エクストラ「あの頃の私達は何を夢見る?」その7
☆★☆★ 〜数年前
ユカリちゃんと出会って一年、彼女にどう接すれば良いのか言葉で理解しようとするが幼い相手に心理戦なんかしても空回りするだけで失策だった。
なので一番単純に彼女の行動を見て話題を模索することにした。
今日は各々自由時間、アスカはお嬢様として礼儀作法を行いユカリちゃんはと言うと庭のウッドデッキで一人丸まりながら空を眺めている。
言葉が掛けにくく危うく傷つけてしまいそうになるので駄目だった。
彼女の意味不明複雑怪奇理解不能の行動に日々頭痛を抱えていると、今日は何とお絵描きしていた。
私はその光景にすかさず近寄り声を掛ける。
「ちょっと!?」
人と触れ合うのが苦手なのか来た途端に絵を隠してしまった。
「・・・」
相変わらず無表情で無口、拒絶とはいかないけど何だか落ち込む。
「ご、ごめんなさい・・・悪気は無いの」
私も絵で伝えようと描くと意外にもユカリちゃんはちょこちょこ見に来た。
「・・・ふふ」
笑った!?このクソガキ!どうせ下手くそよ!と言ってやりたいけど笑った顔があまりにも可愛らしく照れ隠しに文句言ってやった。
「アンタの見せなさいよ」
恥ずかしくてユカリちゃんの絵を引っ手繰ると私より下手くそに声が漏れた。
「ぷっ!!アンタも下手じゃない♪」
ユカリちゃんは顔面真っ赤にして小さい体で跳ねながら取り返そうとしたので思い切り抱きしめてやった。
「一緒に笑いましょう♪」
「え・・・」
ぎゅっと抱き締めるとユカリちゃんはとても嬉しそうに強く返してくれた。
少しだけこの娘の気持ちが分かった気がする。この娘に必要なのは触れ合いと愛の接し方だ、だがそれを知ると嫌な予感がして別の意味で嫌だった。
だってそれは、本来親の役目だから・・・最初から拒絶するのは怖いのではなく解らないからだと。
私は少しずつ距離を近付け気付けばユカリちゃんも私とアスカの輪に溶けていった。




