雪解け水
『おとぎばなし』シリーズまえシュンカが宮に来る前のはなし。
主に顔に傷のある男と壱の宮の大臣の話となっておりますので、シリーズ別枠、ということでごらんください。。。。
さらさらと流れる水を眼に、季節がようやくめぐるのだと、肌に射したうすい陽の色を、確かめる。
厚い雲の切れた間に、久しく目にしていなかった空の色もある。
だが、吐く息も、辺りの景色もまだ、白いままだ。
――― こっがらあったかくなって、葉っぱがワサってでてきてな、
女の白い手は赤い。
雪が溶けてできたその水は、ひどくきれいで、ひどくつめたい。
――― そしたら花が、ほろほろさいてよ、
嬉しそうにひたした手の先から、赤い水が流れてゆく。
――― 草だって川だって起きっから、生きモンも起きンのさ
まだ、小さな流れの川は、あっという間に赤く染まり、あっという間にそれを流す。
女は一心に、その手についた血を洗う。
血は流れていったのに、女の白い手は、水の冷たさで、
―― やはり、赤くもどるのだ。
――― そしたらもっと、食うもんも、とれっからな
しゃがみこんだそば、赤くなった雪。