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悪役令息達の破滅フラグは全てハピエン回収します!  作者: 夏みかん


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あの日から私はずっと、誰かと深い関わりを持つことを極力避けてきた。

誰のことも愛さず、誰からも愛されない。

昌平の気持ちを無下にした私には、そんな人生がお似合いだと思った。


 正直、転生した当初は、何かが変わると思った。

特別な才能、美しい容姿、誰かを救える器の主人公に生まれ変わったら、自分が運命を変えられるんじゃないか…そんな風に思い上がっていた。

でも実際はどうだ、中身が『山吹れいな』のままなせいで、何も変わらないじゃないか。昨日だって、調子に乗って運命を変えようとしたら、レオに八つ当たりして傷付けて終わった。


(本当に、不甲斐ない…)


ふと、アベルの方に視線を向けると、少し離れたところで談笑するA君たちのグループをじっと見つめていた。


(…やっぱり、全然平気じゃなかったのね)


先ほどまで、特に1人になったことを気にしていないように見えたのは、作業に集中していたせいだろう。ひと段落してふと周囲を見た時に、自分の孤独を再確認して虚しくなったようだ。


(…でも、私には関係ないから)


そう自分に言い聞かせ、アベルから視線を外してプランターの土へと意識を向けようとした、その時。


「……やっぱり、君はそっちを見ちゃうんだね」


不意に、背後からカケルの落ち着いた声が聞こえた。いつの間にか休憩を終えて戻ってきていたカケルは私の視線を追って、アベルの方を優しく見つめた。

朝、空き教室で見せたあの冷徹な雰囲気はもうない。


「改めて、さっきはごめん。他の男と関わってほしくなくて暴走した。でも……さっき遠くから君のことを見ていて、思い出したんだ」


カケルは私の隣に立ち、穏やかな笑みを浮かべる。


「僕が惹かれたのは、誰かが困っているのを見ると、自分のことを後回しにしてでも助けようとする、そんな危なっかしい君だった。……だから、僕のことを気にしてアベルに声をかけられないのなら、もうそんなこと考えなくていい」


私がレオやショウと関わっているのに対して、そんな風に思われていたのか。

驚くと同時に、なんだかカケルを騙しているようで罪悪感が湧いてくる。


「…私はきっと、カケルが思っているような人間じゃないよ。誰かを助けたいなんて身の丈に合わない気持ちだけ一丁前で、実際は何も結果を残せていない…それどころか、事態を悪化させるだけさせて投げ出すような、そんなクズみたいな人間だよ」

「……」


私の弱音を最後まで聞いたカケルは、反応に困ったような素振りを見せた後、そっと私の手を握った。


「何がきっかけで、そんな卑屈な考えになったのかは分からないけど…ひとつだけ言えるのは、僕は身の丈に合わない行動が悪いことだとは思わない」


 私の手を握るカケルの手に、ぎゅっと力がこもる。


「僕自身、平民なのに中等部からこのアストラルム学園に入って、ずっと身の丈に合わない環境に身を置いているからね。それが間違っていたと思いたくないから、そう思っているだけなのかもしれないけど…君も、この学園で平民が見下されることも、学園に居続けるために高いレベルが求められることも分かったうえで、この学園に来たはずだ」


彼の言葉は、まるで植物の根が水を吸うように、私の心にすんなり入ってくる。


「まだ入学したばかりで、この選択が正解なのか、不正解なのか分からないかもしれないけど…卒業する時に、これが正解だったと思えるように、一緒に頑張りたいと僕は思ってるよ。きっとどんな選択だって、最後までそれが正解なのか、そもそもその選択が身の丈に合ってなかったのかなんて、最後まで分からない。だから、最初から身の丈に合わないとか、自分には出来ないとか決めつけないで、もっと自分を信じてあげてもいいんじゃないかな」


その言葉に、視界が開けるような感覚がした。

私はずっと、「山吹れいな」という平凡な自分の殻に閉じこもって、過去のトラウマから逃げることばかり考えていた。


(でも……中身が私だからって逃げちゃだめなんだ。主人公がこれまで生きてきた人生を、私が否定しちゃダメだ。転生したからには、私が変わらなきゃいけない)


「何もしない」ことが誠実なんて、ただの言い訳だ。それは、失敗して自分が傷つきたくないだけの逃げに過ぎない。

それこそ、前世と何も変わらないじゃないか。


私が手を差し伸べたことで、いつか彼の中に「失う恐怖」を生んだとしても、その闇ごと照らし続けてやる。彼が闇に落ちるたび、私が何度でもその手を引いて、光の中へ連れ戻せばいい。


(もう、あの時みたいな中途半端なことはしない)


本来、トラックに轢かれてそのまま終わっていた命だ。贖罪…というわけではないけれど、もう自分を守ることなんて考えずに、運命を変えることにこの人生を捧げよう。


「…ありがとう、カケル」


アベルは休憩のためか、元々いた木の陰で独り、地面を見つめていた。

私はそっと、カケルの手をほどいて立ち上がる。


(……救った後で何が起きようと、私はもう逃げない。この世界で、今度こそ私は、本当の意味で誰かと向き合いたい)


 自分の選択のその先で、破滅への道連れにされても構わない。

アベルの元に向かいながら、私はひとり、覚悟を決めた。


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