「お酒のムーディーに誘われて」
ここは私の経営する酒場では無く近未来区の酒場、知る方ではバーと呼ばれてるらしくとても雰囲気が大人向けのこと。
中に入ると近代化が進む近未来区とはかけ離れた殆どが木材で作られた内装でカウンターには手の込んだお洒落な白銀のテーブルクロスが掛けられ椅子は恐らくテーブルチェアでしょうか?
上着を脱ぐとカウンターにいるダンディな叔父様は近くに目を向ける方向を目で追って確認するとポールハンガーを差していた。
視線を戻すと一礼してごゆっくりと軽く会釈する。
私は上着を掛けて目の前にある椅子に腰を掛けて辺りをゆっくり眺める。
音楽が聴こえる、目を向けるとアンティークな蓄音機から心を落ち着かせるクラシックな曲が流れている。一時の心地良い世界に包まれまるでララバイを聴いてるような不思議な気分になります。
時間を刻む程酔ってしまいそうになるので
たまに通うバーの中で毎回私はハンターを頼みます。
作り手によって変化する二つの味をどっちになるか予想して遊ぶ事が少々楽しみでもあります。
ダンディですが手つきを見ると繊細で流石に手練れた業、もしかしたら私の好みを察知してるかもしれません、ここは【甘い】でいきましょう。
少し時が経つと出されたのはストロベリームーンのような鮮やかな色をした液体がカクテルグラスを赤色に染め上げています。
今回は私の勝ちみたいです、予想通りの自分の決め事に悦に浸った瞬間、私は口の中に注いだモノが反旗を翻す。
やや辛めの味!?
私は思わぬ失態に叔父様は微笑みながら告げた。
「お嬢さん、酒は口にしてからが本番ですよ?でないと千変万化の味に飲まれてしまいますからね」
成る程、私も少し顔が効きすぎたかもしれません。本質を忘れてしまうなんて猛省せねばいけません。
「すみません、もう一杯お願いできますか?」
「喜んで作りましょう、ノアお嬢さん」
また一つ楽しみが増えてしまいました。予想するのも楽しいですが、葉が変わり行く姿のような一時もまた一興なのだと改めて好きになりました。




