子息が家出をしたら余程の馬鹿でもない限り捜索するだろう
そんな考えを巡らしていると少年の後ろから二人の男がやってきた
――男の格好はヒーリング王国ご自慢の騎士
高々貴族のご子息相手に少しオーバーだと思った
少年は男二人を見るとラファエルの背中に隠れラファエルの服の裾を力なく掴んでいる。
「おい、オマエ・・・・・・」
ラファエルは少年に話し方ようとしたが突如、火の塊が飛んできた。
その塊は元々威嚇だったらしくラファエルの遥か頭上を飛んでいった
――精霊術
頭に真っ先に浮かんだのはその言葉だった。
「そこのお前その御方を返して頂くぞ」
先程、精霊術を使った男がもう一度精霊術を使う為に意識を傾けた
「そうしたいのは山々何ですけどね・・・・・・」
ラファエルは後ろを振り向くとガタガタと震える少年の姿があった
「名も知らない少年。オマエは一体誰なんだ?」
「わ、私はこの王国の――」
少年の言葉を最後まで聴けないまま、もう一人の騎士はその特徴ともいえる腰に帯刀した剣を抜いて斬りかかってきた。
――今度は殺す気だ
瞬間的に悟ったラファエルは手に持っていた袋を騎士に向かって投げた
騎士は暗闇の中で投げられた袋を反射的に叩き斬った
すると中から硬貨が散らばり騎士の意識は散らばった硬貨に一瞬向かい
その一瞬の隙をつきラファエルは呪文のように何かを呟き
騎士が我を取り戻しもう一度ラファエルに斬りかかろうとした時にはラファエルの周りにまるで糸で吊されたかの様に「六枚の羽」が舞っていた
「六枚の羽」は決して地面に落ちることなく、まるで意識を持っているように泳いでいる
暗闇に六枚の白い羽が辺りを照らす。
その光景を少年は眺めていた。




