エクストラ「あの頃の私達は何を夢見る?」その4
私は親を見つけ、近未来区にいると知り合いに耳寄り情報を頼りに近未来区に向かった。
正面からいくとパスポートとか何やら面倒くさい事を言われそうだから抜け道探して密告者のように中に入った。
情報を頼りに親を見つけた私は何だか幸せそうにお腹を撫でる妊婦と父親に声を掛けた。
「こんにちわ〜」
私は仕事のフリをして配達員の格好で来たので怪しまれることは無かった。
ユカリちゃんと同じ茶髪のルビー色の瞳をした妊婦と世間話をする。
「お子さんもうすぐなんですか?」
「えぇ〜そうなのよ♪初めての子供だから育てられるか不安で♪」
・・・は?
「僕達の初めての子供だというのにこいつったら嬉しそうでさ・・・困っちゃうよ」
・・・何言ってるの?
何で?嘘を?こっちは確かな情報で来てるのよ?
ユカリちゃんは、アンタ達の娘じゃないの?
「あれ?さっき近くのおばさまから聞いた話だと二人目では? 」
少し危険だけどお願い、ユカリちゃんはアンタの娘って言いなさい!
だがその懇意は簡単に砕けた。
「おいおい、お嬢さん?僕達の娘はこの子が初めてだよ?」
「そうよ〜♪この子って医療施設のお姉さんから聞いたら【天賦の才能に満ちた幼児】だって!産まれてくるのが楽しみ!」
私は硝子が壊れたようにブリキの人形のように親子の惚気話を聞かされ挨拶を交して帰って行った。
あの時の目、怖かった。にこやかな雰囲気なのに怒りを感じた。
私は自分の帰路まで帰り家の前で膝から崩れ落ちた。
来る前からふらついていたけどもう限界。
玄関先からユカリちゃんが迎えに来てくれた、私を見て慌てふためきながらも深呼吸をして恐る恐る近寄って来る。
「お姉さん・・・どうしたの?」
怯えてはいるが朗らかな表情に私は力いっぱい抱き寄せてぎゅっとしたまま離さない。
「ごめん、親に何も言えなかった」
「・・・私の?」
唇を震わせながら今言える精一杯の言葉で伝える。何かを悟ったユカリちゃんは少し抵抗はしたがゆっくりと両手で背中を包んだ。
「畜生・・・何ビビってんのよ私・・・!いつもみたいに大声上げなさいよ。大人の威圧に簡単に慄いて逃げてどうすんのよ・・・この娘は誰が守るのよ!」
振り上げた拳を下ろせない状況の中、私はユカリちゃんをどうすべきか分からない、親と同じく捨てる?そんな事出来ない!
泣きながら必死に考えるも整理がつかずそんな時、ユカリちゃんは精一杯の下手くそ笑顔を見せた。
「わたしのこと、そんなにだいじなんだ・・・ありがとう」
ユカリちゃんの言葉はガキなのに大人びていて達観している。精神的に言うなら彼女の方が上かもしれない。
「・・・絶対守る」
「?」
「あのクソ親が捨てようが馬鹿にされようがアンタは私が育てる・・・捨ていい子どもなんて存在しないのよ!」
私は涙を拭いてユカリちゃんの手を握る、いまいち理解出来ていないユカリちゃんに言葉を伝えた。
「私が母親になる、中途半端な躾とか生温いことしないから覚悟なさい」
「な、なんで?」
「うるさい、口答えしない!アンタを絶対に純粋無垢な素直で優しい大人に育てるわ」
「え、えぇ・・・」
こうして始まったユカリちゃんを矯正させる私の目標は長い年月を掛けて貧弱脆弱な娘を変えることにした。
次親を見つけたら絶対ぶん殴る、子を捨てるなんてタブーを犯した奴は私が粛清してやる。
首洗って待ってなさいよクソが!




