エクストラ「あの頃の私達は何を夢見る?」その8
その日からユカリちゃんに毎日こう教えた。
“誰よりも素直で優しい人間を目指せ”と豪語した私にユカリちゃんは首を傾げた。
子どもにはまだ理解出来ないかもしれないが兎にも角にも先ずは“素直”であること、それと他者に愛される痛みを判り慈しむ“優しい人間”にする。
初めは何で?と録音機のように聞き返されたが数年経つといつの間にか少しずつ分かるようになった。
興味津々の彼女は沢山質問したり実践したりアスカも加えて笑ったり遊んだりバカ騒ぎしたりとまるで本当の家族のような輪に私は癒され、励まされ幸せだった。
学校にも行かせようとしたが金が足りないから【魔導学院】に入れる歳になったらユカリちゃんも外の世界を体験してもらおう。
この娘は凄い、買い物で商業区に行くと色んな人間に声を掛け、道を教えてもらったり不自由な人間には率先して助け、虐められてる人間がいたら大声を上げて黙らせる。
私の知ってるユカリちゃんは最早ドコにも存在せず、純粋無垢で優しく正しい少女になった。
知り合いの商業区の人達からは少しずつ愛され、同い年から上も下も仲の良い知り合いを沢山増えたと聞かされた時はアスカと二人で驚いていた。
だがそんな娘だけど唯一弱点は圧倒的学力が足りずバカ丸出しの女の子に育ってしまい基本何言っても通じないし冗談の区別も分からない、語句も無理数字も無理社会や政治は以ての外。
私は少しでいいから勉強させたいが全く興味無く五分で飽きる。
私は将来的に考え【魔導学院】で少し勉学に励んでもらおうとしたが学費も入籍するのも高く金が要る。
このままだと検問所の所長になるのは五年は必要、私は自分を首を絞めて二人にはのんびり暮らしてもらおうと努力する。
そんなある日、ユカリちゃんは日々疲労困憊の私に声を掛けた。
「どうして自分を犠牲にするの?」
不思議だったあの頃のように久し振りのユカリちゃんの質問に私は体を壊しながらも笑った。
「アンタを学校に行かせるためよ」
ユカリちゃんはまた質問する。
「学校は義務付けされてないよ?」
「アンタがバカだからそうしないと頑張らないでしょ?」
「あう・・・でもお金持ってないよ?」
その言葉に私は苦しみながら自分を棄てた。
「私の貯めてた貯金、全部突っ込んで入籍させる、学費も私が払う、生活費も私が出すからアンタは学んできなさい“外の世界”をね♪」
その言葉にユカリちゃんは申し訳なく首を振ったので脳天チョップする。
「拒否はさせない、私達は“家族”よお姉さんの話は聞くもんよ」
ユカリちゃんはこうして無理矢理学校に行かせることになった。
私の言葉がそんなに嬉しかったのか初めて彼女は泣いた。
私は泣いたあの子を胸の中で優しく支えながら目頭に熱が入り我慢した。
引き取って良かったってこんなに嬉しいものだと知らなかった。
私は一番信頼出来るアスカに頭を下げてユカリちゃんを守って貰うことにした。
二人分のお小遣いも上げないと、最近内蔵の調子が悪いけど二人の為なら何度だって血を吐いてやる。
三人が築き上げてきた絆は紡がれ現在の私達がある。今では冒険者を立ち上げてるなんて思いもしなかったわ。




