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④ 「選挙へ投票すること」の法律での義務化について

筆者:次に、選挙を法律で事実上義務化している国を投票率と共に見ていこうと思います。



質問者:事実上義務化している国家と言うのはどういうことですか?



筆者:具体的に言うなら、選挙権があるにも拘らず、病気などの投票に行くことができない特別な理由が無い限り、投票に行かない人に対して罰金を取ると言う制度がある国家のことですね。


 具体的に見ていきましょう。


 まずは、本稿の②でも挙げましたスイスです。これは一番安い罰金で3スイス・フラン(400円弱)程です。

 投票率で見た場合ではこれから挙げる中で一番低いのですが、この罰金が科せられているのは、僕が調べたところシャフハウゼン州ぐらいで、ここは65%とスイス全体の平均と比べて20%高いと言うことのようです。



質問者:400円でもそれなりの物は買えますからね。選挙そのものは無料で出来ますから国の平均と比べて20%ものの差になるんでしょうね。



筆者:オーストラリアでは罰金20豪ドル(=約2000円弱)が1924年にこの制度が導入されて以降、投票率が90%を下回ったことはないようです。


 期日前投票や海外での在外投票はもちろん、郵便投票も可能。また、視覚に障害がある有権者は電話を使った投票が可能のようです。


 また選挙の際に国民が大好きな特別なホットドッグを販売するところが多く、お祭りみたいな雰囲気になっているのも足を向けるきっかけになっているようです。



質問者:確かに、日本では選挙と言うと堅苦しい雰囲気がありますよね……プラスのお祭りみたいな気軽な雰囲気は皆無です。それにしても90%は凄いですね……投票率の数字には見えません。



筆者:そうですね。純粋に罰金制度のみでの数字ではないすね。やはり一つ前で見たように自治体単位での取り組みは必須だと思います。


 罰金の金額以外の条件が良く分からなかった国としてはルクセンブルクがありました。

こちらの罰金は99~991ユーロ(約14000円~13万円)となっており、投票率は90%弱という感じでしたね。



質問者:1万円は痛いですね……これは皆行きそうです……。



筆者:次に罰金と共に社会的制裁も追加して行われるほど厳しい制度が課せられている国々を見ていきます。


 まずベルギーでは初回の選挙義務違反では5~10ユーロ(700~1400円)の罰金ですが、

 2回目以上になると、罰金額は10〜25ユーロ(約1400円〜3500円)と2倍以上になります。


 さらに、15年の間に4回以上投票を怠ると、選挙権を10年間失うばかりか、公職に就けなくなるといったペナルティを課せられます。更にもし公務員だったならば、昇進も差し止められてしまうと言うこともあるようです。(投票率90%)



 ブラジルでは、18歳〜70歳の国民に投票義務があり、海外にいるブラジル国民はもちろん、受刑者も投票に行かなければなりません。

病気などのやむを得ない事情を除き、棄権した場合には最大35レアル(約1100円)の罰金を払うことになります。


 さらに罰金が3回続くと有権者番号が剥奪され、身分証明書やパスポートを発行してもらえなくなります。そうなった場合、銀行でお金を借りられなくなる、公立大学に入学できなくなるなど、社会的に大きな不利益を被る事になるのです。 (投票率は80%弱)



 シンガポールでは21歳以上の国民には海外勤務、海外留学、海外勤務又は留学中の配偶者への帯同、海外旅行、病気や出産などの然るべき理由がなく、投票に行かなかった場合は、選挙人名簿から名前が抹消され、違反者には12ヶ月以下の懲役や1500シンガポールドル(約15万円)以下の罰金という厳しい処罰が課せられます。 (投票率は93%)



質問者:やっぱり、厳しい措置を取っている国の投票率はかなり高いのですね……。



筆者:対照的に投票義務が法律上で規定はあっても罰則がない国と言うのも見ていきましょう。

イタリア72% フィリピン74% メキシコ63% ドミニカ共和国53%


 と言った感じです。ドミニカ共和国は日本と同程度の投票率ですが、他の3か国はそれなりに高いと言えるので、義務化のみでもそれなりの効果があるように思えます。



質問者:しかし、投票率が低いのが問題だと思う一方で何だか選挙に行くことって強制されるようなことでもないと思うんですよ。

 心の底から“この人に政治を任せたい”という思いで1票を投じると思うんです。



筆者:それもありますよねぇ。


 ではここで選挙を義務化する上でのメリットとデメリットを見ていこうと思います。


メリットとしては

・より多くの国民が選挙に参加することによって政治活動への関心が高まる

・投票率が上昇する

・投票を促すための大々的なキャンペーンを打つ必要がなくなるので選挙活動費が削減できる可能性があり、立候補者同士の無意味な罵倒戦が減らせる可能性もある


 こういったことがあります。



次にデメリットですが


・義務化により適当な投票が増え民意に反した結果を招く可能性あり

・「選択しない自由」という民主主義に反するものとなる

・無関心な有権者が強制参加させられることで政治への反発心を生む

・元々得票数の多い議員、知名度の高い人物がより有利になってしまう


 と言った懸念があります。



質問者:このデメリットの一番上の“民意に反した結果を招く”とはどういうことですか?



筆者:政治に関心のない人にも投票させるため、ブラジルでは票の売買が後を絶ちません。選挙違反を防ぐため、投票日が近づくと銀行の現金自動受払機(ATM)が利用禁止になる地域もあるほどらしいんです。

 

 つまり、暗に言うならば票の売買が横行する可能性があると言うことですね。


 また、投票に行く事がそのまま国民の政治的関心の高さを表しているかという点にも当然疑問が残ります。毎日新聞サンパウロ支局の調査では、2010年のブラジル連邦会議選からわずか1カ月後、有権者の2割が誰に投票したか覚えていないことが分かりました。



質問者:それはかなり問題ですね……。



筆者:このことから根本的に投票者の意識が低ければ、強い拘束力を持つ投票義務制度はあまり採用するべき制度ではないと言えると思います。


 より、既得権益者に有利に働いてしまう恐れがあり、「結局日本が何も変わりませんでした」と言うことになってしまいかねないからです。

 数字上は投票率か上がっていますから、より権力基盤を強化していく可能性や、政治がより暴走していく危険性を孕んでいると思います。


 投票率を強制的に上げるよりも、いかに国民の政治への関心を高めていくか? どうすれば自主的に投票所に行くようになるのか? そのことを考えることの方が大事だと思いますね


 次に、インターネットによる投票やブロックチェーン技術を使った投票などについて触れていこうと思います。


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