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かなしい
残虐表現あり。ご注意を
あっけないほどのできごとのあと、そこには、子どもだけが残った。
「と、トクさん!まて!」
影をはらっておろした刀を手に、ゆっくりと子どもに寄る男を、セイテツは必死でとめようとした。
だが、止まることもなく、子どもの前にトクジは立った。
「―― こえエか?」
涙で目をぬらした子どもは、顔をあげ、首をふる。
「・・・つらいか?」
子どもは口をしめてから、か細い声でこたえた。
「 か・・なし・・い・・・ 」
「―― ・・・ そうか。 ・・・おれもだ」
空いた手をのばすと、子どもの頭をつかむように抱え込み、引いて腹におしつけた。
「――― あっ」
気づいたセイテツが声をあげるが、刀はすでに、 ―― 子どもの体をつらぬいている。
トクジは身をかがめ、子どもの頭にじかに経をふきこんだ。




