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⑥ 現状できる投票率が上がる方法

〇記号式にする


質問者:どういう風にすれば投票率が今でも上がるのでしょうか?



筆者:まず1つ目として挙げたいのは、投票する際「記名式」ではなく「記号式」にするということです。



質問者:どういうことですか?



筆者:世界的に見ると日本のように政党名や候補者名を文字で書かせるというところは少ないんです。立候補している人の名前をズラっと印刷してあるのを選ぶと言った形式が多いようです。


 ドイツやイギリス、カナダ、メキシコは自分が入れたい人にチェックマークを付ける方式、

 トルコ、ネパールはスタンプを押す方式、

 ブラジルでは投票所の機械でボタンを押す方式、

 インドネシアでは穴を開ける方式。

 ベトナムでは先述した通り定員以上の人数が立候補している場合、定員数を超える人の名前を二重線で消し、定員の数だけ「信任」する方式、

 となっています。


※アメリカは州ごとに投票方法は異なります。マークシート方式で一覧から選ぶ形式が多いのではないかと思います。



質問者:日本でしか投票したことが無いので分かりませんでした……。



筆者:世界では識字率が低い国もあることから、このような対応を取られているんですね。


 日本の場合でも名前を書き間違えることや、依然として「民主党」と比例代表で書くケースも多いようですので(2021年衆院選の際に「民主党」と書かれた票は、362万票)、

 効果はあるのではないかなと思いますね。


選挙に行くハードルを「記名式」であることで多少は上げているのではないかと思います。



質問者:「記号式」にする上で法律上は何か改正が必要とかは無いんですか?



筆者:法律的には可能ですよ。1970年の公職選挙法改正では記号式投票が地方議会議員選挙でも可能になっており、記号式投票にするか否かは、自治体の判断にゆだねられる状況になったのです。ただ、現状では都道府県では5件、市町村では3市しか条例が通っていないので全国的には難しいです。


 国政選挙に関しては1994年に公職選挙法が改正され、衆議院選を従来の中選挙区制から現在の小選挙区比例代表並立制へ変更することと共に記号式投票が1994年の選挙でのみ導入されたのです。



質問者:どうして1回しか日本では導入されなかったのですか?



筆者:デメリットとして大きく3つありまして、

1 最初に名前が書かれているものが有利になる順序効果が発生する可能性がある。

2 投票先が大量に存在する場合、投票者が投票先をすぐに選ぶことが難しく手間がかかる。

3 選挙管理委員会の事務負担が大幅に増える


 この3つですね。特に3が絶大で、候補者数が多くなれば多くなるほど専用の投票用紙が大きくなるか長くなります。

 投票用紙が大きくなれば、作るだけでなく保管するのにも大変になりますし、

その費用の補填のために候補者が立候補に費用が掛かるようになる金額が増えると、

 お金持ちがより当選しやすくなってしまい歪になってしまう可能性があります。


 また、参議院の全国比例代表では候補者数が多いのでまず不可能になります。



質問者:なるほど……手間と費用に課題があるのですね。



筆者: ただ、メリットとしては無効票がかなり減ることが期待されますし、名前を一覧から転記ミスをする可能性が減ります。


 また用紙は今まで通りにして、立候補者に仮番号をふり、その番号を書くといった方式だと、これらの課題は解消されるかなと思いますね。(しかも、今まで通り名前を書いても有効票)



質問者:なるほど、その方式は期待できるかもしれませんね。




〇期日前投票所を増やす又は身近な場所に設置する


筆者:次に、投票所を開設する場所について考えてみようと思います。



質問者:投票所は学校など公共の場所ばかりですよね。



筆者:そこに行くのにハードルを感じる人が特に若い層で多いようです。 


総務省「第24回参議院選挙 発表資料 「4投票所関係」「7年齢別投票状況について」」のデータを見ますと


 有権者の利便性が高い場所への期日前投票所の平均設置数を計算すると、10代では投票率が上位のグループ程、利便性が高い場所への期日前投票所の設置数が多い(平均より1か所多い)ことが見て取れます。一方、全年代の投票率からは同じ傾向は見て取れません。



 また、明るい選挙推進協会による衆院選の意識調査において、投票を棄権した人に「どういう状況だったら投票に行こうと思うか」を尋ねた設問で、4割弱の人が「駅やショッピングセンター・コンビニなどでも投票出来たら」と回答していることも、利便性の高い場所への投票所の設置を後押しする材料となりそうです。



質問者:投票所を増やすことが投票率の向上にどうして繋がるのでしょうか?



筆者:純粋に選挙を今やっていることを分かっていない人やどこで投票したらいいのか分からない人に対しての普及活動に自ずとつながります。


 ただ、場所を増やすと人員と予算がかかるので、同じ投票所数なら、より利便性の高い場所に期日前投票場所にした方が良いと思います 


※重複投票防止などのセキュリティの都合上この「共通投票所」は設置にお金がかかるようです。


 前回挙げた投票率世界一のベトナムでも会社や学校、マンションのロビーなどにも設置されることから手軽に投票できることがあります。

 他にも投票時間が朝5時から夜9時までと日本より長かったりします。これも費用面の問題がありますから一概に投票時間については何とも言えませんね。



質問者:期日前投票については色々な改良案がありそうですね。



筆者:特に若い方の投票率向上については色々行ってもらいたいです。

『若者の投票率アップへ工夫次々 茨城』 2021年10月30日 朝日新聞デジタルの記事によりますと、

『日立市選挙管理委員会が今回初めて実施した「移動期日前投票所」。日替わりで投票所を設ける試みで、27日から市内8校を巡回している。


(中略)


 こうした試みを学校も歓迎する。同校の後藤光彦校長は「(投票日の)日曜日はアルバイトをしている子も多いので、学校で投票できるのは意義がある」と話した。』


 というのがありました。

 学生さんと言えど日曜日に必ずしも投票に行けなかったりしますから、授業後に投票所が来てくれるのは有り難いみたいです。



質問者:なるほど、とにかく身近に選挙がなってくれることが大事なんですね。



筆者:理想としては以前見てきたようにオーストラリアやスウェーデンのように家族単位での投票行動に行くことが望ましいと言えます。

 

 しかし、文化面での改善に関しては長期的な教育が必要になっていきますのでもう少し別の面から切り込んでいく必要があるかなと思います。



質問者:どう言うことが大事なんでしょうか?



筆者:まずは選挙に行くことによる特典を付けることですね。現在でも投票を行うことで一部の飲食店などで割引を受けられる“選挙割”と言ったモノが存在するらしいですが僕はこの一連の流れを調べているうちで初めて知りました(笑)。



質問者:確かに私も初めて知りました……。



筆者:そう言う特典の周知も必要ですが、ドイツでは面白い取り組みがあります。


ドイツでは普段は入ることができない特別な場所に投票箱を設置したということのようです。

 ルフトハンザのフライトトレーニングセンター、

最新音楽ホール「エルプフィルハーモニー・ハンブルク」のステージ上、

さらにはドイツ強豪サッカーチーム「ボルシア・ドルトムント」の控室などです。


 これら、それぞれのファンたちにとっての憧れの場所に、選挙に参加することで入ることができるという切口なので、普段は選挙にいかない人たちのなかでも、投票したいという人も、

「ここで投票することができる」と言うことを知ることで興味を持つようになると思います。



質問者:確かにそれは面白い取り組みですね。



筆者:投票に行かないと損をするという(既得権益者がより権益を増強する)構造があまり浸透していない以上は、

 投票することでプラスになる方向をプッシュしていく必要があるかなと思います。

 勿論、それぞれのスポーツなどの団体の許可が必要になっていくと思いますけどね。



質問者:様々な取り組みが今の体制でもできる可能性があるのですね。



筆者:そうですね。もうちょっと自治体を中心に頑張って取り組んで欲しいものです。


 次に、そもそも投票に行こうにも投票したいと思える政治家がいない……という状況を打破するために、

 選挙の仕組みを変更することによってなるべく投票したい候補所を“作り出す”にはどうしたらいいのか検討していこうと思います。

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