プロローグ
夢はいつもステーキの匂いがする。幸せな夢も、恐ろしい夢も、いつもステーキの匂いがくっついてきた。
でも、ステーキを食べる夢は16年生きてきて初めてだ…
些細な事だが不思議に思っていると、目の前に少年が現れた。僕と同じくらいの歳だろうか。深い青色の瞳が、ネイビーの髪によく似合ってる。
「相席、いいか?」
突然そう言われたので驚きながら、
「どうぞ、、」と言った。
初対面の相手に敬語ナシってなかなかのやつだな…
でもまぁ、そんなことは言えないから
「あ、メニュー、さっきお店の人に回収されちゃったんで、持ってきてもらいますね。」と気を遣わせると、
「必要ない。」
「え?」
「俺はお前を、連行しに来たからな。」
連行、、レンコン、、連行?!
「音居春翔、エネルギー使用法違反で逮捕する。」
逮捕、、?僕が?
い、いや、落ち着け。これは夢!夢だ!こんな変な夢、
早く、、
「夢ではない。正確に言えば、夢を通してお前に逮捕を伝えに来た。起きればすぐにでも、連行させてもらう。」
?!心が読まれてる?いや、今はそんな事どうでも良い。
「じゃあ、エネルギー使用法ってなんだよ!そんな法律聞いたことない!」
「こちらの法律だ。詳細は後で話す。お前も、夢の中で会話をするのは負担になるだろう。」
「では、また後で。音居春翔。」
「ちょっと!待て!説明くらい…」
「!」
周りには誰もおらず、教室に僕1人だった。
そうか。僕、授業で寝ちゃって、その時にあの変な夢を見たのか。あいつら、起こしてくれても良かったのに、、
あぁもう、早く帰ろう…
「何処に行く?」
後ろから聞いた事がある声が聞こえた。振り返ると、やっぱり、夢の中の人がそこに居た。
「夢ではないと言ったはずだ。まさか逃げようとしたのか?」
違う、夢にも現実だったとは思ったなかったんだよ…
夢だけにね…
「行くぞ、時間があまりない。」
あぁ、本当に逮捕される!何もしてないのに、よく分からないところに連れて行かれそうだ。
「ま、待って!…ください!」
「納得いかないです!僕、罪を犯すような事はしてないです!」
「だから、後程説明すると言って…」
「じゃあせめて!」
「クラスメイトとか親とかに、挨拶くらいさせてください。」
「あぁ、その事なら、もうすでにお前を知っている者は全員排除したから大丈夫だ。」
排除?排除って消した、殺したって事?
僕の友達、家族、知り合い、全員?
軽い、ものすごく軽い。
怒りでも驚きでも落胆でもないこの感情は何だ?
「…仮に僕の罪が冤罪だったら、僕を帰してくれますか?」
「あぁ、冤罪ならな。」
「冤罪だったら僕を知っている人達はどうなるんですか?」
「俺は知らない。俺は先生の指示に従うだけだ。」
やるしかない。
この人の言うことが本当ならもう此処に、僕の居場所はない。行かない道はないんだ。
その〝先生〟って人に直談判だ。
「行きましょう。先生に、会いに行きに。」