12.同僚たち
「この子は?」
シズクが指し示す先、まるでメスガキのような発言の主である魔法少女。
年の頃は小学高学年程度だと見受けられるその子は、他人を小馬鹿にするような顔で俺とシズクを見上げていた。
アシンメトリーな前髪に、サイドテールを跳ねさせたサファイアのような青い髪が特徴的で、これまで見た魔法少女の中で一番ニチアサっぽい見た目だ。
「彼女はミユ、見ての通り生意気な子どもさ」
「ちょっとちょっとアルマさぁ~ん? 自分よりも歳下の子ども相手に大人気ないと思うんですけどぉ?」
なるほど、メスガキ魔法少女か──アルマさんは飄々としているし、シズクは学級委員長っぽい雰囲気でバラエティ豊かだな。
他の魔法少女はどんな子だろうと部屋の中を見渡してみれば、更にもう二人ほど居た。
どこか柔らかい雰囲気の漂う優しそうなミルク色の髪の子と、気の強そうな顔で俺たちを睨み付けてくる赤髪ツインテールの子だ。
「ミユ控えなさい! 自己紹介が先でしょ!」
「あっれれ~? アリサさんってば震えてません? 腕を組んでるのも震えを隠す為だったり?」
「今はそんな事どうでもいいでしょ!」
「お二人共~、喧嘩は良くないですよぉ~」
なんか急に言い争いをしだした彼女達を指差し、アルマに視線を向けてみる。
「もう何日もここに閉じ込められていてね、ちょっとイライラが溜まっているんだ」
「何日も?」
って事は、彼女達がこの案件に手間取っている魔法少女達なのか? 俺と第二村人と合わせて少なくともこの小学校には七人の魔法少女が派遣されているのか。
最初のテディベアは本当に魔法少女に成り立ての俺でも何とか辛勝できた事を考えると……今回の難易度の高さが窺えるな。
七人も派遣されて一人は脱落、俺とシズクは逃げ回るしか出来ず、残りの四人も隠れ潜んでいるだけだしな。
「ミユと喧嘩しているのがアリサで、仲裁に入ったのがナナミだ。この中で最長なのがナナミの十四日で、続いてアリサの十日、七日の私、三日のミユだな。君たちは?」
「俺はついさっき来たばかりだ」
「私も同じよ」
どうやらシズクとほぼ同時に突入したらしい。
「君たちも経験したと思うけど、この学校には様子のおかしいゾンビ共で溢れている。そしてこの学校は少し空間の位相が違うみたいでね、みんな自分の担当マスコットと引き離されたみたいなんだ」
なるほど、ゾンビの溢れる別空間に飛ばされたって事か……だから極悪マスコットが急に居なくなったんだな。
あとアイツらやっぱりマスコットって認識なんだな。それと魔法少女一人につき一体は居るっぽい。
「何日も閉じ込められているって言ってたけど、その間の食料はどうしてたんだ?」
「この空間では何故かお腹は空かないし、眠くもならないんだ」
「……良いのか悪いのか分からないな」
「そうだね、単純にラッキーだと考える訳にはいかないだろう」
もう既に何かしらの攻撃を受けている可能性があるし、生命維持に必要な活動が不要という事は既にゾンビになり掛けているとも考えられる。
実際にゾンビに成り果ててしまうのかは分からないが、どちらにせよ早く解決した方が良いだろう。
「昼間はどうなるんだ?」
日にちが経過したと分かるって事は、この空間でも朝が来るって事だろう。
そしたら廃校って訳でもない、この小学校には多くの人間が行き来する筈だ。その時に出られたりはしないのだろうか。
「普通に生徒達が登校してくる。私達の存在に気付かないし、コチラからも干渉は出来ないけれどね」
「気付いて貰う事は出来ないのか」
「それに困った事に同じ日を繰り返すんだ」
「どういう事だ?」
「先ほど何日もここに閉じ込められていると言っただろう? けれど、現実世界では時間が経っていない様なんだ」
「どういう事よ」
「僕たちは全員同じ日にこの学校に突入してるんだ」
アルマ達がこの学校にやって来た日にちを詳しく聞いてみる。
「それって……」
「今日じゃない」
それはまさかの俺たちと同じ今日だった。
「何故バラつきがあるのかは分からない。今判明している事は全部で七つ──
一つ、この空間は隔離されていること
二つ、学校の至るところに大量のゾンビが徘徊していること
三つ、ゾンビに噛まれるとゾンビに成ること
四つ、魔法少女がゾンビに成ると魔法を使って来る場合があること
五つ、ゾンビ化から三日が経過すると消えてなくなること
六つ、ゾンビは倒しても復活すること
七つ、ゾンビの本体は昼間の学生の中に潜んでいること
──以上だ。」
色々と気になる点はあるが、先ず最初に聞くべきは最後のやつだな。
「どうやってゾンビの本体が学生に混じってると突き止めたんだ?」
「僕はGPで直感というスキルを得ていてね、まだまだ弱いから万能ではないけど、これで学生の中に潜んでいる事が分かったんだ」
「なるほどな」
俺はまだ借金が残ってるからアレだけど、こういう能力があると便利そうだな。
「ここに居るみんなの能力を開示して作戦を立てるしかねぇな」
「まぁ、それが現実的ね」
シズクも同意してくれた事だし、そういう訳で他の子にも声を掛けるか。
「ちょっといいかー?」
「き、気安く話し掛けないでよね!」
……え?
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