白猫あらわる
「 ―― 『天災』じゃ、なかったらどうなんだよ?」
スザクがどかりと椅子に戻り、聞く。
大臣たちは顔を見合わせる。
扇子をばさりとひろげたセリが、セイテツよ、と微笑みかけた。
「 ―― おまえが受けたのだから、おまえが見にゆけばよい」
「いや・・・、セリちゃん、でもほら、北ってもともと、すっげえ遠いし」
「良かったなあ。アラシという、至極つかえるのと知り合えて」
その、《天の上の動物》と知り合ったのは、半年ほど前だ。
「アラシは、おれたちなんて簡単に乗せてくれないって。呼んでも来る時と来ないときがあるしさ」
「なめられてんだろ」
「っ!み、ミカド?」
突然、みなで集まっていた東屋のテーブルの上に真っ白い猫が現れ、セイテツにむかって、てめえはほんと女に甘いな、と鼻を鳴らし、しゃべりだす。
「 わしは、北の山に住む《ヒト》がどうなろうと知ったこっちゃねえがな、 ―― 高山のジュフクが、北の山神に祈祷が届かねえと知らせてきやがったぞ」
「山神になにかあったのか?」
腰を浮かしたセイテツに、あったから届かねえんだろ、と寝そべる猫は白い尾をふった。
下界にある山は、それぞれにつかわされた『山神』が守っているのだが、その『山神』は、高山の徳の高い坊主たちが『術』でつくりだした神だ。
ほんらい山は、自然と『力』を湧き出す場所で、守りもおかずそのままにしておけば『力』がどんどんと溜まってゆき、あっという間に《妖物》が集まる場所となってしまう。