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むかし《北の将軍の息子》であった
「 わたしも、なるべく『オニ』に喰われないよう気張ってみたんだが、なにしろ『気』の具合が、良くなかったので、とらわれやすくてなってて、このざまだ」
トクジに斬られた両腕をみせて笑い、しかしすごいなと再度トクジをほめた。
「―― 腕の筋を斬られても文句はないと思っていたのだが、ずいぶんと気をつかってもらったようだ。 それに、この『目』はスザクとセイテツには見せたことがなかったから、そのまま二人に《とどめ》を刺されても、いいだろうと思ってた」
いつものおだやかな声でそんなことを言われても、やはり、セイテツは何も言えない。
黙ったままの二人を交互にみたトクジが、身を乗り出した。
「 あんた、 むかーし、《北の将軍の息子》だった人だろ?」
知ってるのか?とサモンが嬉しそうに座りなおす。
おれはこう見えて、元坊主だからな、とトクジは頬の傷をかき、にやりとして言った。




