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第1章24話:部員たちの夜

県大会での興奮冷めやらぬ夜。

部員たちは、顧問の佐々木梓先生に今日の報告を終え、部室で片付けをしていた。普段の騒がしさとは打って変わって、部室には達成感と、少しの疲労が混じった静かな空気が流れている。


「まさか、本当にここまで来られるとはね」


フルートの田中優奈(たなかゆうな)は、譜面台を丁寧に拭きながら、しみじみと呟いた。 彼女の声は、フルートの音色のように優しく、穏やかだった。


「去年、ダメ金で悔しい思いをしたのが嘘みたいだよな」


クラリネットの近藤圭介(こんどうけいすけ)は、隣で楽器を片付けながら応じた。彼は安中中学校出身で、中学時代からこの部の低迷期を知っている。


「正直、今年のスタートも、どうなるかと思ったけどさ」


「今年は、友理と春菜が入ってきて、本当に変わったよな」

と、テナーサックスの、鮎原響(あゆはらひびき)は、壁にもたれかかって頷いた。彼の少しハスキーな声には、感嘆の響きがあった。


「特に友理のホルンは、まるで部の音色そのものを変えたみたいだ」

そこに、ユーフォニアムの鈴木恪(すずきつとむ)が、普段の落ち着いた口調で加わった。


「ああ、鳴瀬は規格外だ。だが、それだけじゃない。みんなが鳴瀬の音に触発されて、必死に食らいついていった結果だ。特に低音パートは、音の厚みが増したと先生も仰っていた」


「そうだね。恪くんの言う通りだよ。私たちも、去年は全然音がまとまらなくて、先生に 何度も怒られたもんね」


トロンボーンの水野美麻(みずのみあさ)は、苦笑しながら言った。 彼女の言葉は、これまでの苦労を物語っていた。


「今年は、みんなで粘り強く練習した成果が出たんだと思う」


パーカッションの松本武史(まつもとたけし)は、シンバルを磨きながら力強く言った。


「叩くたびに、音が響く手応えが去年とは全然違ったぜ!全国目指して、もっとド派手に盛り上げるぞ!」


チューバの源田力(げんだちから)は、武史の言葉に頷いた。


「全国へ行くには、俺たちの低音がもっと安定して、全体を支えなきゃな。力強く、そして響き渡る音で、この安中榛名を全国に轟かせたい」


弦バスの近藤朗(こんどうあきら)も、普段は物静かながら、この時ばかりは熱い眼差しで語った。


「去年の悔しさ、絶対晴らしたい。関東大会では、これまでで最高の演奏をする。俺たちの低音が、聴く人たちの心に深く響くように」


ホルンの松本悠人は、楽器を丁寧にケースにしまいながら、感慨深げに言った。


「友理が来てくれて、本当に感謝してる。正直、最初はついていくのが大変だったけれど、 あいつのおかげで、俺たちホルンパートは別次元に上がれた。関東大会では、必ず最高のホルンを響かせてみせる」


トランペットの藤本美音(ふじもとみお)は、少し興奮した面持ちで言った。


「トランペットパートも、春菜に引っ張られてすごく成長したと思う!関東大会では、私たちの音が、会場中に響き渡るように、もっと輝かせたい!」


部室の明かりの下、それぞれの楽器を片付けるパートリーダーたちの顔には、達成感と、そして関東大会への強い決意が満ちていた。互いの苦労を労い、未来への希望を語り合う彼らの会話は、まるでこれから奏でるハーモニーのようだった。

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