商売敵のケーキ屋の外観をエロゲの背景に使うことで潰そうとした男
「何ッ!店の利益が減少しているだと!」
そう叫んだ男の経営するケーキ屋レーゼラッテは王都の中央から少し外れた住宅街に位置し、主にそこに住む人達をメイン層としてそれなりに繁盛していた。
「はい、どうやら最近近くにできた新しいケーキ屋に客を取られているようです」
淡々とした口調で経理のエリカは言った。
アルバイトをして貯めたお金で苦労してなった夢のケーキ屋さん、最初はあまり売れなかったが続けている内にようやく利益が出てきた、そんな矢先のことだった。
「こうしちゃいられん、まずは敵情偵察だ」
男はすぐに飛び出した。
ケーキ屋ストックホルムは男の店から歩いて5分ほどの近さにあった。店の大きさは男の店より一回り大きく駐車場も広かった。そして何より
「なんだこのお洒落な外観は」
それはそれはもう筆舌に尽くし難い程のお洒落な外観だった。
「とにかく中に入ってみましょう」
いつの間にか付いてきていたエリカに言われて中に入ると、さらにそれはもうお洒落な内装だった。なるほどこれなら客足が伸びるのと仕方ない、そう考えた男はすぐさま自分の店へ戻り、対抗策を考えることにした
「さて、どうしたものか」
男がその滅多に使わない頭で考えていると遅れてエリカが帰ってきた。その手には男の店のでないケーキ箱があった。
「これ、ウチで作ってるやつよりも余裕で美味しいですね。値段もこちらと殆ど変わらないですし、勝ってる要素全くありませんね」
美味しそうに食べながら彼女は言う。
「エリカ君……」
この女結構なこと言い過ぎじゃないか?と思いながらも実際その通りだから仕方なかった。
ふと、新聞紙に載ったニュースが目に入った。男はこれだ!と合点がいった表情をして切り出した。
「エロゲの背景イラストに、あるスイーツ店の外観が使われたことで炎上しているらしい。これを何か利用できないであろうか」
「はあ……」
「つまり俺達が今からエロゲを作成し、その背景イラストに例の店の外観を使う。そうすることであの店は2次元美少女がエッチなことをした聖地としてオタクどもの間で有名になり、その噂は止留まることを知らず店は潰れるに違いない。今はインターネットですぐに炎上する時代だからな」
「えぇ……」
エリカはドン引きした。
「そうと決まれば話は早い、早速ゲーム制作に取り掛かるぞ!」
「ケーキ屋の方はどうするんですか?」
「どうせあの店がある限り売れはしない、暫くは休業だ」
もうこんな店潰れてしまえ。エリカは思った。
ゲーム制作は最初は順調に進んだ。男はやっぱヒロインは全員普乳以下だよなとか、このキャラクターは変態プレイさせようとか彼の人生で培ってきた経験人脈資金性癖性癖性癖全てを使って制作に勤しんだ。しかし、後はキャラの声優だけだとなったところで資金が尽きた。
「頼む!エリカ!キャラクターの声を当ててくれ!
「いやです、私『ご主人様のすごいのおォォォォォ!!!』とか『おしっこ漏れちゃいますゥゥゥゥゥゥゥ!!!』とか絶対言いたくありませんよ」
「うるせえ俺の命令に従え」サイミンジュツ!
「……はい」
こうしてエロゲは完成した。男の予定通りこのエロゲの聖地として商売敵のケーキ屋はインターネットで話題となったが、商売敵のケーキ屋は特に反応しなかったしオタクも自重したので商売敵のケーキ屋の売り上げは変わらなかった。
男のケーキ屋はというと今はエロゲメーカーレーゼラッテとして名前を変えコアなオタクの間では偶に話題となっている。
エリカは実家に帰った。
めでたしめでたし
クゥー疲れました!