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北から来たオユキ



 



 セイテツがその話をきいたのは、行きつけの遊び茶屋に、新しい女が入ったからだった。



 


 寒さ厳しい北から来たと言うその女はひどく無口だという噂で、色は白く唇は紅をつけずとも赤い色味の、すんなりとした細面ほそおもての女だった。



 セイテツがなじみの女に文句を言われながらも、その女を呼べば、 ―― どうにも固い。

 好きでこの商売をしているのではないのが、全身からにじみでている。


 しかたがないのでセイテツは、女に酒をすすめ、なにか唄をうたってみてほしい、と頼んだ。



 女は、少し眼をふせ、考えるようにしてから、ふいに、音を発した。

 はじめは伏した顔で小さく。

 そのうちに、どこか遠くをながめ。


 最後は、セイテツの顔を見ながら、涙を流しながらうたった。



 いつの間にやら部屋の入り口には唄にききほれた暇な者たちがつめより、終わったとたんにやんやの喝采。


 それから女は、お座敷に出向く芸子に転向させられた。





 その《オユキ》が、セイテツに礼がしたいと一晩の相手をし、事をおえたあとに、腕に抱かれながら口にしたのだ。



 このままでは、里の人間はみな、死んでしまうかもしれない、と。



 ひとつまえの冬から、なんだかおかしかったと女は言った。


 沢のゆきどけ水が極端にすくなく、春になっても田にじゅうぶんな水がひけなかった。

 夏だというのに涼しい日が続き、稲も野菜も育たなかった。

 そのまま秋になったらやたらと雨が多く、気づけばそのまま冬になっていた。




  ――― 食べるもんが、なんも、ねエんです




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