表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/91

山隠し


 背に負った、おそろしく大型の刀が、かちかちと震えだす。


 寒くてはがねまで震えるかよ、とアラシが柔い羽根で覆われた翼を振った。



「・・・それならよいがな ――― 斬りたいものがあるようだ」

 北の奥にある山の連なりを眺める。


 雪をいただく山の半分上は、濃くまとわりつく濁った灰色の『雲』の中だ。



「わかっておろうが、あれは、『雲』ではないぞ」

 アラシが機嫌も悪く言う。


 こんな季節のこの風の中、山にあれほどの雲がかかるわけもない。



 この北の荒れた風が気に入らぬアラシは、荒く鼻息をつく。

 わかっているというように、サモンが硬い首を撫でてやる。


「 あれは『山隠やまかくし』だ。 ―― 高山たかやまの坊主か、剣山つるぎやまのテングでなければつかわぬ術だが・・・」


 それは、高山か剣山で、なにか大事な祭事をするときにだけつかうものだ。


 この時期にそんな祭事があるとは聞いていないし、そもそも、《隠した》ままでいるわけもない。



 だとしたら、と、サモンは薄暗い雲をみあげ、しばし黙った。いつまでも口を開かない男に代わり、この世のものでない動物が首をもたげた。



     「北のハゴロモ山に、《妖物ようぶつ》が棲みついたかよ」



 アラシの言葉に口元を締めた男が、背にある刀をなだめるようにつかみ、眼にもとまらぬ速さで抜いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ