第十六話「明日への灯」
ミカは息をひとつ吐き、真剣な眼差しを向けた。
「いいかい? リア。あのジゼルさんが敵わなかった相手だよ。アンタやアタシみたいな劣等生が行って、どうするつもりさ」
リアは拳を握りしめ、かすかに呟く。
「……わかってる」
「なら、この話はここで終わり。どうしても納得いかないなら、お偉いさんにお手紙でも――」
「それでも、わたしは行く!」
「ちょっ……リア!? 待って! リア!」
リアは振り向きもせず、駆け出していった。
ミカは深くため息をつき、眉間を押さえる。
「ほんっと、バカなんだから!」
それでも意を決し、赤いリボンを結び直すと――
「行くってば! アンタひとりにさせられるわけないでしょ!」
机に置いてあったパンやノートを乱暴にカバンへ突っ込み、肩に担ぎ上げる。
「はぁ……嫌な予感しかしない!」
*
同じ頃――農村の小屋。
レーナの看護が功を奏し、九重の体は快方へ向かっていた。
包帯こそ残っていたが、痛みはほとんどない。
「そろそろ出立しよう。準備を頼めるかね?」
「もちろんです教授様……ただ――」
「なにかね?」
「この世界のことです。よろしいのですか? 何もお教えしなくて。それなりに学んできましたが」
「キミのことは疑わない。だが、その知識が偏っていないとも限らんだろう? 私を焼き殺そうとしたあの儀式を思えば――猶更だ」
「――! ……そうですね」
「私は偏見に囚われず、この世界を自分の目で識りたいのだよ」
レーナの胸の奥に、確信めいたものが芽生えた。
(……やはりこの人は特別だ)
「とはいえ、もちろん聞きたいことは出てくる。その時は、よろしく頼む」
「はい――喜んで」
▼次回「怪物と旅立ち」
お読みいただきありがとうございました!
表紙イラストやキャラ設定は、Xで随時公開しています。
今後ともお楽しみいただけましたら幸いです。




