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老教授、少年に転生――教授は異界を書で拓く  作者: 千本松


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第十五話「波紋は少女たちの元へ」



 農村での戦いから三日――


 ミルゼア教国内の診療所。


 ジゼルは肘掛け椅子に深く沈み込み、窓の外をぼんやりと眺めていた。

 午後のやわらかな陽光が差し込むなか、その瞳は虚ろに揺れていた。


「……姉様」


 傍らに立ち、静かに呼びかけたのは――リア・アル=グラード。

 国立寄宿舎の二年生にして、ジゼルの妹。


 姉と同じ栗色の髪を肩で揃え、大きなくりくりとした瞳を揺らす少女。

 小さな胸の奥には、姉譲りの誇りと不屈の焔が脈打っていた。


「あの日……何があったのですか? 姉様が追っていた、あの教授が……姉様を、こうしたのですか?」

「……教授……? ……教授……?」


 ジゼルの中では、いまも残響がせめぎ合っていた。


 九重の放った呪文と、それに抗おうとした怒りが渦を巻き――

 理性を混濁させていた。


 リアは声を殺して震え、ついに涙がこぼれた。


「……どうして……こんなことに」


 そのつぶやきのあと、彼女は小さく拳を握りしめる。

 胸の奥で、か細い決意が燃え始めていた。


「待ってて、姉様……わたしがきっと助けるから」



 国立寄宿舎――


「お願い! わたしと一緒に、あの教授とかいうのを捕まえに行こう!」


 リアは駆け戻るなり、息を弾ませながら友人に詰め寄った。


「パス」


 素っ気なく言い放ったのは――ミカ・クーザン。


 腰まで流れる黒髪を一房だけ赤いリボンで結い、すらりとした立ち姿。

 切れ長の瞳がわずかに細められると、途端に大人びた気配を纏う少女だった。


「そんな!」

「バカねぇ……その教授って、あの神様召喚事件の主犯でしょ? 火の審判を跳ね退けたっていう、ヤバいやつ」

「そうだよ! そいつが姉様を……!」


 ミカはじっとリアの目を見据え――


「いいかい? リア」




▼次回「明日への灯」

お読みいただきありがとうございました!

今後不定期に更新します!

表紙イラストやキャラ設定は、Xで随時公開しています。

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