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老教授、少年に転生――教授は異界を書で拓く  作者: 千本松


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第二話「召喚反応」



 怪異を退けた九重は、呼吸を整えつつ周囲を見渡した。

 だが、あの少女の姿はどこにもない。


「……なんと、せわしない女性だ」


 九重は漆黒の台座に腰を下ろし、ぽつりとつぶやいた。


「さて、どうしたものか」



 少し前――


 九重が目覚めた場所の近くにある、警備の詰所。

 粗削りの石積みで作られた建物は、至るところに亀裂が走っている。


「召喚反応が出ました」


 緋色の麻ローブをまとった若者が、水晶に宿る炎をのぞき込みながら、つぶやいた。

 その傍らには、深紅の甲冑を身にまとった女騎士が立っている。


 ミルゼア教国の騎士長――ジゼル・アル=グラード。


 ジゼルは冷ややかな目を水晶へ向け、溜息まじりに言った。


「またか……異世界の者を気まぐれに召喚する。つくづく迷惑な石碑だ」

「今回は少しおかしいんです。反応が異常に大きくて。天を衝く巨人か、悪魔の化身でも現れたのでしょうか?」

「知ったことか。何者であれ、捕らえて火の選別を課すだけだ」


 若者は肩をすくめ、大げさに息を吐いた。


「興味ないんですか? 異世界人ですよ? どんな文化を持ってるのかとか、どんな信仰をしてるのかとか――」

「それ以上は火への背信だ」


 ジゼルの手が無音で剣の柄にかかった。


「冗談! 冗談ですよ! ほんと堅物だなぁ、胃を痛めますよ?」

「……減らず口を」


 そう言い残し、ジゼルは踵を返す。

 若者は慌てて声を張った。


「何者かは聞いてくださいね! 大司祭の勅命ですよ!」

「分かっている」

「では気を付けて。貴女に火の祝福がありますように」




▼次回「何者か」

お読みいただきありがとうございました!

表紙イラストやキャラ設定は、Xで随時公開しています。

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