第二話「召喚反応」
怪異を退けた九重は、呼吸を整えつつ周囲を見渡した。
だが、あの少女の姿はどこにもない。
「……なんと、せわしない女性だ」
九重は漆黒の台座に腰を下ろし、ぽつりとつぶやいた。
「さて、どうしたものか」
*
少し前――
九重が目覚めた場所の近くにある、警備の詰所。
粗削りの石積みで作られた建物は、至るところに亀裂が走っている。
「召喚反応が出ました」
緋色の麻ローブをまとった若者が、水晶に宿る炎をのぞき込みながら、つぶやいた。
その傍らには、深紅の甲冑を身にまとった女騎士が立っている。
ミルゼア教国の騎士長――ジゼル・アル=グラード。
ジゼルは冷ややかな目を水晶へ向け、溜息まじりに言った。
「またか……異世界の者を気まぐれに召喚する。つくづく迷惑な石碑だ」
「今回は少しおかしいんです。反応が異常に大きくて。天を衝く巨人か、悪魔の化身でも現れたのでしょうか?」
「知ったことか。何者であれ、捕らえて火の選別を課すだけだ」
若者は肩をすくめ、大げさに息を吐いた。
「興味ないんですか? 異世界人ですよ? どんな文化を持ってるのかとか、どんな信仰をしてるのかとか――」
「それ以上は火への背信だ」
ジゼルの手が無音で剣の柄にかかった。
「冗談! 冗談ですよ! ほんと堅物だなぁ、胃を痛めますよ?」
「……減らず口を」
そう言い残し、ジゼルは踵を返す。
若者は慌てて声を張った。
「何者かは聞いてくださいね! 大司祭の勅命ですよ!」
「分かっている」
「では気を付けて。貴女に火の祝福がありますように」
▼次回「何者か」
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