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ChocolateDragon  作者: 珈琲屋
8/16

5

つくづく自分はダメ人間だなぁ…と、思いました。

血にまみれた真っ赤な世界で、黒い髪の少女がこちらに向かって両腕を広げ、必死に何かを叫んでいた。


『…!?―ッ!!―ぁ―!!』


しかし、彼には聞こえない…届かない。


おもむろに彼の右腕が振り上げられる。


彼の視界の隅に、恐ろしい大鎌のような鉤爪が生え、白く煌めく鱗に覆われた手が見えた。


その鉤爪も鱗も、たった今引き裂き、握りつぶし、引きちぎったモノの体液で赤く染まっている。


少女は相変わらずこちらに何か叫び、まるで何かを抱き留めようとしているように、両腕を広げている。


―そして


彼の右腕が、付着物を撒き散らしつつ彼女に向かって振り下ろされた。


最後の一瞬、腕を振り下ろした彼の目にキラリと光るモノが映った。


それは彼女の右腕にはめられた銀の腕輪。


その凛とした輝きを目にした彼は正気を取り戻したが ―


― 既に遅かった


グシャリ と、右手の鉤爪と、怪力が人体を破壊した感触と音が、右手と耳朶に伝わってくる。


『グッ…ゴオオォォォォォオ』


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「―ォォォォォぉぉおッ!!………がっ…ハァハァ…ッ!?」



真堂朝輝は自らの声で目が覚めた。


「朝輝さま」


いつの間にか白雪が朝輝の大きなベッドの上に乗り出し、朝輝の手をその白くて細い手指で包み込むように握っていた。


ひんやりとした白雪の手が心地いい。


「黒江さん…びっくりしたでしょ?」


「………」


「なにせそっくりだからね…」


朝輝があれから2年間、強力な精神安定用の魔術薬を飲んでいるにも関わらず、特に今年4月からほぼ毎夜のようにうなされている理由が、今日白雪にもわかった。


「だから…ですか。あんなに必死に彼女を助けようとしたのは」


白雪は気付いていた。


彼女と対面する朝輝が怯えていることに。

朝輝が戸惑っていることに。

朝輝の中で激しいものが渦巻いていることに。


ティーカップを持つ手も震えていた。


彼女に何度も謝っていた。


「4月に同じクラスになって初めて彼女と会った時…僕は夢を見てるのかと思った」


額にじっとりと汗をかき、白雪に手を握られたまま朝輝は呟くように続ける。


「でも現実だった…彼女が生き返ったのかとも思った…でも…彼女は…彼女は………!!」


ベッドに横たわったまま、朝輝は涙を流していた。


「朝輝さま」


制止するように、白雪が朝輝の手を更に強く握りしめる。


「あれからまだ2年です。心の傷を癒やすには短すぎる」


ベッドに身を乗り出し、朝輝の手を握っていた白雪が、片方の手を離して、その手を朝輝の頬に優しく当てた。


あれだけのことがあったのだ。

気が狂っていないだけいい。


「いや…」


頬に当てられた白雪の手に朝輝が片手を重ねた。


朝輝の手はいつも熱い。


「もう2年…だよ」


真夏の昼下がりの太陽光が、白いレースのカーテンを通して程よく室内を照らしていた。


時刻は午後3時30分過ぎ。


あの儀式の直後に朝輝は気絶したらしい。


今もどうしようもない倦怠感に体が支配されていた。


何せ根こそぎ魔力を持って行かれたのだから仕方がないか。


ふぅ、と息を吐いて、朝輝がベッドから上体を起こした。


「もう、平気ですか?」


白雪が無表情だが心配そうな様子で聞いてくる。


「あぁ、大丈夫」


それより、と朝輝はまだ涙の名残がある顔で、白雪に少し笑って見せた。


「今日から忙しくなるよ」


「承知」


これより、力を失った少年と、力を手に入れた少女の闘いが始まる。


ご意見、ご感想お待ちしておりますm(_ _)m

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