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心得その3「エルフの成長期を侮るな」

【タロ 生後一か月】


「タロちゃんは本当にかわいいわね~」

「えぇ、女の子に間違えそうなくらい」

「ほっほっほ、こりゃすごいじゃ」


 僕は神様への要望通り、エルフに生まれていた。僕は母エルフに抱かれながら、来客が僕の顔を覗き込んでくるのを見ている。今も村長夫妻が訪問してるらしかった。この二人の意見を聞くに、僕の作戦は成功しているのだろう。幼児らしくもう少し寝ることにしようと思う。


「ほっほっほ、これならば将来も安心じゃのー」



【タロ 生後六か月】


 そろそろ足腰もしっかりしてきた感じなので、今日は立ち上がって鏡を見てみようと思う。木の幹を使って作られた赤ちゃんベッドの上にいる。僕はそこから飛び降りて、何とか受け身を取りながら着地する。洗面所まで鏡の前にある木の枝につかまりながら立ち上がる。

(おぉ、これはこれは)

「タロちゃん! こんなところで何してるの!」

(しまった、見つかってしまった)

 僕はあっけなく連れ戻されてしまう。

「あれ⁈ 今タロちゃんたってた?」

エルフママが驚いている。

「ママ、だぁー」

「しゃべった⁈」

 その日の晩御飯はとても豪勢だった。



【タロ 六歳】


 僕はすっかり成長していた。

 この頃になると、森の精霊というのも認識できるようになっていて、庭の周りを精霊と駆け回りながら遊んでいた。僕の世界ではなかった光景過ぎて、僕は毎日精霊たちと遊びながら過ごしていた。鬼ごっこ、かけっこ、木登り、虫取り、、、、何処にいても精霊と一緒だった。


「いやぁー、今日も楽しかった」

「タロちゃん、明日はお隣さんの子供と会うからね」

「はーい」僕は家でも精霊と遊んでいた。

「タロちゃんとは幼馴染になるのかな」

「ふーん」

ん? 幼馴染?? は! ハーレム!!・・・




 僕が精霊遊びに夢中になってすっかり忘れていたハーレム計画。

 注意1.異世界は楽しすぎるくらいに別世界。本来の目的を忘れないように。



今日は幼馴染と会うらしい。幼馴染! 最高の言葉だ。やっと僕のハーレム計画が始まる。あれ、でも女の子とは限らないか。

「タロちゃん、この子がお隣のケイちゃんよ」

 僕が振り返ると、母の足元につかまりながら顔を見せたのはまごうことなきエルフであった。そして嬉しいことに、彼女は類を見ないほどの可愛いエルフであった。


(この年齢でもかわいいだけじゃなくて、綺麗って言葉も兼ね備えるんだなぁ)

 と、僕は心の中で思う。

 僕は今、ケイちゃんとともに積み木で遊んでいた。彼女が無言のままに積み上げていく所作を見ながら、ヒューマン族との違いを憶える。エルフは可愛いと綺麗の両端を兼ね備える。凄いなと感心するばかりである。

 遊ぶうちに気づいたが、彼女はとても内気? 淡泊? クール系? とにかく僕らは余り会話もせずに遊んでいた。彼女の喜ぶ顔が見たい! というか、笑顔が見たい! と無性に思ってなにか無いか思案中。。。


「ねぇ、楽しくない?」

 僕が積み木に飽きたと思ったのか、ケイが僕に聞いてくる。

「いや、とても楽しいよ。ケイちゃんも楽しい?」

「うん」

 彼女は楽しんでくれてるようだけど、何か喜ぶことはないかと思い、そういえば、彼女はエルフなんだから精霊を見れば喜ぶのではないかと思った。

「ケイちゃん、これ見て」

 そういって僕は、緑の精霊を呼び出した。精霊はケイに向かってお辞儀をし、一緒に積み木を手伝った。

 彼女は無言のままにまた、精霊と共に積み木で遊んだ。彼女は最後まであまりしゃべらなかったけど、彼女の精霊を見た時のきらきらした驚きと嬉しさに満ちた表情を頂きましたので、今日良しとしよう。


【タロ、十二歳】


ケイと出会ってから、六年が経っていた。

 彼女ともなかなかに絆を深められた! というわけでもなく、出会ったころからあまり変わらないという状況だった。初めて会った日からケイは良く僕の家に来た。それで精霊を見せてとか、僕が一緒に政令で遊んでるときに仲間に入れてほしいとよく言ってきたので、まあそれなりに同じ時間を過ごした。

 何関係が変わらないとは何事かと思った。彼女との関係値は友達である。たぶん、友達である。


 なのでここらで、僕は彼女に告白でもしようと思う。まずは彼女に意識してもらうとこからだ。まあ十二歳ともなれば、恋の一つや二つ、本でも読んでるから乙女心もくすぐるだろう。

 彼女が今日もうちに来て、一緒に外で遊ぶことになった。六年もたてば、彼女の可愛さと綺麗さもまたレベルが上がってる。一体どこまでレベルアップするのか。ショートだった金髪もいつの間にかロングとなっていて、どちらもよく似合っていた。


「タロ、今日は何して遊ぶ?」彼女の綺麗な声で言う。

「ケイ、今日は大事な話があるんだ」

「ん、なに」

「ケイ、君が好きだ。僕と付き合ってくれない?」

「好き? 付き合う? なにそれ」

「ん? 恋したって意味」

「恋? 新しい精霊?」

「恋を知らない?」

「知らない。教えて? 新しい精霊?」

 彼女は恋を新しい精霊だと思って僕に教えてほしいと懇願する。あれ? 予定と違う。断れることまでは想像してたけど、まだ恋を知らないか。


 その日はなんとなくごまかして、適当に遊んだ後、ケイを家に帰した。

 僕はあることを思って、夕食の準備をしている母のところへ行った。


「母さん」

「ん? どうしたの?」

「母さんって今何歳だっけ?」

「えぇー急にどうしたのよ」

「ちょっと気になって、、」

「今は四百十二歳よ」

 母は全くそうは見えない顔で言う。

「母さん、初恋はいつ?」

「もぉー、たしか三百年前の事だったかなぁー。きゃーもう、恥ずかしいわ」と顔を赤らめる。

「ちょっと待って、母さんて、いつ結婚したんだっけ」

「明日で丁度百周年ね!」

「そう、ありがとう」

 僕は自室に戻ることにした。

「タロ、もうすぐ夕食だからね!」



 みんな、エルフ転生には落とし穴がある。

 エルフは長寿ゆえに時間の流れが襲い。いや、遅すぎる。

 母は百歳で恋をして、三百歳で結婚。

 待ってくれ、という事は、ハーレムを作るのにあと百年以上は待たないという事?

 そういえば学校も始まらないしおかしいと思ってたんだ! くそ! エルフの成長期を考慮に入れてなかった! どうにかせねば!!


 こうして僕のハーレム計画は初手で頓挫した。これから先の物語は、百年も待てない主人公が、どうにかして幼馴染のエルフに恋をさせる物語です。皆さん、異世界転生には気を付けましょう。そして、エルフの成長期は侮るな!

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