6.破産申請とかって……
「――でよう、まだ説明が足りないと俺は思うんだわ」
「寝起き早々になんだい?」
こっちだって寝起き一発目でお前の顔なんか見たくねぇよという文句を寸前のところで呑み込み、友好的なビジネススマイルを浮かべて見せる。
「うわ気持ち悪っ」
「……すぞ」
おっといかん、殺意が漏れた。
「あの魔物の……生い立ち? は何なんだよ」
「何なんだと聞かれてもねぇ……魔物が生まれる過程で関わった者たちの記憶や残留思念といった物かな」
「よくわかんない」
「……まぁ、不幸だったり、何かに激しい不満や憤りを感じていたり……要するに誰かの何かしらの後悔や願いを叶えようとして魔物は生み出されるのさ」
「じゃあ、お前のお仲間って奴はあの女の子達に接触したと?」
「というより、自分の持ち主を守れなかったぬいぐるみの強い後悔に目を付けたんだろうね」
「生きてる人間じゃなくても、それこそ物でも良いのか」
「想いが強ければね」
「なるほど」
つまりあの魔物……クマのぬいぐるみにとって女の子達はそれだけ大事な子で、物に想いが宿るほど救えなかったのを後悔してるのか。
「もちろん人間が魔物になる事もあるよ」
「さらっと言うなよ……」
ん? 待てよ? って事はだよ?
「……あの、それってもしかして、殺さないといけない感じ?」
「時と場合による」
「はい! 魔法少女辞めます!」
無理無理無理! 人間だったかも知れない相手と戦うのも無理だし、それを殺す可能性があるのも無理だから!
「何を言っているんだい? 君はもう奇跡の前借りをしただろ? 少なくともそれを返済し終えるまでは辞められないよ」
「ガッデム! とんだブラックだよちくしょう!」
初戦闘で前借りしなきゃいけないのに、前借りしたらそれを返済するまで辞められないってどんなゲームバランスだよ!
ふざけんなよ、ニートの貧弱メンタルでそんなの耐えられる訳ないだろ!
「いやまぁ、普通の魔法少女達は初戦闘でも魔法を駆使して普通に戦って普通に勝つもんだから」
「俺が普通じゃないみたいな!」
「ニートは普通なのかい?」
「ごめんなさい」
ダメだ、ニートが禁止カード過ぎる……ここは話題を逸らそう。
「そもそも魔法についてもよく分かんねぇんだよな」
「分からないとは?」
「魔法を行使するのに、それ相応の価値が必要ってのがよく分からねぇんだよ」
働いてるのに、働くためにお金が必要みたいな、なんかよく分かんねぇ事やってねぇか?
「価値の高さは主観で良いのさ、君にとって大事に思う物ほどアレは悦ぶ」
「最低だよ!だいたい神様とか天使とかって、もっと慈悲深くて良い存在だろ!」
「人間が想像した神なんて知らないよ。君の信仰する宗教では私のような存在の記述もあるのかい?」
「いや、宗教には詳しくなくて……」
なんかふわっと日本はごちゃ混ぜ多神教、欧米や中東では一神教が主に信仰されてるくらいしか知識が無い。
「詳しくない癖に神様について語ってたのかい? それはなんというか……」
「言葉を濁すのやめろよ!」
そういうのも結構傷付くんだけど! コイツ本当に正義の味方か? 人がダメージ受けるツボを的確に突いてきやがる!
「ともかく、僕の識る神様はそういう存在なのさ」
「まぁ、確かに、少なくとも世界的に有名な宗教にお前みたいな極悪マスコットが出て来るとか聞いた事ないしな」
「【天の理 地の理 三界に君臨する獣達の王 儚い夢の主よ】」
「えっ、なになに? 急になに?」
「【其方の秩序を果てまで敷き 理に背きし愚か者を柩に横たえ 壮大な夢を説く】」
「待って待って!怖い怖い怖い!」
「【遠大なる夢想の導べ 無垢なる語り部の調べ 我は世界と光に復讐する者】」
「謝る!謝るから詠唱やめて!本当にごめん!ごめんなさい!」
「おもろ」
「何が起こるのか分からなくて心臓に悪いんだよッ!!」
スパーン! と小気味の良い音を立てて枕を床に叩き付ける。
ふざっけんなよ! 急に影も形も無かった詠唱が始まってビビらない訳がないだろッ!!
あれ、なんか、そういう世界観なんすか? 魔法少女とか経由しなくてもマスコットも直接力を振るえる感じっすか? って今の一瞬でめちゃくちゃ焦ったんだからな!?
「m9(^Д^)」
「馬鹿にしやがってよぉ!! てかなんで口語で顔文字を表現できるんだよッ!!」
もうコイツ何でもアリか!?
「それはさておき、もう夜だね?」
「……働けってか」
「少なくとも借金を返すまでは」
それを言われると弱い。あの時その場のノリと勢いで承諾せず、普通に逃げてやっぱ辞めますって言えば良かった。
でも仕方ないじゃないか、こんなニートの俺でも何か変われるんじゃないか、不思議な力と共に物語の主人公に成れるんじゃないかって思ってしまったのだから。
でもまぁ、それはそれとして――
「――破産申請って出来ます?」
その言葉を聞いた極悪マスコットの動きが一瞬止まり、そして数秒ほどフリーズする。
「……破産申請を提案した魔法少女は君が初めてだよ」
「な、なんかすいません……」
あ、この極悪マスコットも本気の素で驚いたり、哀れむ事ってあるんだ……なんか俺ってば、とんでもない快挙を成し遂げたかも知れない! わーい!
「ちなみに無理だよ」
「ファ〇キン」
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