第二十一話「少年少女の右往左往」
「全てのグールの呪を解こう。あるべき場所へ帰るといい」
グールは深くうなずき、闇に溶けるように姿を消した。
その様子を見ながら、バスレはただ膝を震わせていた。
「う……! うぅっ……こんな……こんなの!」
九重は冷たい視線を向ける。
「まだいたのかね?」
「こんなの……――認めない! 禁書を使うなんて、悪魔のすることだ!」
「禁書?」
「この……――ばかぁぁぁっ! 覚えてろ!」
捨て台詞にもならない叫びを残し、バスレは駆けだした。
足をもつれさせ、転びそうになりながら。
*
そんな二人の様子を、近くの林の影から、小さな目が覗いていた。
「信じられない……怪物がひれ伏した」
リアは呆然と呟く。
その隣で、ミカは目を見開き、声を弾ませた。
「ていうか――すごい……! かっこいいね……まさに支配者って感じ」
「なに言ってるの! 姉様があんな目に遭ったんだよ!?」
「バカ! 声がでかい!」
その背後から――
「やっと見つけました」
疲れ切った声とともに、レーナが姿を現した。
顔には土埃がにじみ、肩は荒い息に上下している。
「さんざグールと戦い……教授様が心配で戻ってきたら……」
「れれっ! レーナ先輩!?」
「う~わ……先輩……顔真っ赤」
「やはり、あなたたちが悲鳴の主でしたか……ここで何をしているのです! リアさん! ミカさん!」
騒ぎのただ中に、いつの間にか九重の影が差した。
「戻ったのかね、レーナくん」
「ひゃあっ!? きっ、来たぁあっ!」
リアが半ば涙声で叫ぶ。
その声を背に、ミカの視線は九重の横顔へと向かった。
「へぇ……近くで見ると、お顔もなかなか」
九重は訝しげに目を細める。
「……次から次に……いったい、なんだね」
レーナは困ったように眉を寄せ、小さく頭を下げた。
「失礼しました教授様……この二人は、国立寄宿舎の後輩です」
「その後輩が、どうしてここにいるのかね?」
「少々お待ちください、すぐに吐かせますので」
レーナの本気の瞳に射抜かれ――二人は青ざめて絶句する。
「だから……殺し屋のような言い方はやめたまえ」
▼次回「絶望の棄却」
お読みいただきありがとうございました!
表紙イラストやキャラ設定は、Xで随時公開しています。
今後ともお楽しみいただけましたら幸いです。




